次なるモタードはV2へ。

先代950からよりコンパクトに洗練された。外からは見えないメインフレームはアルミ製モノコックとなり、赤いサブフレームのみトレリス構造を残している。SPは前後オーリンズにマルケジーニ鍛造ホイール、ブレンボ製M50キャリパーで戦闘力を高めた上級バージョン。タイヤもハイグリップ系の「ディアブロ・ロッソⅣコルサ」を標準装着する。
こちらはカラーリングもドゥカティらしい標準モデル。エンジンとシャーシはSPと共通だが、前後サスペンションはKYBでホイールも鋳造タイプ、ブレーキもブレンボ製M4.3キャリパーを採用。タイヤは「ディアブロ・ロッソⅣ」を装着するなどストリート走行に適した装備になっている。

20年前に登場した初代プロトタイプから続く“究極のファンバイク”という血統を、最も洗練された形で現代に蘇らせた。それが、2026年モデルとして登場した新型ハイパーモタードV2だ。
新型V2最大のトピックは、ドゥカティ伝統のマシン作りを大胆に見直したことだろう。
まずエンジン。従来の937ccテスタストレッタ11°に代わり、新型パニガーレV2系の890cc・90度V型2気筒ユニットを搭載した。最大のニュースは、長年ドゥカティの象徴だったデスモドロミック機構を廃し、一般的なバルブスプリング方式へと転換したことだ。
さらに吸気可変バルブタイミング機構「IVT」を採用し、扱いやすさと高回転性能を高次元で両立している。最高出力は120ps、最大トルクは94Nm。エンジン単体で6.4kgもの軽量化を達成したことで、シリーズ最強にして、ドゥカティ史上もっとも軽いVツインへと進化した。車体側の変化も劇的だ。これまで象徴だった鋼管トレリスフレームを廃止し、新たにアルミ製モノコックフレームを採用。フレーム単体でも4.6kg軽量化され、マシン全体では約13kg、SP仕様では14kg以上ものダイエットに成功している。SPモデルの車重は177kg。数字だけ見ても驚異的だが、実際に乗るとその軽さはさらに鮮烈に伝わってくる。さらに最新6軸IMUを搭載し、「スライド・バイ・ブレーキ」機能も採用。SPモデルにはオーリンズ製サスペンション、鍛造ホイール、ブレンボM50キャリパーなど、サーキット性能を徹底的に追求した豪華装備が与えられている。

シートが高い。だが、それこそが“モタード”だ

今回の試乗の舞台は、ドゥカティ本拠地ボローニャ近郊にあるモデナ・サーキット。ドゥカティ自身も開発テストに使用するテクニカルコースであり、タイトコーナーと切り返しが連続するレイアウトは、このマシンの本質を暴き出すには理想的な環境だった。
最初に跨った瞬間の印象として、「やはりシートは高いな」と感じたのは正直なところだ。
しかし、それこそがハイパーモタードという存在の個性でもある。長いサスペンションストロークと高い重心を活かし、大きなピッチングモーションを作り出す。フロントを沈めながら強引に向きを変えた、高い車体を豪快に倒し込んで鋭く旋回し、出口では大胆にスロットルを開け、長いサスペンションを縮めながら後輪へトラクションをかけていく。そうしたモタード特有のダイナミックなライディングを成立させるためのパッケージなのだ。つまりこのバイクは、単に“軽くて速い”だけではない。ライダー自身が積極的に荷重を移動し車体を操ることで、さらに深い運動性能を引き出せるよう設計されているのだ。

数値を超えた軽さと“優等生Vツイン”の速さ

モデナ・サーキットを走り出してまず驚かされたのは、やはりその軽快感だった。サイド
スタンドを払って押し引きした瞬間から軽い。だが本当に驚くのは、コーナー進入時だ。
従来型950も十分軽快だったが、新型V2はまるで別物。慣れないうちは、いつもの感覚で倒し込むとインに入りすぎてしまうほど旋回力が鋭い。特に下りの切り返しでは、その俊敏さが際立つ。車体がライダーの入力に対して一拍早く反応し、まるで意思を先読みしているかのように向きを変えていく。大型スポーツというより、極めて純度の高いスーパーモタードそのものだ。
新型890ccユニットは、かつてのLツイン特有の荒々しい鼓動感をかなり薄め、現代的で滑らかなフィーリングへと進化した。もちろん、あの暴れ馬のようなキャラクターを好むライダーからすれば、少々優等生すぎると感じるかもしれない。しかし、こと乗りやすさという点に関しては圧倒的に優秀だ。IVTによるフラットなトルク特性のおかげで、低中回転から非常にスロットルが開けやすい。120psというスペックは一見すると控えめにも映るが、2〜3速主体で走るモデナのようなコースでは、この“使い切れるパワー”が実に気持ちいい。軽量な車体との組み合わせもあって、最後までエンジンを使い切れる感覚がある。結果として、むしろこちらのほうが速い。

電子制御がプロライダーの走りを身近にする

電子制御の進化も目覚ましい。4種類のライドモードの中で、さらにパワーやABS、トラコン、ウィリー、エンジンブレーキなどの介入度を細かく設定できる。試しに「レース」モードでウィリー制御をレベル1に設定してみると、全開加速でもフロントが50cmほど浮いたところで電子制御が穏やかに介入し、それ以上は不用意に上がらない。スロットルを思い切って開けても破綻しない安心感があり、こうした部分にも現代ドゥカティらしい懐の深さを感じた。ハイパーモタード最大の醍醐味ともいえる“スライド走行”も、最新電子制御によって驚くほど身近になった。ABSレベル2で作動する「スライド・バイ・ブレーキ」は、リアブレーキを強く踏み込むだけで電子制御が介入し、安全に後輪をスライドさせながらコーナーへ進入させてくれる機能だ。もちろん、MotoGPライダーのような豪快な進入スライドを決めるのは簡単ではない。筆者もそこまで攻め切れたわけではないが、一緒に走っていたドゥカティのテストライダー達は、リアタイヤで美しいブラックマークを描きながら、まるで吸い込まれるようにコーナーへ飛び込んでいった。
新型ハイパーモタードV2は、単なるスペックアップモデルではない。デスモドロミックもトレリスフレームも手放し、「より軽く、より速く、より扱いやすく」というバイクの本質をゼロベースで突き詰めた新世代マシンだ。快適性や実用性を重視するライダーには向かないかもしれない。だが、サーキットやワインディングで“マシンを自由自在に振り回す快感”を求めるなら、このバイクは極めて魅力的な存在である。新型ハイパーモタードV2は、ドゥカティが提示した“新時代のファンバイク”そのものだった。

ライディングポジション

上体が起きてハンドルも近く、ヒザの曲がりもきつくない楽なポジション。シート高は880㎜で従来型と同じだが、形状がスリムになり足着き性は向上。オプションのローシートで865㎜に。標準仕様に限ってはローサスペンションでさらに850㎜まで下げられる。ライダー身長179cm。体重73kg。

ディテール解説

パニガーレV2譲りの890cc水冷Lツインを搭載。ドゥカティ史上最軽量となる54.5kgの2気筒エンジンは、120psを発揮。IVTにより4000〜11000rpmで最大トルクの80%を維持し、鋭さと扱いやすさを高次元で両立した。
モタードらしさを象徴するビーク付きのシャープなフロントマスクを採用。ヘッドライト
は両サイドに埋め込まれたダブル「C」形状のDRLと一体構成とすることで、先進性と凝
縮感を際立たせている。
左右に張り出したタンクカウルはライダーが外足や腿で車体をホールドしやすくするための形状になっている。積極的な荷重移動にも対応するデザインで、フロント荷重を作りやすく、軽快なモタードらしい操縦性を支えている。
写真はSP用のシートで、高級感とホールド性に優れるスポーティな作りだ。シート高は880㎜で従来型と同じだが、形状がよりスリムになり跨りでの足着き性は向上している。フラットな形状で前後移動もしやすい。
わずかに覗くシートレール兼用のサブフレームには、ドゥカティらしいトレリス構造を継承しているのが嬉しい。サイドパネルからシート側面へ連続するテクスチャーは、デザイン性と滑り止め効果を両立している。
初代を思わせる2本出しサイレンサーは軽量化され、デザインと機能も進化。テールランプも洗練され、急制動時に点滅して後方に危険を知らせるEVOタイプへとアップグレード。
 

クラッチレスでギアチェンジを可能にする「ドゥカティ・クィック・シフト2.0」を標準装備。シフトリンケージのスイッチを廃止しECU側で制御することで、より正確でスムーズに電光石火のシフトチェンジを可能にしている。
SPは足まわりも充実。前後オーリンズ製でフロントにNIX30φ48倒立フォークを装備。ブレーキもφ320mmダブルディスク+専用マスター付きM50キャリパーへと強化されている。ザックス製ステアリングダンパーを標準装備。
SPはリアサスペンションにもオーリンズ製STX46を採用。両持ち式スイングアームの左側にリンクレスでマウントする方式は、パニガーレV2や新型モンスター同様。軽量かつサスセッティングしやすい設計になっている。
スイングアームは従来の「片持ち式」に代わり「両持ち式」を採用する。高剛性としなやかさを両立し、旋回時の接地感とトラクション性能を向上。軽量化や車体バランス最適化にも貢献し、限界域でのコントロール性を高めている。
新型の5インチTFTディスプレイを採用。4種類のライディングモード(レース、スポーツ、ロード、ウェット)を通じて、コーナリングABS、トラクションコントロール、ウィリーコントロール、EBCなどの設定が可能だ。
表示モードを切り替えることで、リアルタイムに電制の介入度を確認、変更もできる。ちなみに「ABS」2はスライド・バイ・ブレーキ機能。「DWC」をオフにすればウィリー走行も可能だ。
モード切り替えや各種設定は、左ハンドルスイッチに統合されたジョイスティックで操作。操作系は直感的で、慣れてしまえばサーキット走行中でも迷わず扱える完成度を持つ。

主要諸元

  • ボディサイズ: 全長×全幅×全高=-×-×1088mm
  • ホイールベース: 約1402mm
  • シート高: 880mm
  • 車両重量: 180kg/SP 177kg
  • エンジン: 水冷V型2気筒 DOHC 8バルブ排気量890cc
  • トランスミッション: 6速リターン
  • 最高出力: 120PS / 88.5 kW @ 10,750 rpm
  • 最大トルク: 94Nm @ 8,250 rpm
  • 燃料タンク容量: 12.5L
  • フレーム: アルミニウム製モノコック
  • サスペンション(トラベル量):
  • フロント:倒立式テレスコピック(170mm)
  • リア:リンクレス式モノショック(160mm)
  • ブレーキ:
    前:φ320mmダブルディスク+4Pラジアルキャリパー
    後:φ245㎜シングルディスク+2Pキャリパー
  • コーナリングABS標準装着
  • タイヤ: フロント:120/70-17、リア:190/55-17
  • 燃費: 5.4 l/100km
  • 予定価格:199万円/SP 249万円(消費税込み)