最速へ挑み続けた怪物マシン列伝!
ザウルス Kamaishi-R

第二世代GT-Rの登場によって、日本のドラッグレースシーンは一気に加速した。1/4マイル9秒台は珍しくなくなり、8秒台後半も当たり前。さらに8秒台前半ともなれば、日本最速クラスのマシンだけが到達できる特別な領域だった。
そんな中、2014年9月15日。国内唯一のドラッグ専用コースだった仙台ハイランド・ドラッグレースウェイの営業最終日を迎え、全国から猛者たちが集結した。ザウルスユーザーの釜石氏も、そのひとりだった。
ストックボディで7秒台を記録するためには、路面、天候、車両コンディション、そしてドライビング。そのすべてが完璧に噛み合わなければならない。Kamaishi-Rは何度も8秒台前半を記録していたが、“夢の7秒台”だけにはあと一歩届かなかった。

そして迎えた渾身のラストアタック。
電光掲示板に表示された「7.905」の数字は、長年積み重ねてきた努力が結実した瞬間だった。仙台ハイランド最後の日に刻まれたこの記録は、日本ドラッグレース史に残る伝説のワンシーンとなったのである。
フレンズ BNR34

最高速テストの舞台が減少していく中、新たな速さの指標として注目を集めるようになったのが「0-300km/h加速テスト」だった。
そんな未知の領域へ本気で挑んだのが、フレンズのBNR34スカイラインGT-Rである。

猪瀬氏が0-300km/h専用として製作したRB26DETTは、鍛造ピストンやH断面コンロッド、ビレットクランクなどによって徹底強化。さらにIN/EX280度・11.35mmリフトのハイカムを組み合わせ、1万2000rpmまで回る超高回転仕様へと仕上げられていた。
タービンはTD06-25Gツイン。ブースト圧2.3キロ時には1400ps・100kgmを発揮する怪物スペックだ。しかもステアリングを握るのは、チューナーである猪瀬氏本人。
そして記録されたのは、わずか11秒80での300km/h到達。到達距離は601.96mという異次元の数字だった。
コンマ単位で記録を削るのではなく、一気に常識を塗り替える。それこそがフレンズ流。“爆速GT-R”の最終形態と呼ぶに相応しい一台だった。
スコーチアドバンシルビア & エスコート Evo9

筑波サーキットのタイムアタックは、時代とともに異常な進化を遂げてきた。
かつては「1分切り」で称賛された世界も、タイヤや空力、チューニング理論の進化によって、“55秒台で速い”と言われる時代へと突入していく。そんな中、2017年に大きな衝撃を与えたのが、アンダー鈴木のスコーチアドバンシルビアだった。
巨大なGTウイングやカナードによる圧倒的なダウンフォースを武器に、50秒366を記録。空気抵抗をパワーでねじ伏せるという、現在のタイムアタックマシンへと繋がる“ストロングスタイル”を確立したのである。

そして、その記録へ真正面から挑んだのが、ドラッグレース界から転向してきたファイヤー安藤とエスコートEvo9だった。
徹底したデータ収集と精密なセットアップを積み重ね、2021年には50秒179でトップへ浮上。さらに2023年には、Sタイヤ装着車として史上初となる49秒台「49秒897」を叩き出した。
筑波最速争いは、もはやショップデモカーだけのものではない。アマチュアたちの執念と情熱が、タイムアタック文化そのものを進化させ続けているのである。
アスパーク OWL

「内燃機関こそ絶対」。
そんな価値観を持つクルマ好きたちへ、衝撃的なニュースが飛び込んできた。
アスパークが開発したEVハイパーカー『OWL』が、0-100km/h加速1.89秒を記録したのである。しかも、その後には1.78秒まで記録を短縮してみせた。
この数字がどれほど異常かと言えば、F1マシンですら0-100km/h加速は3〜3.5秒前後。フレンズBNR34でさえ2.41秒なのだから、その加速性能は完全に別次元と言える。

掲載当時の試作車は320kW(435ps)・764Nm(77kgm)と、スペックだけ見れば意外なほど穏やかだった。しかし、4WDシステムと850kgという超軽量ボディの組み合わせが、驚異的なトラクション性能を実現。まるで電動ラジコンカーのような鋭い加速を披露したのである。
その後、市販モデルでは4モーター化によって1980psへ到達。車重は2トン級へ増加したものの、圧倒的なダッシュ性能は健在だ。
“最速”の概念が、エンジンからモーターへと移り変わり始めた瞬間。OWLは、その歴史的転換点を象徴する一台だった。
