段違いの囲まれ感
先日、とあるクルマのデザイン開発に関する話を伺ってきた。詳細な車種は伏せるが、開発当初と生産時で運転席まわり(コクピット)部分が大幅に変更されたという話があった。当初の方針では小径ステアリングを採用してメーターをインパネの奥側に配置することでドライバーがより運転に集中できるようになる、いわゆる戦闘機のコクピットのようなインテリアを狙っていたという。
しかし、開発が進む中で、小柄なドライバーが運転する場合に小径ステアリングを上げると上端がメーター表示と被ってしまい視認性が損なわれることがわかった。そのため、ステアリング径やメーター位置などはオーソドックスなものとする一方でメーターのグラフィックを奥行きの感じられるものへ刷新する方向へと舵を切った。
その話の中で挙がったのがプジョーだった。ご存知の通り、プジョーは2012年に登場したコンパクトカー「208」で小径ステアリングを初めて採用し、現在では様々なモデルへと拡大し、同社のクルマを象徴するものとなっている。デザイナー陣にその点を聞いてみたところ、「あのインテリアを実現させるには相当突き抜ける必要がある」とのことだった。
クルマのデザインを手掛けるプロ目線から見ても突き抜けていると思わせるプジョーのインテリアだが、今回試乗した7人乗りSUV「5008」は2025年7月に発売された「3008」に採用された「PEUGEOT Panoramic i-Cockpit」へと刷新されており、もはや小径ステアリングは序の口だ。

21インチのスクリーンはドライバー側に緩やかに湾曲しており、通常はインパネを横切るように配置されるエアコンの吹き出し口は運転席からインパネ中央と助手席とで左右に分割されている。また、センターコンソールは運転関連のスイッチ類とドリンクホルダーなどをきっちり区切っている。これによって運転席側は囲まれ感の強いコクピットと感じる一方で、助手席側はすっきりとした前方視界も相まって開放感が高いという異なる世界観が両立している。

SUVであることを忘れてしまう軽快な走り
ボディサイズは全長:4810mm×全幅:1895mm×全高:1735mmと、国産車では同じく3列シートを備えるSUVの日産エクストレイル(全長:4690mm×全幅:1840mm×全高:1720mm)よりもひと回り大きく、マツダCX-80(全長:4990mm×全幅:1890mm×全高:1710mm)よりも全長が短い。

先述したように小径ステアリングが特徴の「PEUGEOT Panoramic i-Cockpit」はドライバーの体格によってメーターなどの視認性に懸念が生じていたが、筆者(174cm)の目線ではむしろこのコクピットはちょうど良く、湾曲したスクリーンとエンジンフード先端のラインがほぼ重なって見えるため、ボディ感覚を掴みやすい。

このボディ感覚の掴みやすさは走りにも貢献している。「5008」は1.2L直列3気筒ターボ+48Vモーターのマイルドハイブリッドと同じ試乗会で直前に乗った「C5エアクロスHYBRID」と同じパワートレインを搭載する。
ボディサイズの拡大に加えて車両重量も110kg増えているため、さすがに重さを感じると思いきや、街中から高速道路までスムーズに走れる。そして、ドライブモードを「SPORT」にすると加速のキレがさらに高まる。

扱いやすい感覚のボディは小径ステアリングをわずかに傾ければ即座に車体は向きを変えてくれて、スポーティなコクピットやサポート性に優れたタイトなシートも相まって、SUVであることを忘れさせられるような爽快な走りを楽しませてくれる。





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