ボルボの新しいEVのフラッグシップSUV「EX90」

ボルボのフラッグシップらしい高い質感のインテリア

静かなクルマは、移動する時間まで静かにしてくれる。新型のボルボEX90を走らせて、最初に感じたのはそんな感覚だった。

ボルボの新しいEVのフラッグシップSUV「EX90」に乗って感じるのは、その大きさと静粛性だ。EX90は全長5035mm、全幅1965mm、ホイールベース2985mm。いわゆるEセグメント級の堂々たるボディに、3列7人乗りのシートを備えたEVのプレミアムSUVだ。

ボディサイズ:全長×全幅×全高:5035mm×1965mm×1740mm ホイールベース:2985mm

これまでの高級車は、優れたエンジン、上質な素材、豪華な装備、卓越した走行性能といった、目に見えるハードウェアが価値の中心だった。

新型ボルボEX90は、エンジンを除いてそうした従来の物差しでの価値も持っているが、電動化に加え、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)という新しい設計思想によって、従来とは異なる価値を提供するクルマとして登場した。つまり次世代車といわれていたクルマがいよいよリアルにデビューしてきたのだ。

まずは、既存の物差しでのEX90の静粛性は、すべてのウインドウに合わせガラスが採用されており、窓を閉めると音響室に入ったような静けさが訪れる。そして動き出してもモーターやインバータ、走行音が入ってこない。こちらが「本当に動き出した?」って確認したくなるほど、音がない。

ボルボのBEVのSUVフラッグシップ。EX90のグレード構成は
ボルボEX90 Plus Twin Motor 1199万円
ボルボEX90 Ultra Twin Motor 1349万円
ボルボEX90 Ultra Twin Motor Performance 1399万円

クルマの移動で疲れる要因に「車両の揺れ」と「走行音、騒音」がある。音と振動を減らすと長距離、長時間の移動が楽になり疲れない。つまり静粛性そのものが、移動の質を高める機能になると言える。

一方、約2.7トンもある大型SUVのEX90は、動力性能をアピールすることもできる。実際、試乗した最上級のTwin Motor Performanceは500kW(680ps)、870Nmを発生し、0-100km/h加速4.2秒という強烈な性能を持つ。恐ろしいほどの加速力も、おそらく、従来の高級車の定義と言えるだろう。

ボルボが考えるSDVとは?

新しいSPA2アーキテクチャーを採用する。

ではSDV、ソフトウェア・デファインド・ビークルがもたらす、新しい価値とは何か。具体的に紐解いてみよう。

それは新しいSPA2アーキテクチャーと「Superset tech stack」を採用していることだ。SPA2はクルマの基本アーキテクチャーで、Superset tech stackはSDVを成立させるための共通基盤でボルボは「レゴ・ブロックを積み上げていくように」と説明している。つまり、ハードウェア+ソフトウェア+システム+モジュールを共通化する基盤技術だ。

そして車両の中核には「Hugin Core」(フギン・コア)と呼ばれるコア・コンピューティングシステムを搭載。つまり、コンピュータ=頭脳が支配するアーキテクチャーになっていることだ。

安全システム、駆動システム、インフォテインメントなど、従来は個別のECUが担っていたさまざまな機能を、より統合的に制御できる構成となっている。

14.5インチセンターディスプレイと9インチのドライバー・ディスプレイ。ヘッドアップディスプレイも装備する。

ちなみに、EX90では、NVIDIAやQualcommなど外部のテクノロジーパートナーの技術も積極的に採用している。すべてを自社で抱え込むのではなく、各分野の優れた技術を組み合わせながら、その上でボルボ独自のソフトウェアと車両制御を構築していく。こうした開発思想も、従来の自動車メーカーとは異なるところだ。これは国内メーカーがこだわる「手の内化」の正反対にポジションしていると考えていい。

簡単に説明するとSnapdragonはSoCのためのプラットフォームという理解で、インフォテインメントや音声AI、メーター表示、ADAS、Wi-Fi、Bluetooth、V2Xなどに対応できる総合的なプラットフォームで、NVIDIA Orinはフギン・コアを構成する主要なコンピュータだ。AI、センサー類、画像認識、ADAS、バッテリー管理などが領域のものだ。車載ネットワークには高速なEthernet通信も採用されている。

さて、話を戻すと、したがってボルボEX90は、ここでクルマの作り方そのものが変わったと言うこともできるのだ。従来のクルマは、基本的には工場から出てきた時点で「完成車」だ。しかしEX90は違う。OTAによって安全性、車両性能、ユーザーエクスペリエンスなどを継続的に向上させることができる。つまり、一時的な完成車が手元に届いているという理解になるのかもしれない。あるいは、進化するクルマを手にいれるという言い方もできるだろう。

ソフトウェアを継続的にアップデートできる。これはスマートフォンでは当たり前だが、クルマにとっては大きなシフトチェンジと言えるのだ。これが新しい価値になるわけで、進化するクルマという価値だ。既存の価値観、高級車の定義とは違ってくる。

例えばEX90の場合、このSDVという考え方、システムにとって、大きなアピールポイントとして安全性を考えてみる。車外ではカメラやレーダーなどのセンサーが周囲360度の状況をリアルタイムで把握し、高性能なコンピュータがその情報を処理する。

車内にもドライバー・アンダスタンディング・システムを搭載し、ドライバーの視線やステアリング操作などから注意力の低下や眠気を検知する。さらに、乗員検知システムは車内に残された人やペットを検知し、必要に応じて空調を作動させる性能を持っている。

これらは一見すると安全装備の充実だ。しかしSDVという視点では、新しいデータやソフトウェアのアップデートによって、安全に関わる機能も継続的に進化していく。つまり安全装備が「買ったときに決まる装備」ではなく、時間とともに賢くなっていく機能、性能になるわけだ。

ボルボがEX90を「時間とともにより賢く、より安全になっていくクルマ」と位置づける理由はここにあるわけだ。

1199万円からという価格の価値

タイヤサイズ:F265/40R22 R295/35R22 装着タイヤはピレリSCORPION

そして、もうひとつ注目したいのが価格だ。EX90の価格は1199万円から。上級のUltra Twin Motorが1349万円、最上級のUltra Twin Motor Performanceでも1399万円となっている。

この価格設定についてボルボは、XC90プラグインハイブリッドと同レンジとしている。ここは非常に重要なポイントだろう。EX90はEセグメント級の大きさを持つ3列7人乗りSUVであり、800V級システム、106kWhバッテリー、650kmの航続距離、AWDを標準で備えている。

もちろん1199万円という金額は一般的なファミリーカーとは比較できないが、これだけのサイズと機能を持つプレミアムEVを1199万円から提供すること自体も、新しい価値提案だと評価できないだろうか。

ボルボEX90 Ultra Twin Motor Performance
ボディサイズ:全長×全幅×全高:5035mm×1965mm×1740mm
ホイールベース:2985mm
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン式 後インテグラルリンク式
車両重量:2710kg
乗車定員:7名
モーター
フロントモーター:F22型非同期モーター/リヤモーターR31型永久磁石同期モーター
モーター最高出力:F220kW(299ps)/R280kW(381ps)
モーター最大トルク:F390Nm/R480Nm
駆動方式:AWD
バッテリー
バッテリー容量:106kWh
総電圧718V

WLTC航続距離:650km
交流電力量消費率:180Wh/km
市街地モード167Wh/km
郊外モード170Wh/km
高速道路194Wh/km
ブレーキ:前後ディスク
タイヤサイズ:F265/40R22 R295/35R22
車両本体価格:1399万円