スバルのマイルドハイブリッドユニットは、水平対向エンジンに13.6ps/65Nmのモーターを組み合わせたe-BOXERだ。フォレスター、XV、そしてインプレッサにも搭載グレードが設定されるe-BOXER。デビュー当時は「ターボモデルの代わり」と言われ、燃費のためのハイブリッドではなく、いわば「電気ターボ」的な使い方をすると説明を受けた。久しぶりにフォレスターe-BOXERを試乗したジャーナリスト、瀬在仁志は、フォレスターAdvanceをどう評価したか? TEXT◎瀬在仁志(SEZAI Hitoshi) PHOTO◎Motor-Fan


車両本体価格:313万2000円 試乗車はオプション込みで346万6800円 (パワーリヤゲート、大型サンルーフ、アイサイトセイフティプラス、ルーフレール)

先代のスバル・フォレスターにはレガシィ譲りで、280psのパワーを誇る2.0ℓターボエンジン(FA20DIT)を搭載したモデルが存在した。ちょっと前だったら各メーカーのスポーツモデルにしか積まれていなかったハイパワーユニットが、SUVに組み合わされていたのだから、いまさらながらスバルのチャレンジ精神には頭が下がる。 レガシィやWRXならモータースポーツフィールドからの要請があるから当然として、SUVといえば多目的モデルと呼ばれる、いわば家族のクルマ。しかも背の高いモデルに、スバル最強ユニットを組み合わせるなんて、ほかの会社ではなかなかGOサインは出ないだろう。ひと言で言えばオフロードのGT-R。それだけヨンクモデルへの自信があったに違いないが、こんな大胆な取り組みこそがスバリストを熱くさせる源泉であったことも理解した。 なぜ、過去を懐かしんでしまうのか。答えは簡単だ。失って初めてわかるありがたみを現行フォレスターに乗って感じたのだ。2018年にデビューした5代目モデルではホイールベースを30mm延長してひと回りボディサイズを大型化。スバルを代表するSUVとなったのを機に、ターボユニットの代わりにe-BOXERを投入。フォレスター初のHEVモデルとしての期待がかかるいっぽう、言うにこと欠いてe-BOXERがターボモデルの後継ともアナウンスされていたのだから、触れぬ訳にはいかないのだ。

今回、試乗するe-BOXERには罪はない。特設コースでの印象はすこぶる良かった。そろそろと進みながらモーグルを上り下りするときのブレーキシステムの連携は良く、ドライバーコントロールだったらついつい勢いがつきすぎてしまうようなシーンでも、モーターが静々と難所をクリアしてくれた。


全長×全幅×全高:4625mm×1815mm×1730mm ホイールベース:2670mm


トレッド:F1565/R1570 最低地上高:220mm


最小回転半径:5.4m 車重:1660kg 前軸軸重960kg 後軸軸重700kg

ワインディングロードでも、280ps時代のようにステアリングが左右にとられるようなこともなくなり、路面が良かったとはいえ正確なライントレース性を見せてくれていた。ただ、やっぱりパワーだけで比較してしまえば、ドッカンと立ち上がるターボ時代の元気ぶりは懐かしい。AWDだからこそ280psのパワーを受け止め、ステアリングが少々暴れていたって、進行方向を大きく外すことはなく……「あぁ、ロデオをしているよう」とはこんな時に使うのね、というほどに大胆で味わい深かった。


室内長×幅×高さ:2100mm×1545mm×1270mm


後席は膝周りの余裕も乗り心地もなかなか高レベル。


Advanceは前後席とも本革シートが標準。

それに比べたら、なんとおとなしくなってしまったことか。モーターの音とともに緩やかな加速と安定感を持ってコーナーを曲がっていくなんて、とても攻めている、などの表現は使えない。これはターボの代わりにはなりませんね。と、デビュー当時に言ったことをいまでも覚えているが、いま乗って見ても二言はない。もしかしたらターボの代わりがe-POWERなどと言ってしまったのは担当者のリップサービスか、聞き間違いだったということでケリをつける。

久しぶりに試乗することになったe-BOXERは当時の熱い思いがすっかり収まったせいか、意外な一面を見せてくれた。いま主役になりつつあるマイルドHEVなどに比較すれば、明らかにモーターによるアシスト効果はあって、発進加速や追い越し加速ではトルクカーブが、ひと山スッと盛り上がる。ターボと違って力強さが台形波形で続くことはないが、古墳のような滑らかなカーブは感じられる。


ボンネットフードを開けるとエンジンルームはこう見える。e-BOXERのMA1型モーター(13.6ps/65Nm)はリニアトロニックCVTの後端に付くため、もちろん見えない。


エンジンカバーの表側はこちら。


裏側はこうなっている。


エンジン形式:水平対向4気筒DOHC エンジン型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:145ps(107kW)/6000rpm 最大トルク:188Nm/4000rpm 過給機:× 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) モーター:MA1型交流同期モーター

初期加速や、中間加速でそっとサポートするあたりがターボという言葉に代わってしまったのかもしれないが、モーターの滑らかさが日常使いで効果はあった。とくにワインディングをドライブしているときにガソリンエンジンだけだと、アクセルのオンオフで変速モードやパワーの遅れなどにドライバーが先手を打つ必要があるが、e-BOXERではリカバリーが早く、オン/オフに対するパワーの上下変化が少なく扱いやすい。パワーピークは感じにくいけど、パワーバンドとレスポンスが常態域から常に反応を示してくれて、走りのサポートをしてくれる。ちょっとほしいパワーをどこでも引き出せる感じなのだ。


試乗するジャーナリストの瀬在仁志氏。ステアリングギヤ比は13.5:1だ。

ハンドリング的には、いま乗ってみると思いのほか緩い印象で、スバル従来の乗り心地が少々硬めで手応え重め、といった感覚とは対照的。足元では路面変化に対してタイヤ自体は上下左右に小さく反応してステアリングにも多少の反力は感じられる。それでいながらボディはフラットのままだし、進路には一向に影響がない。大きな入力に対しても寛容で、オン/オフ問わず良路から悪路までかわらぬドライブフィールを見せてくる。アメリカ市場において人気があるのも、こんな懐の深い味つけが的を射ているからだろう。


燃費は2.5ℓ車が13.2km/ℓなのに対してe-BOXERは14.0km/ℓ 価格は2.5ℓのプレミアムが308万円 Advanceが315万7000円。

もちろん日本の道路環境においても、狭いところでもスバルならではの正確なハンドリングでクリアしてくれるし、なによりもパワーをかけていったときに接地感が変わらないのがいい。オンデマンドAWDといえるジャンルに入るはずだが、リヤへの駆動力も早い段階から伝達されている様子で、パワーオンでもフロントにわずかな滑りさえも生じることなく、旋回方向に素直にトレースしてくれる。

高速ドライブをしているときにも轍や外乱があっても足元だけで力を逃がしてくれて、ボディをステアリングも緩いはずなのに、変化が少ない。尖った走りこそがスバルの持ち味と思っていたが、力を逃がして進路を決める芸当ができるとは随分と大人になったものである。これこそがスバル本来の技術力の高さであり、スバリストの心を離さない価値観に違いない。 e-POWER同様、スペックだけでは語れないパフォーマンスがフォレスターe-POWERにはあり、今回乗ってようやくその価値観に気づかされた。 良い勉強になりました。


東新宿の編集部でフォレスターを受け取って、外苑から首都高にのって、6号線経由で三郷から外環に入り、新倉PA(ほぼ高速で63.5km走行)で燃費は15.7km/ℓだった。総合燃費は、260km走って11.1km/ℓ。


車重は2.5ℓガソリンモデルよりe-BOXERが110kg重い。北米のフォレスターにはe-BOXERはなし。

スバル・フォレスター Advance 全長×全幅×全高:4625mm×1815mm×1730mm ホイールベース:2670mm 車重:1640kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rダブルウィッシュボーン式 エンジン形式:水平対向4気筒DOHC エンジン型式:FB20 排気量:1995cc ボア×ストローク:84.0mm×90.0mm 圧縮比:12.5 最高出力:145ps(107kW)/6000rpm 最大トルク:188Nm/4000rpm 過給機:× 燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI) モーター:MA1型交流同期モーター 使用燃料:レギュラー 燃料タンク容量:48ℓ 最高出力:13.6ps(10kW) 最大トルク:65Nm WTLCモード燃費:14.0km/ℓ 市街地モード11.2km/ℓ 郊外モード14.2km/ℓ 高速道路モード16.0km/ℓ 車両価格○315万7000円