6.8psを誇ったDJ・1RRは、ホンダ50ccスクーターのホットモデル

1985年に初代が登場し、スポーティなスクーターとして人気を集めたホンダDJ・1シリーズ。その中でもトップグレード的な存在として1988年に登場したのがDJ・1RRだ。DJ・1R(1987年登場)の流れを受け継ぎながら、最高出力をDJ1・Rの6.0ps→6.8psまで高めた、当時のホンダ50ccスクーター最速級モデルである。
しかもDJ・1RRは、ただエンジンがパワフルなだけではない。レンズ一体式のデュアルヘッドライト、スポーティなスピードメーター、サイドカバー後部のエアダクトなど、見た目にも“RR”らしい専用装備が盛り込まれていた。今の原付スクーターではなかなか考えにくいほど、グレード専用パーツが奢られていたのだ。
今回のオーナーが惹かれたのも、まさにその部分。フロアボードにあるバックステップ的な突起、サイドカウルのダクト、デュアルライトといったDJ・1RR専用パーツを、オークションなどでコツコツ時間をかけて集めている。単なる旧車スクーターではなく、“RRだけの特別感”を大切にしながら仕上げた一台なのである。

白×赤の純正風カラーで仕上げたDJ・1RR改。見た目は当時の雰囲気を大切にしつつ、足周りや駆動系にはしっかり手が入る。

エアロアンダーカウルやシート下のサイドエアダクトなど、DJ・1RRらしいシャープなデザインが良く分かる。さりげなくフロントブレーキはディスクブレーキ化されている。

タコメーターのようにも見えるスポーティなスピードメーター。6.8psを誇ったDJ・1RRらしく、走りの気分を盛り上げてくれるデザインだ。

レンズ内にデュアルヘッドライトを備えるのがDJ・1RRの証。耐久レーサーを思わせる、80年代らしいレプリカテイストだ。

フロアボードに備わるバックステップ的な突起もDJ・1RRならでは。今見ると、50ccスクーターとは思えないほど専用パーツが奢られている。
Gダッシュの足周りでディスク化! でも純正風に見せるのがこだわり
このDJ・1RR改の大きな見どころが、フロント周り。ノーマルはドラムブレーキだが、足周りにはホンダ・Gダッシュ用を流用し、フロントブレーキをディスク化している。「ディスクブレーキ化」は、80Sスクーターのカスタムでは定番的な手法でもあるが、この車両はただ移植しただけでは終わらない。
ポイントは、見た目を極力DJ・1RRらしく残していること。Gダッシュ足周りを使いながら、DJ・1RRのフォークガードを上手く移植し、違和感をできるだけ消している。こういう、言われないと気付かないけど、実は手が込んでいる部分、筆者的にタマリマセン。

さらに面白いのがブレーキ周りの処理だ。一般的にディスク化するとマスターシリンダーが必要になり、ハンドルカバーを加工するケースも多い。しかしこの車両では、PCX用コンビブレーキホースを途中にかませることで、ワイヤー引きレバーのままディスク化を実現。カバーを切りたくない、でもブレーキは強化したい。その両方を叶える流用アイデアが光っている。
駆動系にも手が入る。純正プーリーはフェイス面を削ってハイスピード化。社外製CDIや社外製チャンバーも組み合わせ、見た目は純正風でも走りはしっかり元気な仕様だ。いかにも80Sスクーターらしい“速くしたいけど、雰囲気も壊したくない”という欲張り感がいい。
ロゴはペイントで再現! “当時っぽさ”を崩さないレストア術

外装関連で注目したいのは、ロゴ類の仕上げ。ステッカーが入手しにくい絶版車だけに、ロゴの一部はペイントで再現している。これがただの塗り分けではなく、純正っぽい雰囲気を狙った入魂の仕上げ。白×赤のボディカラーも相まって、パッと見た時の“DJ・1RR感”がしっかり残っている。
シートはDJ・1用を加工し、アンコ抜きで低くスポーティな印象に。リヤショックにはDio用の280mmを使用し、全体の姿勢もさりげなく整えている。クランクケースはチッピング塗装で仕上げ、足元の印象も引き締めた。
この車両が面白いのは、カスタムしているのに“カスタムしすぎて見えない”ことだ。足周りはGダッシュ、ブレーキラインはPCX、リヤショックはDio、駆動系は、フェイス面を削ってハイスピード化。ウエイトローラー部分の可動域も広げている。しっかり手が入っているのに、外観はあくまでDJ・1RR。そこにオーナーの美学がある。
80Sスクーターの魅力は、ただ懐かしいだけではない。専用パーツを探す楽しさ、流用で工夫する面白さ、そして今では考えられないほど贅沢だった当時の作り込みを再発見できること。このDJ・1RR改は、その全部を詰め込んだ一台だ。純正風に見えて、実はかなり濃い。こういうカスタム、やっぱり見逃せないでしょ!

いかにもレーシーなチャンバーは、ネットオークションで入手した社外製。サイドカウルのRRロゴともよく似合う。
※この記事は月刊モトチャンプ2021年3月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】
