Cayenne Electric

重要な屋台骨としてのSUV

7月6日、日本におけるポルシェの聖地、千葉・木更津にあるポルシェ・エクスペリエンスセンター東京で、新型「ポルシェ カイエン」の日本導入発表会が開催された。今回4代目となったカイエンは2002年の登場以来、ポルシェの屋台骨として貢献し、現在ではマカンとともに年間生産台数の50〜60%を占める重要モデルである。

初代カイエンは、「家族も乗れて、悪路も走れるスポーツカー」というフェリー・ポルシェの理念そのものであったというが、その慧眼は当時徐々に人気が高まりつつあったスポーティで高級なSUV市場において、本格スポーツカーの性能を備えた先駆者として君臨したことでも明かだ。2010年に登場した2代目でハイブリッドモデルが追加され、2017年に誕生した3代目でも順調に売れ行きを伸ばして、2020年に累計100万台生産を達成したヒット作である。

2車形それぞれに3グレード

今回、日本市場導入が発表されたのは、フル電動モデルとなる「カイエン エレクトリック」。BEVになっても“ポルシェ”であり続けることが開発コンセプトだという。カイエンは3種類のパワートレインを併売するというが、新型はカイエン エレクトリック、つまりBEVのみとなる。従来パワートレインの内燃機関あるいはプラグインハイブリッド(PHEV)は先代の3代目カイエンを改良モデルであるとしている。

新型のデザインテーマはクリーン、ピュア、ワイドスタンスというだけあって、電動車という素地を活かしたすっきりとした面構成と低重心を感じさせる雰囲気を纏っている。ボディタイプは、これまでどおりSUV、クーペの2車形をラインナップ。発表段階で、「カイエン エレクトリック」(最高出力442PS、最大トルク835Nm)、「カイエン S エレクトリック」(最高出力666PS、最大トルク1080Nm)、「カイエン ターボ エレクトリック」(最高出力1156PS、最大トルク1500Nm)という3グレードが用意される。駆動方式は全グレードでAWDを採用し、それぞれ動力性能が異なるが、ターボが突出した性能を持つ。

未来的なインテリア

カイエン エレクトリックのボディサイズ(SUV、日本仕様)は全長4990mm、全幅1980mm、全高1675(クーペ:1650)mmで先代比60mm長く、25mm低くなった。ホイールベースも130mm延長されて3025mmとなり、その分後席足元と頭上空間に余裕ができた。荷室容量はリヤのラゲッジルームが781Lで、2名乗車時は1588Lまで拡大可能だ。BEVの特徴としてフロントトランク(フランク)も用意されるが、ここにも90Lを確保している。

インテリアの特徴は、フローディスプレイと呼ばれる新開発の未来的なカーブドセンターディスプレイが印象的だ。その手前センターコンソールにはフェリーパッドと呼ばれるパームレストが配置される。オプションでARヘッドアップディスプレイなど最新装備も選べる。またスマートフォンのみで解錠・起動が可能なポルシェデジタルキーを初採用。最大7人まで共有可能で、登録者は入れ替え可能なので家族や仲間で共用したりする際に便利だろう。

ボディカラーは標準で13色選択可能で、そのうち3色が新色となる。オプションで約90色追加されるので合計104色から選択可能だという。ホイールは20〜22インチが9種類ラインナップ。インテリアは170種類の組み合わせで、エクステリア、インテリアの組み合わせでは2万通り以上の仕様が選択可能だという。

ポルシェ史上最高レベルのパフォーマンス

全グレードで高出力なPSM(永久磁石同期)モーターを前後に搭載し、駆動方式はAWDだが、前述のとおり性能はグレードでかなり異なり、Sとターボではモーターも大型となる。最高グレードのターボは最高出力1156PS(850kW)、最大トルク1500Nmで0-100km/h加速2.5秒、最高速260km/hというハイパーカー級の性能を誇る。加速性能はポルシェ史上最高レベルのパフォーマンスで、2013年に登場した伝説的PHEVハイパーカーの「918スパイダー」(2.6秒)を超えた。なおこれらの数値はスポーツプラスモードの数値だが、ノーマルモードでも857PS(630kW)を誇る。

パワートレインの最大の特徴は、直接冷却式モーターを採用したことだ。1000PSという高出力においては熱管理が重要となるが、通常の水冷モーターではなく、グローバルパートナーであるモービル1と共同開発した専用オイルをモーター内部へ直接流す油冷方式モーターを採用したことで、冷却効率を高め、高出力を維持するという。冷却性能を高めたおかげで、モーターも3分の2のサイズにコンパクト化できたという。電動車にとっては回生ブレーキも重要な要素だ。最大600kWという回生出力を持ち、一般道においては約97%の減速を回生ブレーキのみでカバーするという。この技術は2019年から参戦するフォーミュラEの最新マシン「99X」由来の技術だ。

電力量113kWhのバッテリーを搭載し、急速充電は欧州仕様では400kWに対応するというが、日本では現時点では150kWが最大だという。今回、新採用のデュアルクーリングにより、上下両面から冷却・加熱を行うことが可能で、真夏から真冬まで急速充電性能が向上した。高温・低温時でも性能を維持し、安定した出力維持が可能だという。また日本仕様ではアナウンスはなかったが、ワイヤレスチャージングについても本国では発表されており、さらに利便性を高めることに貢献するだろう。

高いシャシー性能と空力性能を発揮

スポーツカーとして重要なシャシー性能も非常に高いスペックを誇る。もともとフロアにバッテリーを敷き詰めるBEVとなったことで、重心高は83mm下がっているが、さらに全車にエアサスペンションとPASMを標準装備し、Sとターボにはポルシェアクティブライドを搭載している。ポルシェアクティブライドとは積極的なピッチ・ロール制御を行い、ブレーキング時にはノーズダイブも軽減されるという。コンフォートモードでは極めてフラットな乗り心地をもたらし、スポーツモードではバイクのように内側にバンクするコーナリングが可能になるという。

さらにリアアクスルステアリング(最大5度)を装備することで、最小回転半径は5.9mから5.4mに縮小し、狭い駐車場における取り回しが向上する。高速走行時には安定性も増す。電子制御LSDのようなPTV Plusも装備される。

もうひとつ大きなトピックは新可変エアロとしてフロントエアフラップおよびリアスポイラーが全車で標準されることだ。ターボにはさらにリヤアクティブエアロブレードを初採用している。リヤバンパー左右に縦に内蔵されたこの可変エアロパーツは、55km/h以上になると迫り出し、35km/h以下で格納される。ル・マンを制したレーシングカー「917」のロングテールなど、モータースポーツで培った空力思想を市販車へ応用したもので、高速安定性向上のほか航続距離延長、空気抵抗低減を実現するという。Cd値はSUVで0.25、クーペで0.23という。

単なるフル電動SUVではない

ポルシェは、カイエン エレクトリックを時代に即したフル電動SUVというだけでなく、20年以上築き上げてきたカイエンのDNAを受け継ぐモデルとして位置付けている。モータースポーツ由来の空力技術やフォーミュラE由来のモーター冷却技術、最新のサーマルマネジメントを投入し、ポルシェらしいステアリングフィールやブレーキフィール、スポーツ性能を維持することを最大の開発テーマとしている。

プレゼンテーション全体を通じて「フル電動化してもなおポルシェであり続ける」というメッセージが強調されていた。その実力はどれほどか? 同日開催された試乗会の様子は後日リポートを掲載する。なおデリバリー開始は9月2日を予定しているという。

PHOTO/平野陽(Akio HIRANO)、GENROQ、ポルシェ ジャパン

車両本体価格(消費税込)

カイエン エレクトリック 1335万円
カイエン S エレクトリック 1676万円
カイエン ターボ エレクトリック 2101万円
カイエン クーペ エレクトリック 1407万円
カイエン クーペ S エレクトリック 1717万円
カイエン クーペ ターボ エレクトリック 2165万円

「ポルシェ カイエン クーペ エレクトリック」の走行シーン。

「その最高出力は1156馬力に到達」ポルシェカイエンクーペエレクトリックの予約受注開始【動画】

ポルシェジャパンは、新型フル電動SUV「ポルシェ カイエン クーペ エレクトリック」を発表。予約受注を、2026年4月24日から全国のポルシェ正規販売店においてスタートした。