アメリカンモーターサイクルを代表するブランド
Indianはアメリカ初のモーターサイクルカンパニーとして1901年に誕生(設立当時はThe Hendee Manufacturing Company)1923年にIndian Motocycle Companyに改名したが、1953年にすべてのモデルの生産を停止し、長い休眠時代に入る。
その後幾度となくIndianブランドの再興が図られるが、2011年ポラリスインダストリーズ(スノーモビル、ATVなどのUSメーカー)によって買収されたことにより、本格的なブランド復活となる。ポラリスはVictoryというバイクブランドを持っていたがIndianを買収後、Victoryブランドを終了し、歴史的ブランドのIndianへ集約してラインアップを拡充させている。
アメリカのモーターサイクルといえばHarly Davidsonが挙げられるが、現在はこの2社がアメリカンモーターサイクルを代表するブランドとなっている。
そんなIndianといえば真っ先に思い出される代表的なモデルがChiefではないだろうか。1922年に最初のChiefが誕生しているが、最も特徴的なデザインは1940年代後半に登場した深いフェンダーを持つものであろう。(イラストは1948年型のChief) そしてこの往年のChiefをセルフカバーしたともいえるのが先日発売されたChief Vintageである。
典型的アメリカンスタイル
モーターサイクルはアイアンホースとも言われるように時として馬に例えられるが、アメリカにおいてはカウボーイが乗る馬ということになるだろう。馬に乗り牧場で一日中仕事をするために、長時間乗っていても楽で疲れない姿勢であることが必須である。モーターサイクルにおいても国土の広さやどこまでも直線が続くハイウエイといった環境から、長時間でも快適で疲れないライディングポジションが求められる。その点がカウボーイのための馬と共通するポイントだと言える。またモーターサイクル自体にも、そんな環境でゆったりと走れる大排気量のエンジンを搭載し、ホイールベースが長く、低重心でシートも低いLow & Longなスタイルが一般的には好まれている。
そんなアメリカンバイクの王道をいくようなChief Vintageだが、全体的な印象は大きく堂々とした車格で、いにしえのChiefらしさを充分感じられるものとなっている。特徴的な深いフロントフェンダーとその上に乗ったマスコット(ヘッドドレスと呼ばれている)、ティアドロップ型のタンク、サドル形状のシングルシート、フロント同様深いリヤフェンダーなどによりChiefが持つ雰囲気を上手く再現している。一般的にモーターサイクルでは車重の軽さが走りや性能の良さにつながると考えられているが、このChiefはそれを無視しているかのように前後フェンダーは重量感のある鉄板をプレス成形したもので、プラスチックとは異なる質感を醸し出すとともに、Indianのこだわりを感じる部分でもある。


目に見えるもの全てがデザインの特徴となる
エンジンは1890cc空冷V型OHV2気筒のアメリカンモーターサイクルの王道とも言える形式だが、エンジンデザインにも往年のイメージを反映している。サンダーストロークエンジンと呼ばれるエンジンは、黒く塗装された空冷フィンを持つシリンダーの横にプッシュロッドを配置し、クロームのカバーによりアクセントをつけている。この円筒形のプッシュロッドカバーはそれぞれのシリンダーに一対取り付けられているが、かつて採用されていたSV(サイドバルブ)エンジンをオマージュし、2本が平行になるよう配置されているところも見逃せない。シリンダーヘッドカバーは進行方向に対し角度をつけたかつての空冷エンジンのフィン形状を思わせる巧みなデザインとなっている。

リヤサスペンションはツインショックのスイングアーム式だが、ショックユニットはスプリングを見せないカバータイプで、フレームと同色に塗装されリジッドサスのような印象を与えている。タンクは左右2分割されたティアドロップ型で、プレスラインなどが入らない大らかな曲面形状と、センターに配した黒いカバーとの組み合わせによりアメリカンモーターサイクルらしさを強調するデザインとなっている。
印象的なカラーはIndian Motorcycle Redと呼ばれる少しブラウン寄りのレッドで、かつて使われていたカラーを再現したビンテージ感の強いものである。カラーバリエーションとしては他にブラックメタリックが用意される。エキゾーストパイプからマフラーにかけては艶消しブラック塗装されており、往年のメッキ仕上げとは異なるが、フロントフォークのブラック仕上げと共にRED&BLACKの配色は重量感や凄みを感じる佇まいとなっている。そのエキゾーストパイプ(実際はプロテクターによってカバーされている)はミッションケースやフレームの横を通っているため、身長168cmの筆者が跨り右足を地面につける際には脛の内側にどうしても当たってしまう。これは身長の高いアメリカのライダーであれば気にならないことだろうけど。


電装品は現代的で、メーター本体はスタンダードな円形だが表示部は液晶で、タッチパネル操作により多様な情報が得られる。本国ではスマホと連動してナビも表示できるが日本仕様では対応していないとのこと。テールランプは左右のウインカー内にスモール・ブレーキ・ウインカーのLEDが内蔵されているタイプで、ライセンスランプなどと共にコンパクトにまとめられたユニットにより、すっきりとしたリヤビューとなっている。フロントフェンダー上にはネイティブアメリカン部族の酋長の顔をイメージしたヘッドドレスが装備されていてポジションランプとして点灯する。


シートはシングルシートのみが設定されていて、サドル型のどっしりと座るようなタイプのものだが、座り心地は良く足の動きを妨げない形状から足付き性の良さにも一役買っている。シート高は686mmと低く、タンクからシートにかけて後下りのシルエットを描き、リヤフェンダーの丸みへと繋がる抑揚のあるスタイルを生み出している。ハンドルは幅広く、シートとステップ(フロアボード)の3点の位置関係からライディングポジションは堂々とした乗車姿勢となり、大柄なアメリカンバイクに乗っている満足感は高い。重量は327kg(燃料込み)と重量級なのだが、重心の低さや V ツインエンジンの鼓動と低回転でも余裕のある走りは、のんびりと流すクルーザーとしてとても心地よいものであった。

主要諸元
全長x全幅x全高(mm): 2441x887x1175 軸間(mm): 1626 シート高(mm): 686 車両重量(kg): 327
エンジン種類: 空冷4サイクルOHV V型(狭角49度)2気筒 総排気量(cc) : 1890
最大トルク(N・m/rpm): 156/3300 トランスミッション: 6速リターン
タイヤサイズ: 前130/90 B16 73H 後150/80 B16 タンク容量(L): 15.1

