空力性能と機能美の両立。その伝統は最新のA6にも受け継がれている
その昔、「芸能人は歯が命」というCMが流行ったことがある。で、これは個人的な考えなのだが、スピードや音の爽快感を楽しむためのスポーツカーはエンジンが命、そしてA→B地点へ快適に移動するのが本分の実用車は足まわりが命、だと思う。
その考えに基づくならば、アウディの新型A6は紛うことなき実用車の鑑だ。とにかく、脚の仕立てが絶品。のんびりと流しているときはしなやかに路面の凹凸をいなして泰然とした乗り心地を提供し、ちょっとスポーティに走りたいときはタイヤをしっかりと接地させてコーナーを駆け抜ける。ステアリングを握っていると思わず「あ〜、いいなぁ…」と温泉に浸かったときのような独り言が出てくるくらい、気持ちの良いフットワークなのである。

…と、ここで新型A6の概要をご紹介しよう。アウディのアッパーミドルセグメントを担うA6だが、1968年に登場した初代アウディ100を起点に数えると新型は通算9世代目、A6の車名になってからは6世代目にあたる。これまでの8世代累計で、およそ1000万台が世界で生産されてきたという人気モデルだ。

ジャーマンスリーと呼ばれるドイツの3大プレミアムブランドの中でも、アウディは特に技術オリエンテッドなイメージが強い。A6においては、1982年に登場した3代目(当時の車名はアウディ100)がセダンでCd値0.30を記録し、当時の市販車として世界最高レベルの空力を実現して話題となった。また四輪駆動のクワトロが設定されたのも、この世代から。空力性能と機能美の両立という、以降のA6のアイデンティティはここで確立されたと言っていいかもしれない。

新型A6も、その資質をしっかりと受け継いでいる。Cd値はセダンが0.23、アバントが0.25で、いずれもアウディの内燃機関モデルとしては史上最も優れた数値を達成。セダンのボディサイズは全長5000mm×全幅1875mm×全高1465mm、アバントは全高が1485mmとなる。先代と比較すると、ホイールベース2925mmは同寸ながら全長は50mm長くなった。一方で全幅が10mm狭くなったのは、日本の狭い道での取り回しを考えるとうれしいポイントだ。


そしてA6と言えば、代々、その造形にも注目が集まってきたモデルだ。1997年登場の5代目(A6としては2代目)は、それまでの3ボックスシルエットと決別して、ルーフからリヤまでが流れるようなラインで構成されたミニマルなデザインが衝撃的だった。その後継となる6代目(A6としては3代目)は和田 智氏がデザインを手がけ、シングルフレームグリルをモデルレンジ全体に採用。アウディのブランドアイデンティティを確立するとともに、より流麗な姿へと進化を遂げた。

新型も、掛け値なくスタイリッシュだ。フロントエンドは、低くワイドに構えた大型シングルフレームグリルを備え、スリークでスリムなヘッドライトが組み合わされる。アバントはこのクラスのワゴンとしては傾斜の強いDピラーが特徴で、居住空間を削ることなくデザインと空力を高い次元でまとめ上げている。

インテリアの眺めは先代から一変した。運転席前の11.9インチとセンターの14.5インチが一体のパネルにまとめられ、助手席用の10.9インチも全車標準。三つの画面が多彩な情報を乗員に届ける。


アダプティブエアサスペンションとホールホイールステアリングはぜひ付けたい!
日本市場向けの新型A6は、パワートレインが2.0L直列4気筒に集約された。ガソリンのTFSIが200kW(272PS)/400Nm、ディーゼルのTDIが150kW(204PS)/400Nmというアウトプットで、いずれも7速DCTとクワトロ(4WD)が組み合わされる。
今回試乗したのは、セダンのガソリンモデルとなる「A6 200kW TFSI quattro」だ。冒頭でご紹介したとおり、印象的だったのはシャシーの完成度の高さである。新型A6は内燃機関用の最新プラットフォーム「PPC(Premium Platform Combustion)」を採用し、サスペンション形式は前後とも5リンク式。オプションのアダプティブエアサスペンションは、試乗車にも与えられていた。255/40R20タイヤを履いていて、乗り心地にはかなり不利なはずなのだが、それをまったく感じさせないのだ。

ドライブモードを「コンフォート」に設定して走り出す。荒れた路面に差し掛かっても、乗員にはごく微細な振動が伝わるのみ。かといって柔らかすぎてフワフワとボディが上下することもない。フラットな姿勢を保ちながら、凹凸をサスペンションが的確に吸収しているのがわかる。

山中湖周辺の山道に入り、ドライブモードを「ダイナミック」に変更してみる。すると明確にダンピングが引き締まり、ロールを許すことなく、右に左へとRのきついコーナーを切り返していくことが可能となる。とても諸元表上で1980kgという車重のアッパーミドルセダンとは思えない軽快さに、思わずニンマリである。
そうした身のこなしには、オプションのオールホイールステアリングも効いていそうだ。60km/h以下では後輪を逆位相に最大5度操舵して取り回しの良さを高め、60km/h以上では同位相に最大2度操舵して直進安定性を稼ぐというもの。最小回転半径は6.0mから5.4mへ縮まるので、狭い場所での駐車も格段にやりやすくなる。自分がオーナーになるのならば、この2つの装備はぜひ選んでおきたい、と痛感した次第だ。

また、今回新しく導入されたのがドライブモードの「アシスタント」も便利。アダプティブエアサスペンション装着車で利用できる機能で、走行状況とドライバーの好みを学習し、最適な走行モードを車両側が自動で選択してくれる。最初は物珍しくて頻繁に切り替えたりするものの、そのうち面倒くさくなって、ずっと同じドライブモードで走っている人は少なくないはず(?)。「アシスタント」に設定しておけば、ドライブモードの宝の持ち腐れ状態を防止してくれるというわけだ。
新型A6で印象的なのは、脚だけではない。エンジンも秀逸だ。272PS/400Nmというスペックの数字からして力不足のはずもないのだが、さらにガソリンとディーゼルの両エンジンには、「MHEV plus」が搭載される。従来のベルトオルタネータースターターに加えて、トランスミッションのアウトプットシャフトに48Vのモーターを配置する構成で、発進や追い越しの際には最大18kW(24PS)と230Nmの力で加速を後押しする。さらにMHEV plusは減速時には最大25kWのエネルギーを回生するほか、低速走行時や駐車時には部分的な電動走行も行って、燃費向上にも貢献する。

また、静粛性の高さも特筆したい。高速道路を80km/hで巡航する場面では、遠くにエンジンの気配をかすかに感じる程度で、風切り音やロードノイズも抑えられており、程よい静けさの中で心穏やかに移動することができた。
そんな無類の快適さと走りの楽しさを兼ね備えた新型A6だが、購入を検討する際に悩ましいのが、同じPPCプラットフォームを使うA5との関係だ。A5のボディサイズは全長4835mm×全幅1860mm×全高1455mmで、新型A6よりも165mm短く、15mm狭く、10mm低い。ホイールベースの差は30mmだ。A5が先代A4より大きくなったぶん、A6とのサイズ差は縮まっている。そして、同じ2.0Lガソリンターボを搭載するグレード同士で価格を比べてみると、新型A6が885万円なのに対してA5は700万円から購入が可能となっている。となると、A5に食指が伸びる気持ちもわかるのだが、実際に新型A6に乗ってみると、走りの面では確実にクラスが上だということが実感できるに違いない。


| グレード | アウディA6 TFSI quattro 200kW | ||
| 全長 | 5000mm | ||
| 全幅 | 1875mm | ||
| 全高 | 1465mm | ||
| ホイールベース | 2925mm | ||
| トレッド(前/後) | 1625/1610mm | ||
| 乗車定員(名) | 5 | ||
| 最小回転半径 | 6.0m | ||
| 車両重量 | 1980kg | ||
| トランク容量(VDA値) | 452L | ||
| エンジン種類 | 2.0L直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ | ||
| 総排気量 | 1984cc | ||
| ボア×ストローク | 82.5×92.8mm | ||
| 圧縮比 | 10.5 | ||
| エンジン最高出力 | 200kW(272PS)/5000-6500rpm | ||
| エンジン最大トルク | 400Nm(40.8kgm)/1600-4500rpm | ||
| 電動アシスト(MHEV plus) | 最大18kW(24PS)/230Nm | ||
| 燃料(タンク容量) | 無鉛プレミアムガソリン(61L) | ||
| トランスミッション | 電子制御7速Sトロニック | ||
| 駆動方式 | quattro(4WD) | ||
| 燃費(WLTCモード) | 15.2km/L | ||
| サスペンション | 前:5リンク式マルチリンク 後:5リンク式マルチリンク | ||
| ブレーキ | 前:ディスク 後:ディスク | ||
| タイヤサイズ | 225/55R18(試乗車はオプションの255/40R20を装着) | ||
| 価格 | 885万円 | ||






