Q. 真夏のツーリング、最高気温以外で気にすることはある?

投稿者:三重県/初老のハンター乗りさん

真夏のツーリング前、天気予報でまず見るのは最高気温。これはもちろん大事。

明日の天気は晴れ、降水確率10%、最高気温33℃。「昨日は35℃だったから、明日はちょっとラクそうだな」

夏になると、こんな感じでツーリングの予定を立てていません?

ところが実際に走ってみると、「あれ? 昨日より2℃も低いのに、今日の方がキツくない?」なんてこともある。

そこで、最高気温と一緒にチェックしてほしい数字がある。それが「WBGT(暑さ指数)」なんだ。

33℃なのに昨日よりツライ!? その答えが「WBGT」にある

WBGTとは「Wet Bulb Globe Temperature」の略で、日本語では「湿球黒球温度」、一般には「暑さ指数」と呼ばれている。じつは新しい考え方ではなく、熱中症を予防する目的で1954年にアメリカで提案された指標なんだ。きっかけになったのは、高温多湿の環境で厳しい訓練を行うアメリカ海兵隊の新兵訓練所。気温だけでは暑さの危険度を十分に判断できないため、身体が受ける暑熱ストレスをより現実に近く捉える方法として考えられた。

では、普通の気温と何が違うのか。

WBGTが見ているのは、単純な気温だけじゃない。人体と外気との熱のやりとりに大きく影響する「湿度」「日射・輻射など周囲の熱環境」「気温」の3つを取り入れている。だから、同じ33℃でも湿度が高い、日差しが強い、地面や建物からの照り返しがキツい……といった条件が重なれば、身体への負担は同じとは限らない。

たとえば昨日の最高気温は35℃、今日は33℃。「昨日より2℃低いから、今日はちょっとラクかな」そう思って走り出したのになぜか妙にキツい。そんなことも十分あり得るんだ。

ヘルメットをかぶり、ジャケット、長ズボン、グローブ、ライディングシューズ。安全のために身体を覆う装備が多いうえ、信号待ちでは走行風が止まり、頭上からは直射日光、足元には熱を持ったアスファルト。

つまり、気温が2℃低いからといって、身体への暑さの負担まで必ず軽くなるわけではない。そこで役立つのが、湿度や日射・輻射なども含めて暑さを見られるWBGTというわけなんだ。

ちなみにWBGTは、その後スポーツや労働現場にも広く使われるようになり、国際的な暑熱環境の評価指標として定着している。単なる“暑そう・涼しそう”ではなく、熱中症リスクを考えるための実用的なモノサシというわけだ。

そして環境省は、WBGTが「28」を超えると熱中症患者の発生率が著しく増える傾向を示している。

つまり、真夏の天気予報では「最高気温33℃」だけでなく、「WBGTはいくつ?」まで見ておくと、暑さがもう少し立体的に見えてくるのである。

とりあえず「25・28・31」を覚えよう!

WBGTなんてアルファベットを出されると、急に理科の授業みたいだけど(笑)、普段使いなら数字の目安はそれほど難しくない。

まず覚えたいのは「25・28・31」。

環境省が紹介する日常生活の指針では、WBGT25以上28未満が「警戒」、28以上31未満が「厳重警戒」、31以上が「危険」。21以上25未満は「注意」、21未満は「ほぼ安全」が目安とされている。また環境省は、WBGTが28を超えると熱中症患者の発生率が著しく増える傾向も紹介している。

バイク乗りなら、たとえばこんな感覚で使うと分かりやすい。WBGT25を超えたら「今日は暑さを意識して走ろう」。28を超えたら「昼までいつも通り走り続ける?」と、出発時間や休憩回数、走行距離をもう一度考えてみる。31以上ならかなり厳しい暑さ。昼間の長時間走行を避ける、予定を短くする、場合によっては乗らないという判断も選択肢に入れたい。

ここでひとつ、表記で混乱しやすいポイントも押さえておこう。

WBGTそのものの単位は摂氏度(℃)だけど、環境省の熱中症予防情報サイトでは、気温との混同を避けるためWBGTの表示では「℃」を省略している。だから記事内でも、「最高気温33℃」「WBGT28」のように分けている。

もちろん、WBGT28ならバイクOK、31ならバイク禁止……という数字ではない。あくまで暑さによるリスクを判断するための目安だ。

でも「今日は何℃?」しか見ていなかったところへ「WBGTはいくつ?」がひとつ加わるだけでも、準備しておくものなど真夏の走り方を決める材料はかなり増えるだろう。

環境省サイトを見てみよう! 「交差点」「駐車場」も要チェック

では、WBGTはどこで見られるの? 特別な測定器も売ってはいるが、環境省の「熱中症予防情報サイト」で確認することができる。

環境省は全国841地点のWBGT情報を提供していて、47地点では実測値、794地点では実況推定値を掲載。全地点で予測値も提供している。

使い方もシンプル。「全国の暑さ指数(WBGT)」から都道府県を選び、自分のいる場所や目的地に近い地点を開く。するとグラフや日表で、今日だけでなく明日・明後日の予測まで確認できる。

たとえば朝はWBGT24、午前中に28、昼には31という予測なら、「朝のうちに走って、昼はしっかり休もう」と予定を組み替えられる。

ツーリング派なら出発地だけでなく目的地も見る。通勤ライダーなら朝だけでなく、仕事が終わる時間帯もチェック。

「朝は涼しかったから帰りも大丈夫」とは限らない。そして、以下の情報もバイク乗りには大事な要素。

環境省サイトでは通常のWBGTだけでなく、「駐車場」「交差点」「バス停」「住宅地」など、“生活の場”を想定した参考値にも切り替えられる。

ライダーなら、まず「交差点」を見てほしい。

環境省では、片側3車線道路のような大きな交差点を想定した参考値まで用意している。通常の気象観測は風通しなどを考慮した条件で行われるが、実際の街中では日差し、建物からの輻射熱、地面からの反射などが加わり、より厳しい暑熱環境になることがあるためだ。

真夏のバイクで、「走っているとまだいいのに、赤信号で止まった瞬間に暑っ!」となるあの感じ。数字を見てみると、いつもの感覚とつながってくるのがおもしろい。

「駐車場」もツーリング派には身近だ。環境省では、日陰のないアスファルト舗装の大規模駐車場を想定した参考値を用意している。アスファルトや周囲から受ける熱まで考えると、SA・PAや道の駅へ着いてバイクを降りただけでは、身体をしっかり冷ませているとは限らない。

「着いた~!」とヘルメットを脱いで、そのまま炎天下の駐車場で30分バイク談義。やりますよね(笑)。でも休憩するなら、できれば日陰や冷房の効いた施設まで移動して身体を冷ましたい。

なお、「交差点」「駐車場」などの数字は、その場所をリアルタイムで直接測定しているわけではない。環境省の観測・研究結果をもとに通常のWBGTとの差を統計的に処理して算出した参考値なので、実際の環境は風や建物、日差しなどによって変わる。

それでも、ツーリング前の天気チェックが、「最高気温33℃か」だけだったところへ、「昼のWBGTは30」「朝なら25」「目的地の午後は31か」という情報が加われば、走る時間や休憩プランはかなり考えやすくなる。

気温を見るのをやめる必要はない。これからは「気温+WBGT」がより安心度が高い。

もちろん、「そんな面倒なことせずに夏なんだから覚悟の上さ」という意見も分かる。ただツーリング派も通勤派も、天気予報を見るついでに「今日のWBGTは?」までチェックしてみると、真夏のバイクとの付き合い方がちょっと変わるかもしれませんね。

POINT

・WBGT(暑さ指数)は、気温だけでは見えにくい暑さによる身体への負担を見る指標
・25以上=警戒、28以上=厳重警戒、31以上=危険が目安
・環境省「熱中症予防情報サイト」で全国841地点の実況・予測を確認できる

※記事内の回答は、環境省および厚生労働省の公開情報などを基にライダー向けに構成しています。暑さによる影響には個人差があり、体調や服装、活動量、実際の走行環境などによっても異なります。

【モトチャンプ編集部】