連載

あのころ、あのとき、あのカタログ 青春型録!

語り合うのはこの2人!

津田洋介:80’sスクーターを中心に往時のバイク文化にあまねく精通する「TDF」代表。
宮崎正行:CB750Fにずっと乗っています。グラトラを格安で手に入れました。気負いのまったくない原付みたいな250です。

25ℓでフルフェイス可能! スズキの次世代クォーター!

▲メインコピーは「バイクで来たとは、誰も知らない。」。バイク愛はひとまずさておき、日常の移動ツールとしてアクロスがいかに高機能かをはっきりアピールしている。高機能には「デートでお役立ち性能」ももちろん含まれる。

──250ccクラス最高出力の45ps力を発揮する水冷4気筒DOHCエンジンを搭載!

津田:ほお。

──さらに、中低速域のトルクアップを図るための「SPES(スズキ・パワーアップ・エキゾースト・システム)」を採用!

津田:ふむふむ。

──さらにさらに、造形美と機能美を融合させたエアロなフルカバードボディを装着!

津田:ん?

──加えて……テールカウル内には給油がめちゃラクチンな、電磁ロック式フューエルタンクリッドがおごられています!

津田:そりゃスズキのアレだろ。

編集部(以下、編):YOU、わずかに言い淀んだね。津田さんのガードはそんなに甘くないから。

津田:ココロのどこかにやましいところがあったんじゃない? 変わり者扱いだったアクロスだけに!

▲初期型でラインナップされていたレッド、ブラック、ホワイトの3色だったが、その後なんとなく赤ベースの「デカールタイプ」と黒ベースの「ストライプタイプ」の2色展開に。お値段そのまま。
▲発売3年後の1993年に一度目のマイナーチェンジが行なわれた。往時の出力規制を受けて40psにパワーダウン。でも価格は1万3000円アップの55万8000円へ。型式は「GSX250FP」。

──ええ⁉ バレました?(笑)

津田:でもアクロスはいいバイクだよ。結論を先に言っちゃえば、時代の先を行き過ぎていただけ。不器用なスズキらしい、画期的なラゲッジスペース付きスポーツバイク。

編:ほんと、ほんと。NS‐1はアクロス後の1991年発売だし。このタイプはアクロスが世界初。

──でも恥ずかしながら自分も含めて、大半のバイク好きは「これはないでしょ」と乗らずにたかを括ってスルーしちゃいました。とくに「単車は丸眼一灯!」みたいな保守本流のライダーへのウケはまったく良くなかったですね。

津田:股間のあの場所はガソリンを貯めておくスペースって、誰が決めたワケでもないのにね。でも「タンクはこの位置しかない!」とみんなが盲信していることを、スズキは軽〜くひっくり返してみせた。

──カッコいい!

編:でもNS‐1は売れて、アクロスは売れなかった。なんでだろ?

津田:もともとは1989年に開催された東京モーターショーに「X913」というネーミングで出品されたコンセプトモデル。90年に市販化された初期型のフルエアロボディにも、その名がしっかり刻まれているね。デカールだけど。

編:ほんとだ。しかもけっこう大きい。なぜか塗色がホワイトのアクロスには貼られてないけど。

──世間で言われているほど、本当に不人気車だったんですかね? デビューから8年が経過した1998年に最終型が発売されているんですが、不人気だったらそこまで引っ張りますか?

▲さらに、のコピー「アフターバイクを考えた。」もアクロスの先取性をしっかり打ち出していてなかなかの出来栄え。たかがスペース、されどスペース。25ℓものラゲッジはやっぱり画期的だ。

タンク部分がラゲッジスペースで、給油口はテールカウル内。それ以外はごく真っ当なスポーツバイクなのがアクロス、機種名は「GSX250F」だ。タンク容量は12ℓ、車両価格は54万5000円。

編:新〝奇〟種ゆえ、ほどほどのセールスということで。

一同 ……上手いのか?

津田:まあ、ぜんぜん売れなかったわけじゃないと思うよ。ファンも一部、しっかりついていたしね。スズキはのちの1993年にRF400R、94年にはRF900Rっていうアクロス先輩の開発コンセプトに似たフルエアロボディのスポーツツアラーも国内発売したし。

──ありましたねえ! テスタロッサみたいなサイドスリットが派手に入ったヤツ!

編:RF900Rは『シークエスト』でロイ・シャイダーが乗っていたな。

──ナナハンオーバーの大型バイクが国内で解禁されたのも、アクロスが発売された90年ごろでしたね。

編:ベースとなっている車種はどこらへんなんだろ?

津田:ちょっと前のGSX‐R250。だから走りのパフォーマンスは潜在的に高いレベルにあるし、年式的に熟成も進んでいるからいい味出していると思うよ。でも……。

一同 でも?

津田:あのリヤカウルの上端にある電磁ロック式フューエルタンクリッド、かんたんに言うと「電気モーターでカパッと開く給油口のフタ」がちょっとだけ壊れやすいんだ。ワイヤー式じゃないから、不調になるとガソリンが入れられなくなる。ツーリングでショック!(笑)

一同 そりゃ困る!

津田:しかもラゲッジスペースの前後左右に余裕が少ないから、フルフェイスヘルメットを取り出すときに手を挿し込むのがちょっとタイヘンっていう。隙間があんまりないんだ。ま、ご愛敬ってことで。

──つまり……フルフェイスはデカチンってことですかね?

一同 いえ、違います。

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