原付ミニレプリカの先駆け、GAGはこんなバイクだった

箱根と伊豆スカイラインを結ぶ熱海峠にある「森の駅箱根十国峠」で、2026年7月19日に十国峠原付ミーティングが開催された。会場には関東・中部を中心に全国から100台を超える原付カスタムマシンが集合。カブ系からスクーター、レプリカ、旧車まで、じつに幅広い車種が並んでいた。そんな濃い参加車の中で、思わず足を止めたのがこのスズキ・GAGだ。

一見すると、きれいに仕上がったGAGのワークス風カスタムに見える。ところが近づくと、まず目に飛び込んでくるのが軽二輪登録の白ナンバー。50ccクラスの車体に対してナンバープレートの存在感がやたら大きい。その時点で「これはただ者じゃない」と分かるわけだ。

GAGは1986年に登場した50ccのミニレプリカ。角パイプのバックボーンフレームに空冷4スト単気筒エンジンを積み、フルフェアリングをまとった姿は、まさに“ミニレーサー”そのものだった。全長1540mmというコンパクトな車体に、フロントディスクブレーキや本格的な足周りを与えながら、キャラクターとしてはガチガチの競技車ではなく、遊び心たっぷりのプレジャーバイク。いわば、ミニレプリカ文化の入り口にいた1台なのである。

ただ、その年のうちにヤマハからYSR50が登場し、さらに翌年にはホンダNSR50が現れる。サーキットで本気度の高いミニスポーツが脚光を浴びていく中で、GAGは少しずつ独特の立ち位置へ追いやられていった。発売当時はSP武川やヨシムラからパーツも出ていたけれど、いまではそれらもかなりの希少品。そう考えると、GAGという車種自体が、今となってはマニア心をくすぐる存在なのだ。

GAGらしいミニレプリカのシルエットはそのままに、細部はかなり濃密。ひと目で普通じゃない雰囲気を漂わせる。

小さなボディに187cc! 見た目そのまま、中身は完全に別モノ

車体のサイズ感に対して白ナンバーの存在感が強烈。187cc化された軽二輪登録車で、高速道路走行も可能だ。

このGAGの最大の見どころは、なんといっても心臓部。搭載されているエンジンは、モンキー系の中国製ユニットとして知られるZONGSHEN W190を採用。排気量は187ccで、エンジン単体でも15psを発揮する本格派だ。もちろんポン付けでは収まらず、エンジンマウントを加工して搭載。そこへケーヒン製PEΦ28キャブレターとヨシムラ製マフラーを組み合わせているのだから、ノーマルの5.2psとはまったく別世界。出力感覚は3倍級で、高速道路を走れるという話にも納得がいく。

しかもこのマシン、ただ大きなエンジンを押し込んだだけじゃない。外観はGAGらしさをちゃんと残しながら、各部をかなり丁寧に作り込んでいるのがニクいところ。ホイールは純正ハブを生かしつつ、フリーウェイ用リムを組み合わせた仕様。ブレーキはアドレスV125用大径ディスクにブレンボキャリパーをセットし、見た目以上にしっかり止まる構成になっている。フロントフォークは純正ベースながらTECHNIX(テクニクス)によるチタンコート加工、ステムはS-GARAGE特注の削り出し品。さらにリヤ周りはGクラフト製アルミ角形スイングアームにNSR用社外製リヤショックを組み合わせるという、抜かりのない内容だ。

外装のまとめ方もユニーク。燃料タンクはデータクラフト製FRPタンクを使い、純正シートカウルと組み合わせることでGAGのシルエットを崩さない。アッパーカウルは純正ベースを加工し、アンダーカウルにはキャラコレクション製モンキー用を流用。パーツ単体で聞くとかなり大胆な組み合わせなのに、完成車として見ると不思議なくらい“GAGらしい”。青/白のスズキワークスカラーのまとまりもあって、見た瞬間に「これぞGAG」と分かる雰囲気をしっかり残している。

メーターはACEWELL製のデジタルタイプで、視認性は現代的。しかもこの小さな車体にETCまで装備しているのだから徹底している。見た目はミニ、でも実力は軽二輪。そんなギャップが、この1台のおもしろいところだろう。

エンジンは、中国製モンキー系のZONGSHEN W190(187cc)を装着。エンジン単体で15psを発揮。

アンダーカウルは、キャラコレクション製のモンキー用を装着。アッパーカウルのデザインともマッチしている。

ヨシムラサイクロンマフラーを装着。当時のGAG用ではなく、モンキー用を加工して装着している。

メーターはコンパクトかつ高機能なACEWELL製のデジタルタイプをチョイス。タコメーターはグラフ式で、シンプルで見やすい。

ホイールは、純正ハブにホンダ・フリーウェイ用リムの組み合わせ。ブレーキはアドレスV125用Φ200mmディスクとブレンボの対抗2ポットをチョイス。

Gクラフト製のアルミスイングアームを装着している。ちなみに現在同社のラインナップには存在しない絶版品。

28年かけて仕上げた“究極のGAG”

このGAGのオーナー・金吉工房さんが車両を手に入れたのは、今から28年前。たまたまバイクショップの店頭で見かけたGAGが気になり、当時乗っていたRG200Γから乗り換えたのが始まりだったという。そこから少しずつ手を加え、長い時間をかけて現在の姿へ進化させてきた。

欲しい部品を探し、使えるものは工夫して組み、似合う形を探りながらコツコツ育ててきた。その積み重ねがあるからこそ、いま目の前にあるGAGには“完成度”だけじゃなく“物語”も詰まっている。だから見れば見るほど、単なる改造車ではなく、オーナーと一緒に歳を重ねてきた一台に見えてくるわけだ。

ちなみに金吉工房さんは大型二輪免許も持っているが、所有車はこのGAGだけ。セパハンにバックステップ、小さな車体という、決してラクとは言えないポジションでロングツーリングまで楽しんでいるというのだから驚かされる。普通に考えれば「もっと大きいバイクのほうが楽でしょ」となるんだけど、そこをあえてGAGでやってしまうところに、このマシンとオーナーの関係性が表れている気がする。

GAGという車種は、もともと“面白さと遊び心”を持ったバイクだった。そのキャラクターをここまで濃く、しかも本気で育て切った一台はそう多くないはず。小さなレプリカに詰め込まれた執念と愛情、そしてちょっとした変態性(笑)。それら全部をひっくるめて、これはまさに“究極のGAG”と呼びたくなる一台だった。

手に入れてから、少しずつ手を加えながら現在の姿へ。派手な一発カスタムではなく、長い時間をかけて育ててきた1台なのだ。

このGAGを捕獲したイベントはこちら!

今回のGAGを撮影したのは、2026年7月19日に森の駅箱根十国峠で開催された「十国峠原付祭十周年」。今年で10周年を迎えた十国峠原付ミーティングには、関東・中部を中心に全国から100台を超える原付カスタムマシンが集合した。もともとはスーパーカブオンリーのイベントとしてスタートし、現在ではさまざまな原付カスタムが集まるイベントへと広がっている。

今回紹介したGAGも、そんな濃い参加車の中からモトチャンプが気になった1台。十国峠で捕獲したほかのマシンたちも、これから一台ずつじっくり紹介していくのでお楽しみに。

【モトチャンプ編集部】