2000rpmから扱いやすく8800rpmまで炸裂!

必要以上に手を入れず500馬力へ!

1980年代末から30年もの間、スバルの主力エンジンであり続けたEJ20。2.0Lから2.6Lまで様々な仕様を組み上げてきたのが“ボクサーパラノイア”だ。

当然、ノウハウも豊富。「腰下がノーマルでも燃焼状態さえ適正に保てば、ブースト圧を2.0キロ掛けても問題ない」と代表の桑原さんは断言する。排気量2.0Lながらシリンダーの厚みは11mmもあり、純正ピストンも鋳造ながら極めて丈夫。そうしたEJ20の素性を生かし、必要以上にエンジン本体へ手を入れず500psを狙うのが、今回のVABだ。

タービン交換に当たっては、十分な風量を誇るHKS GTIIIシリーズや、このVABに装着されるGT3076などを推奨。それらを余裕を持って回しながら高めのブースト圧でトルクを出す方がエンジンへの負荷が少なく、結果としてブロー回避にも繋がるという。

「GT3076はHKS GTタービンの生みの親、作増さんが設計した傑作。スクロールの出来が抜群に良く、純正サイズで750psまで出せるんだから」と桑原さんが太鼓判を押す。ターボシャフトにはギャレットGTX3076用を使い、ボクサーパラノイアでは1.9キロほどのブースト圧を掛けて使用する。

もうひとつの選択肢がHKS GTIII-RS。ピークパワーは480psが目安で、GT3076に比べれば高回転域の安全マージンは若干削られるものの、価格は約半分。コストパフォーマンスを重視するなら有力な選択肢となる。

一方、さらなるステップとして桑原さんが推すのがHKS製キットを使った2.2L化だ。実質的な排気量アップは120ccほどだが、そのメリットは単純な排気量の数字だけではない。振動が大幅に低減し、トップエンドまで回す楽しさが増すという。

さらに4mmのストロークアップによって混合気のタンブルが促進され、燃焼速度も向上。高ブースト時の耐ノッキング性にも有利となり、「ノーマルとは全く別物のフィーリングになるよ」と桑原さん。よりチューニングに適したEJ20へと仕上げられるわけだ。

とはいえ、今回のVABはあくまで腰下ノーマルの2.0L。500ps&65.0kgmという数字だけを見ればハードなチューニングカーという印象を持つかもしれないが、実は極めてユーザーライクな仕上がりを見せる。それもそのはず。ボクサーパラノイアでは、この仕様をブーストアップの次に勧めているからだ。

エンジン本体で手を入れるのは、シリンダーブロックの締結剛性を高めるARP製11mm強化メインボルトが中心。純正10mmに対して締め付けトルクを高め、大幅なパワーアップにも屈しないブロック剛性を確保する。さらに70kgmを超えるような仕様ではノックピンを追加し、クランクシャフトに揉まれてブロック接合面がズレるのを防ぐ。

ヘッド周りはカムシャフトもバルブスプリングもノーマル。それでも9000rpmに迫るエンジン回転数を許容する。必要以上にパーツを交換せず、つまりは無駄なコストを掛けることなくポテンシャルを引き出す。そこに、EJ20チューンに対するボクサーパラノイアの真摯な姿勢が見て取れる。

もちろん、500psをストレスなく発揮させるための周辺環境はしっかりと整える。吸気側にはオリジナルの76φサクションパイプを投入。エアフロセンサーをオフセット装着することで吸気量の測定限界を高め、純正サクションでは400ps付近で上限に達するところを600psまで対応させている。

排気系は純正エキマニを残しつつ、フロントパイプ以降をHKSで統一。メタルキャタライザーとスーパーターボマフラーを組み合わせるほか、純正との接続も想定して65φに絞られているフロントパイプとマフラーの接続部を、内径76.3φのフランジへ変更して排気抵抗を低減する。

「ピークパワーだけでなく低中速のトルクもアップ。ポート加工より効果があるね。ストレスなく500psを実現するには、こういう部分も大事だよ」と桑原さん。大物パーツだけでなく、こうした細かな抵抗を取り除く積み重ねが500ps仕様の完成度を高めている。

インタークーラーはVAB純正より圧損が10%少ないHKS製に交換するものの、レイアウトは純正同様のトップマウントを踏襲。前置き化するとパイピングが長くなり、レスポンスや設定ブースト圧を維持する面で不利になるとの判断からだ。

燃料系にはデンソー960ccインジェクターを使用し、最大噴射率は95%。装着車両や目標馬力によって840ccや560ccなども使い分ける。

エンジン制御は純正ECUの書き替えで対応し、OBDIIポート経由でデータを引き出して任意のアドレスをカスタマイズできるエピファンを使用。ブースト圧はHKS EVC VI-IRで管理し、エンジン回転数とスロットル開度からマップを作ることで、スロットル開度とトルクが比例するようセッティングされる。

その結果は吸気量のデータにも表れている。取材時には毎分414.8gの空気を吸入しており、換算値は500.4ps。「この暑い時期でもこれだけ飲み込んでるから、気温が下がれば伸び代もあるってこと。GTIII-RSでも400gは吸うと思うよ」と桑原さんは話す。

そして、この500ps仕様で特筆したいのが実際の扱いやすさだ。GT3076を組んだ2.0L仕様ながら、街乗りで多用する2000〜3000rpmは純正タービンと同等の扱いやすさ。タービンが本格稼働する前の領域でもアクセルレスポンスに優れ、トルク感ではむしろ純正タービンを上回っているかもしれない。

そこから4000rpmを迎えるとパワーが大きく盛り上がり始め、5000rpmを超えると全解放。8800rpmに設定されたレブリミットまできっちりとパワーを追従させながら、タコメーターの針が弾けるように駆け上がる。その加速感には文句のつけようなどあるはずもなく、「2.0Lのノーマルエンジンで、この速さ!?」と驚くばかりだ。

もちろん、そのパワーを受け止める駆動系にも配慮される。純正6速MTは許容上限が600ps&60kgmとされるため、ORCカーボンツインプレートクラッチを装着。カーボン特有のミート特性によって唐突な駆動トルク入力を和らげ、ミッションへの負担を抑える。

また、SIドライブは各モードのスロットルマップを調整し、S#モードにはアンチラグ機能も追加されている。

足まわりにはエンドレスをベースとしたボクサーパラノイア仕様の車高調をセット。現在はフロント14kg/mm、リヤ16kg/mmのバネレートをテスト中で、フロントのロールセンターを下げる一方、リヤには径の細いGRB用スタビライザーを流用する。ブレーキもフロントにエンドレス6ポットキャリパー+370φローターを投入して強化した。

ホイールは10Jプラス40×18のボルクレーシングTE37SLで、タイヤは従来の265幅から275/35サイズのハンコック・ヴェンタスRS4へワイド化。500psという出力に対してグリップ力を高めながらも、「それでもタイヤにパワーを食われてる感じはないね」と桑原さんは言う。

500psという数字だけを追うのではなく、街乗りでの扱いやすさやレスポンス、耐久性まで含めて成立させる。そのために必要な部分には手を入れ、必要のない部分はノーマルを生かす。腰下ノーマルの2.0Lでここまでの速さを実現するVABは、EJ20が持つ潜在性能とチューニング適応力の高さを改めて見せつけてくれた。

⚫︎取材協力:ボクサーパラノイア 群馬県前橋市力丸町187-3

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速さを求めて手を入れるなら、重要なのはパーツの豪華さではなく、その効果を理解してクルマ全体を正しく機能させること。エンジンからサスペンション、ブレーキに至るまで、理論と実走を重ねながら独自のセットアップを構築したこのBL5は、まさにそれを体現する一台だ。普段の通勤にも使える日常性を残しながら、サーキットではWRX STIをも凌ぐ。その速さを支える理詰めのチューニングに迫る。

【関連リンク】
ボクサーパラノイア
http://www.boxerparanoia.com