AI Battery 4.0の最大のポイントは、電池セルの内部に専用AIチップを組み込んだこと。従来の車載バッテリーでは、セルから電圧・温度などの情報を取得し、それをBMS(Battery Management System)側で集約・演算して電池状態を判断するのが一般的。AI Battery 4.0はこれを一歩進め「セル自身が自分の状態を検知し、データを処理する」という構成を狙っている。

AI Battery 4.0のユニークポイントは、単に「バッテリーにAIチップを入れました」ということにとどまらない。BMSの演算機能を高性能化したのではなく、知能化の単位を「パック」から「セル」へ下ろしていることが重要である。従来のイメージでは[セル → センサー情報 → BMS → 車両ECU/クラウド]という階層だったところ、AI Battery 4.0は[セル内センシング → セル内AIチップによる処理 → 上位システムとの連携]という構成を目指している。

EVE Energyは2026年5月の発表で、AIチップ、セル内部センサー、無線通信技術によって「全感知」を実現すると説明。さらにクラウド側のAIモデルと連携して、走行条件やユーザーの運行パターンなどを学習し、電池の運用戦略を最適化する構想を示していた。セル数が数百~数千にもなるBEVのバッテリーでは、すべてのセルの状態を詳細に把握しようとすれば、取得するデータ量も演算量も膨大になる。そこで「全部のデータを上位BMSに送ってから考える」のではなく、「セルの近くで考えて、意味のある情報だけ上に送る」というエッジコンピューティング的な発想を、バッテリーセルそのものに持ち込んでいるわけだ。

さらにEVE Energyは[全感知:セル内部のAIチップ+センサー][深思考:クラウドAIモデルとの協調][自進化:運転条件・路況などを学習して制御戦略を更新]という3段階の構成を説明。「AIバッテリー」といっても、AIが電池の材料を制御するという話ではなく、セル → パック → 車両 → クラウドという複数階層にまたがって、電池の状態認識と制御を知能化する構想と捉えることができる。

EVE Energyの提唱は「BMSはどこまで中央集権型である必要があるのか」という問いに対する次世代の解決策のひとつといえよう。最近の車両では、中央集権型やゾーン型E/Eアーキテクチャが進み、演算を中央に集約する方向であることはよく知られるとおり。いっぽうでAI Batteryは「電池の状態を一番よく知っているのはセルなのだから、セルのところにも演算能力を置けばいい」という発想でシステムを構築している。車両全体では演算を中央に集約しながら、電池内部ではセルに知能を分散させるという構成が非常に興味深いところだ。

今回のIAAでは、このAI Battery 4.0を商用車向けの実際の製品群として欧州に持ち込んだ。同社ブースでは、LM815などのLMX系セル、LM815-641kWhの重トラック用床下バッテリーなどと組み合わせて展示している。