ホンダCB400スーパーフォアEクラッチ……998,800円

ボディカラーは、シルバー、ブラック、ホワイト、レッドの4種を設定。サイドカバーはいずれもブラック。

期待はしていなかったものの……

日本人の、日本人による、日本人のための並列4気筒ネイキッド。アメリカの第16代大統領を務めたリンカーンの言葉に倣うなら、1992~2022年にホンダが販売したCB400スーパーフォアはそんなバイクだった。

約30年に渡って販売が続く超ロングセラーになった、先代CB400スーパーフォア。

そして日本人にとって至れり尽くせりで贅沢な特性が実現できた背景には、すでにバイクブームのピークは過ぎていたとはいえ、日本の2輪市場が今とは比較にならないほど活況を呈していた時代に誕生し、早い段階で人気車としての地位を確立したという事情があると思う。

流麗なラインを描く新世代のスーパーフォアのエグゾーストパイプは、先代ではなく、1970年代のCB400フォアに通じる雰囲気。

だから2026年9月に発売が始まった、新世代のCB400スーパーフォアEクラッチに、僕はあまり大きな期待はしていなかった。何と言っても、このバイクが誕生するきっかけは中国市場なのだ。

近年になって急成長を遂げている中国市場の需要を見込んで、400cc並列4気筒を搭載するフルカウルスポーツの企画がスタートし、開発を進める中で排気量を500ccに拡大することとネイキッド仕様を製作することが決定し、でもやっぱり日本市場には400ccが必要じゃないか……という展開を経て、新世代のCB400スーパーフォアは生まれたのだ。

ところが実際に走らせると、素性が異なるうえに、先代との共通部品は存在しないのに、新世代のCB400スーパーフォアは紛れもなくスーパーフォアだった。

もっとも、このモデルには現代の技術も盛り込まれているのだが、人気車の仕様変更で過去に何度か落胆を味わった身としては、先代の遺伝子を継承していることに安堵を覚えたのである。

走り始めて5分で勝手知ったる愛車の感覚?

まずはシートに跨ってハンドルグリップに手を添えた段階の話から始めると、ワイドなテーパーハンドルは先代とは明らかに異なるデザインで、計器は近年のホンダで定番になっている5インチTFTフルカラーディスプレイなのだが(先代は昔ながらのアナログ2連式)、特徴的なラインを描くガソリンタンクと内腿のフィット感や、リラックスする上半身に対して下半身がちょっとタイトになることは、ちゃんとスーパーフォア。

ちなみに先代のシートは、世代を重ねるごとに座面が前下がりでウレタンが薄くなっていき(市場の要求に応えて、足つき性を良好にするため)、僕はその方向性に違和感を抱いていた。

でも座面高が755→780mmに上がった新型のシートは、先代に通じる下半身のちょっとタイトさを維持しつつも、座面には適度なフラット感と幅があるし、ウレタンは決して薄くはない。おそらくこのシートなら、ロングツーリングを快適にこなせるだろう。

では市街地での印象はどうかというと、走り始めて5分で勝手知ったる愛車のように扱える感覚は、やっぱりスーパーフォア。

世の中にはそういった感触に対して、面白みに欠ける、奥深さが感じられない、などという異論を述べる人がいるようだが、試乗日の天気がどしゃぶりの雨だったこともあって、この日の僕には先代から継承したフレンドリーさが、ものすごくありがたかった。

先代と同様の美点と、先代以上の運動性能

続いては市街地を抜け、ツーリングを想定して高速道路や峠道を走っての話で、そういった状況で僕が最初に感心したのは、先代と同様のエンジンフィーリング。

基本構成は中国市場向けのCB500スーパーフォアと同様でも、新世代のCB4000スーパーフォアの並列4気筒エンジンは、数多くの部品を専用設計。なお先代の特徴だった可変バルブ機構のハイパーV-TECは、現代の技術ならオーソドックスな動弁系で十分な高揚感を実現できるため、このエンジンでは不採用。

と言っても、新型は左手の操作が不要となるEクラッチ+クイックシフターや、状況に応じてエンジン特性とエンブレ/トラコンの利きを調整できる3+2種のライディングモードを採用しているし、電子制御式スロットルの導入でインジェクションの制御が緻密になっているから、同条件での比較なら新型に軍配が上がるだろう。

ただし、トップ6速30km/h前後からでも余裕で加速する柔軟性や、並列4気筒ならではの高回転域のシャープな吹け上がりが気軽に堪能できる一方で、低中回転域でもストレスが溜まらない特性は(それどころか、なかなかの高揚感が得られる)、可変バルブ機構のハイパーV-TECを採用していた先代とよく似ているのだ。

それに続いて感心したのは、峠道での運動性能。前述したようにこのモデルは、走り始めて5分で勝手知ったる愛車のように扱える性能を備えているので、先代と同様の感覚で大小のカーブが続く道を気持ちよく走れることは想定内だった。ただし、新型にはさらにその上……と言いたくなる世界を見せてくれたのである。

具体的な話をするなら、ダブルクレードルフレーム、正立式フロントフォーク、ツインショック式リアサス、1990年代生まれのダンロップD204といった昔ながらの構成を維持し、車重が201kg(最終型の数値。1992年に登場した初代は192kg)だった先代は、目を三角にして峠道を飛ばすと、場面によっては車体にそこはかとない不安を覚えたのだ。

新世代のスーパーフォアのフレームは、エンジンを強度部材として使用するダイヤモンドタイプ。

ところが、ダイアモンドフレーム、倒立式フロントフォーク、リンク式リアショック、2020年代生まれのピレリ・ディアブロロッソⅣを採用し、車重を187kgに抑えた新型は、どんなに飛ばしても、まだ行ける、まだまだ行ける‼という気持ちが消えない。

もちろん、そういった資質は現代的なパーツや軽さだけで得られるわけではなく、わずかに短くなった軸間距離や微妙な変更を行ったキャスター/トレールを含めて(1410→1405mm、25.5度/90m→25度/98.4mm)、ありとあらゆる要素が関連しているのだろう。

いずれにしても今回の試乗を通して、先代と同様の美点と先代以上の運動性能を実感した僕の中では、事前に抱いた疑念はきれいさっぱり吹き飛ぶことになったのである。

並列4気筒の魅力が味わいやすい

新型に限った話ではないけれど、CB400スーパーフォアには昔からエントリーモデルという使命が課せられていて、ホンダはこのモデルを経て、並列4気筒ネイキッドならCB650RやCB1000F、CB1000ホーネットなどにステップアップして欲しいと考えていると思う。

とはいえ、大型自動二輪免許を取得して約30年が経過した今の自分が、ホンダの並列4気筒ネイキッドのいずれかを購入するなら、CB400スーパーフォアEクラッチである。

その背景には加齢と共に気力と体力が衰えてきた……という残念な事情があるのだが、それ以前の話として、ゴー&ストップが多くて速度レンジが低い日本で、最も並列4気筒ならではの楽しさが味わいやすいホンダ車は、このモデルだと僕は感じているのだ。

新世代のスーパーフォアの可能性を探るべく、開発陣が製作したレース仕様。9月19/20日にHSR九州で開催された“2026 鉄馬 with TSK 決戦の日”のアイアンNK4クラスに章典外として参戦し、予選1位を獲得。セミファイナルとファイナルでも、トップでチェッカーを受けた。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

ハンドルは25mワイド(745→770mm)、着座位置も25mm高くなっているが(755→780mm。ただしシート下の左右が絞り込まれているため、足着き性は先代と同等)、乗車姿勢は先代とよく似ている。リラックスする上半身に対して、下半身がちょっとタイトなことに、普段の僕なら“シートをもっと高くするべき”と異論を唱えるのだが、スーパーフォアらしさをという見方をするなら、現状がひとつの正解だと思う。なお先代と比較すると、ステップバーは10mm低くなっている。

ディティール解説

ヘッドライトとメーターが現代的なデザインになっても、ダブルホーンと絶妙な位置に配置されたウインカーの効果で、フロントマスクはちゃんとスーパーフォア。
5インチTFTディスプレイは、近年のホンダの定番品。スイッチボックスからの操作性と視認性は良好だが、個人的には先代の構成を踏襲しながら最新技術を投入した、丸型2連式TFTをやって欲しかったような……。
スイッチボックスも近年のホンダの定番品で、左にはメーター内の情報を操作する十字ボタンやライディングモードの切り替え用レバーが備わる。撮影車が装着するグリップヒーターとETCユニットは純正アクセサリー。
シート下に収納スペースが存在した先代とは異なり、新型のシート下は電装系部品でギッチリ。ただし、ETCの車載器は後部に設置できる。
現代的なアレンジを施しつつも、シャープなラインを描くテールカウルと丸型2灯式のテールランプは先代の意匠を継承。もっとも先代とは異なり、グラブバーは装備しない。
先代の最高出力・最大トルクが56ps/10000rpm・4kgf-m/9500rpmだったのに対して、新型はやや高回転型の58ps/11500rpm・3.9kgf-m/9750rpm。なお先代と新型のボア×ストロークは、まったく同じ55×42mm。
Eクラッチのアクチュエーターはオルタネーター後部で、既存のこの機構を採用した車両のような後付け感は希薄。なおCB400スーパーフォアのEクラッチは、完全に解除してマニュアルモードに変更することが可能だが、その場合はクイックシフターが作動しなくなる。
フロントフォークはφ41mm倒立式、リアサスペンションはリンク式モノショックで、調整機構はリアのプリロードのみ。フロントブレーキはφ296mmディスク+ラジアルマウント式対向4ピストンキャリパー。
アルミキャスト製のスイングアームはテーパーデザイン。リアブレーキはφ240mmディスク+片押し式1ピストンキャリパー。純正指定タイヤは、超ハイグリップ系ではないけれど、スポーツ志向が強めのピレリ・ディアブロロッソⅣ。

主要諸元

型式:8BL-NC70 
全長×全幅×全高:2110mm×770mm×1085mm 
軸間距離:1405mm 
最低地上高:135mm 
シート高:780mm 
装備重量:187kg 
キャスター/トレール:25°/98.4mm 
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒 
弁形式:DOHC4バルブ 
総排気量:399cc 
ボア×ストローク:55×42mm 
圧縮比:12.3
最高出力:43kW〈58PS〉/11500rpm 
最大トルク:38N・m〈3.9 kg-f・m〉/9750rpm 
燃料供給装置: フューエルインジェクション 
始動方式:セルフスターター 
点火方式:フルトランジスタ 
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング 
ギアレシオ
 1速:3.286
 2速:2.105
 3速:1.600
 4速:1.300
 5速:1.150
 6速:1.043
1・2次減速比:2.273・3.067
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:160/60ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:15ℓ
乗車定員:2名
燃料消費率WMTCモード値:23.1km/L(1名乗車時)