ヤマハ・アエロックス……481,800円

ヤマハNMAX155……459,800円

住み分けはどうするんだろう?
ここ10年くらいのヤマハは日本市場において、フラットフロアのマジェスティS・Xフォースと、センタートンネル構造のNMAX155という、2系統の155ccスクーターを販売してきた。
そして2026年8月からはセンタートンネル構造を採用するアエロックスを導入し、一方でXフォースは2026年末に販売が終了すると言う。

その事実を知ったとき、センタートンネル構造の155ccスクーターを増やして、住み分けはどうするんだろう?と僕は思った。
もっとも、ヤマハは2026年4月からフラットフロアのファツィオを日本市場に投入しているのだが、エンジンが155cc空冷単気筒で、ファッションスクーターとして開発されたファツィオは、水冷エンジンを搭載するスポーティなマジェスティS・Xフォースの後継車にはならないだろう。

そしてアエロックスのコンセプトは“スーパースポーツバイクに最も近いスクーター”なので、NMAX155とは狙いが異なるのだけれど、市場でライバルとなるホンダPCX160と比べれば、NMAX155だって十分にスポーティなのである。

ところがアエロックスとNMAX155は、見事なまでの住み分けを行っていたのだ。今現在の日本では、この2台を天秤にかけて迷っている人がいるはずだが、今回の試乗のように2台を同条件で比較できる場面があったら、どちらを購入するかで悩むことはないだろう。
驚異の運動性能を誇るアエロックス

もっとも、試乗前日に広報資料やパーツリストを調べた僕は、ルックスは別物でも、アエロックスとNMAX155はよく似ていると思った。
フレームはいずれもアンダーボーンタイプで、水冷単気筒のブルーコアエンジンの数値はまったく同じだし、2種のライディングモードが存在し(穏やかなTとシャープなS)、3段階の疑似的なシフトダウンが可能なYECVTの基本構成も同様。

そしてディメンションに注目すると、車格はアエロックスのほうが大柄なようだが、劇的な差を感じるほどではない。
だから当初の僕は、2台の差異のキモはタイヤサイズだろうと考えていた(アエロックスは前後14インチで、NMAX155は前後13インチ)。でも実際のアエロックスとNMAX155は、何もかもが異なっていたのだ。

まずは撮影を兼ねて走った秋ヶ瀬サーキットでの印象を記すと、それはもう、アエロックスの圧勝だった。
前述したように、2台のエンジンに関する数値はまったく同じだが、YECVTを含めた駆動系の設定は別物で、スロットルレスポンスと加速感はアエロックスのほうが明らかに良好にして俊敏。その特性を把握してからNMAX155に乗り換えると、Sモードでシフトダウンを駆使しても、そこはかとない物足りなさを感じてしまう。

そしてそういった印象は車体、と言うか、ハンドリングも同様だった。前後14インチタイヤだけではなく、運動性重視の設定が行われた前後ショックやディメンションなどの効果で、アエロックスの運動性能やバンク角の深さは、NMAX155を完全に上回っていたのだ。

ただし単体で乗っているぶんには、NMAX155もなかなかスポーティなのである。でも旋回性や加速感を筆頭とするライディングフィールの違いは歴然としていて、その差が僕にはMT-09とYZF-R9的と思えた。
快適性や利便性ではNMAXに軍配が上がる

というわけで、アエロックスの運動性に驚きを感じた僕だが、続いて走った市街地ではNMAX155の株が急上昇。
着座位置が低く、ハンドルが高くて近く、ライディングポジションの自由度が高いNMAX155には、思わずホッとしてしまうような安心感があるし、前後13インチタイヤや短めの軸間距離のおかげで、チマチマした住宅街や渋滞路ではアエロックスより小回りが利く。

そして日常域での扱いやすさを考えると、アエロックスほどシャープではなく、かと言ってルーズではないスロットルレスポンスも、NMAX155の美点と思えるのだ。
もっとも、アエロックスで走る市街地だって十分に快適なのだが、スーパースポーツ的な特性を考えると、乗車中は適度な緊張を強いられている……気がしないでもない。その感触をどう捉えるかは人それぞれだが、天候や乗り手の体調などに関わらず、日常の足として気軽に使えるという点では、NMAX155のほうが優位だろう。

さらに経済性や利便性でも、NMAX155はアエロックスを上回る資質を備えていた。まず多くのライダーが気になる航続可能距離(WMTCモードの燃費とガソリンタンク容量から計算)は、アエロックスの41.1×5.5=226.05kmに対して、NAMX155は+100km以上の46.4×7.1=329.44km。

そして収納に注目すると、シート下のトランクスペースはアエロックスのほうがわずかに大きいものの、NMAX155はフロントポケットが左右に備わるし、純正アクセサリーとしてリアキャリアとトップケースが存在する(アエロックスのフロントポケットは左のみで、積載系の純正アクセサリーはナシ)。
そういった事実から考えると、NMAX155はアエロックスより幅広い楽しみ方ができるんじゃないだろうか。
ヤマハの懐の広さを改めて実感

試乗を終えた後、僕が改めて実感したのは、スクーターに関するヤマハの懐の広さだった。
と言うのも、まず現在の日本で入手できる155ccモデルに限っても、アエロックス、NAMX155、ファツィオ、Xフォースのキャラクターは各車各様だし、海外に目を移せば、同社はシグナスXRやオウガ、レキシィLXなどを販売中で、それらの特性も各車各様の気配が濃厚なのだ。

もちろん近年の日本のスクーターの販売台数を考えれば、それらのすべてを国内に導入するのは無理だろう。
とはいえ今回の2台と少し前に体験したファツィオのキャラクターがあまりに異なっていたからだろうか、今の僕は機会があったら、ヤマハ155ccスクーター全車イッキ乗りをやってみたい……と感じているのだった。
ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

スポーツライディングの楽しさを追及したアエロックスと比較すると、ハンドルグリップが高くて近く、着座位置が低く、フットスペースが広いNMAXのライディングポジションは、コンフォートな雰囲気。もちろん、これはどっちがいい悪いという話ではないのだが、人によってはアエロックスに敷居の高さを感じるのかもしれない。

ディティール解説


メーターの設置位置は、アエロックス:ハンドル上部、NMAX:フロントカウル内(フレームマウント)。スイッチボックスは2台に共通で、左にライディングモードの切り替えとシフトダウン用のボタン、右にアイドリングストップ用のオン/オフレバーが備わる。


アエロックスの計器はオーソドックスなデザインの4.2インチTFTディスプレイで(ただし、スクーターでは珍しいラップタイムの表示が可能)、NMAX155は4.2インチTFTと3.2インチLCDを組みわせたデュアルディイスプレイ。スマホと連携して表示するナビは、アエロックス:ターンバイターン式、NMAX155:全画面マップ。


シートの座り心地はいずれも良好。加速中のホールド感を意識したのか、アエロックスは前後の段差が大きい。なおアエロックスは独立式のグラブバーを装備していないが、テールカウル左右下部にはアシストグリップが備わっている。


トランクスペース容量は、アエロックス:24.5ℓ、NMAX:23ℓ。いずれのモデルもアライのラパイドNEOはギリギリで収まったけれど、上部に大きなエアロパーツが備わるヘルメットは難しそう。


φ230mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーの前後ブレーキは2台に共通。ただし、アエロックスのABSが1チャンネル式であるのに対して、NMAXは2チャンネル式。ちなみにABS作動時のフィーリングは、アエロックスのほうがナチュラルだった。


前後ショックの設定は、アエロックス:運動性重視、NMAX:快適性重視。もっとも、アエロックスの乗り心地は決して悪くなかったし、NMAXでスポーツライディングが楽しめないわけではない。リアショックにプリロードアジャスターが備わるのはNMAXのみで、リザーバータンク付きのアエロックスは調整不可。