「YZF-R」のDNAを受け継ぐ新しいスポーツスクーター

ヤマハ発動機は、155ccエンジンを搭載する軽二輪クラスの新型スポーツスクーター「AEROX(アエロックス)ABS」を、2026年8月31日に発売する。メーカー希望小売価格は48万1800円(税込)。「スーパースポーツバイクに最も近いスクーター」を掲げ、日常での扱いやすさと、ライダーが積極的に操る楽しさの両立を目指したモデルだ。

背景にあるのは、国内外で需要が堅調に推移する126~200ccカテゴリーへの注目だ。軽快な車体と十分な動力性能を備え、街乗りからツーリングまで幅広く使える。一方、スーパースポーツに憧れながらも、クラッチや変速操作への不安から購入をためらう人も少なくない。AEROX ABSは、そうしたライダーにオートマチック車という新たな選択肢を提示する。

デザインコンセプトは「Ultimate Super Sport Scooter」。最新の「YZF-R」シリーズの思想を取り入れ、一般的なスクーターとは一線を画す姿に仕上げた。高い位置に設けられたセンタートンネルが重心感のある俊敏なシルエットを生み、猛禽類の目を思わせるLEDポジションランプや、ウイングレットをイメージした造形が精悍なフロントマスクを形成する。縦型LEDテールランプや立体的なTFTメーターも、レーシーな雰囲気を強調している。

電子制御CVT「YECVT」が生む操る楽しさ

最大の特徴は、電子制御CVT「YECVT」の採用だ。搭載する水冷4ストローク・SOHC・4バルブ・155cc「BLUE CORE」エンジンは、走りの楽しさと燃費・環境性能の両立を追求したもの。VVA(可変バルブ機構)が走行状況に応じて吸気バルブの作動特性を切り替え、低速域から中高速域まで力強く滑らかな加速を実現する。

YECVTは、ライダーの操作や走行状況に合わせてCVTの減速比を電子制御するシステムである。一般的なスクーターの利便性を保ちながら、マニュアル車のようなメリハリのあるレスポンスを楽しめる。市街地での滑らかな走行と燃費に配慮した「Tモード」、ワインディングロードなどで鋭い加速を引き出す「Sモード」の2種類を用意。左ハンドルのスイッチで切り替えられ、選択中のモードはディスプレイに表示される。

さらに、任意のタイミングで減速比を変える「シフトダウン」機能も備える。前走車を追い越す際の加速、長い下り坂でのエンジンブレーキ、コーナー進入から立ち上がりまでの速度調整など、さまざまな場面で活用できる。SHIFTボタンまたはスロットルの急開操作により、走行状態に応じて最大3段階のシフトダウンが可能だ。単なる移動手段ではなく、操作そのものを楽しめるスクーターに仕上がっている。

高剛性フレームと充実した足回り

スポーティなエンジン特性を支えるため、車体にも本格的な装備が投入された。メインパイプやダウンチューブ、センタートンネル部分の補強材を最適に配置した高剛性フレームにより、軽快な操縦性と中高速域での安定感を両立。エンジンユニットをリンク式で懸架することで、乗り心地とシート下収納スペースの確保にも配慮している。

足回りには、インナーチューブ径30mmのフロントフォークと、サブタンク付きリアサスペンションを採用。タイヤは前110/80-14、後140/70-14のワイドサイズで、機敏な操舵感やグリップ感、高速域での安心感を支える。前後には直径230mmのディスクブレーキを備え、操作に対する優れた応答性を追求した。

ライディングポジションもスポーツ走行を意識している。やや高めのハンドル位置に加え、足首で車体を保持しやすいカバー形状や、引き足で乗りやすいフートスペースを採用。スクーターでありながら、車体との一体感を得やすい設計となっている。また、トラクションコントロールシステムが滑らかな発進と走行を支援するほか、静かな始動を可能にするスマートモータージェネレーターや、停車時のアイドリングを自動停止する機能も搭載する。

通勤からツーリングまで支える実用装備

AEROX ABSは走行性能だけでなく、毎日の使いやすさも重視している。4.2インチTFTディスプレイは3種類の表示モードから選択でき、「YZF-R」シリーズの世界観を反映したトラックモードではラップタイムの記録も可能だ。

スマートフォンに専用アプリ「Y-Connect」を導入して車体と接続すれば、ターン・バイ・ターン方式のナビゲーション、着信やメッセージの通知、天気予報、音楽操作、車両・走行情報などをメーターに表示できる。アプリ側では走行履歴やメンテナンス情報も確認可能で、日常の移動からロングツーリングまで幅広く役立つ。

このほか、スマートキー、シートを開けずに利用できる給油口、約24.5リットルのシート下トランク、USB Type-C充電ソケット付きフロントボックスなどを装備。車体色は、バーミリオンカラーのホイールが印象的な「マットグリーニッシュグレー」と、イエローの差し色を施した「シルバー」の2色が用意される。

スポーティな外観、電子制御による刺激的な走り、そしてスクーターならではの利便性。AEROX ABSは、通勤の手軽さだけでは物足りない人や、変速操作への不安を抑えながらスポーツライディングを楽しみたい人に向けた、新しいオートマチック・スポーツの提案といえそうだ。

主要諸元

全長:1,980mm
全幅:765mm
全高:1,170mm
シート高:790mm
車両重量:132kg
乗車定員:2名
エンジン:水冷4ストローク・SOHC・4バルブ・単気筒
総排気量:155cm³
燃料供給方式:フューエルインジェクション
最高出力:11.0kW(15PS)/8,000r/min
最大トルク:14N・m(1.4kgf・m)/6,500r/min
変速機構:電子制御CVT「YECVT」
走行モード:Tモード/Sモード
燃料タンク容量:5.5L
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
タイヤサイズ:前110/80-14、後140/70-14
ブレーキ:前後230mm径ディスクブレーキ(ABS装備)
フロントサスペンション:テレスコピック式、インナーチューブ径30mm
リアサスペンション:サブタンク付きユニット
シート下収納容量:約24.5L
メーター:4.2インチTFTディスプレイ
車体色:マットグリーニッシュグレー/シルバー