ホンダCB400RフォアEクラッチ……1,199,000円

レーサーレプリカ世代の手厳しい意見
ニューモデルの試乗記で冒頭からこんなことを言うのは何だけれど、ホンダが2026年9月から発売を開始したEクラッチを装備する兄弟車、CBR400Rフォアと新世代のCB400スーパーフォアに関して、少し前に友人Aと話をしていたら、なかなか手厳しい意見が出てきた。

「先代の資質を継承するっていう意味で、スーパーフォアはすごくいいと思う。でもフルカウル車のほうは、カワサキのZX-4R・RRっていうライバルが存在するんだから、もっとレーシーなルックスで、最高出力は80ps以上で、車名はCBR400RRにするべきじゃない?」

ちなみに、Aはレーサーレプリカ全盛期の1980年代にバイクに目覚めたライダーで、かつてはF3キットを投入した1989年型CBR400RRを愛用していた。
そしてそういうライダーの視点だと、CBR400Rフォアのスポーツツアラー然としたルックスと58ps/11500rpmの最高出力(ラム圧過給時のZX-4R・RRは80ps/14500rpm)に、不満を感じるのはわからないでもない。

とはいえ、9月に開催された試乗会でCBR400Rフォアを体験した僕は、ぜひともAに最寄りの販売店に出かけて、このバイクを見て、乗って欲しいと思った。外観がレーシーではなくても、最高出力が控えめな設定でも、CBR400Rフォアは相当に魅力的なバイクなのだから。
クールで都会的な雰囲気

まずはルックスの話をすると、このバイクがレーシーではない外装を採用した理由は、同時開発したCBR500Rフォアの主要市場となる、中国の若者の趣向の多様化を意識してのことらしい。
とはいえ、ホンダがメインターゲットに設定していない日本のオッサンである僕の視点で見ても、このデザインは大いにアリだと感じた。

前述したように試乗前の僕はCBR400Rフォアに対して、スポーツツアラーというイメージを抱いていたのだけれど、実際のCBR400Rフォアはクールにして都会的で、スポーツツアラーという言葉から連想しがちな重厚さは微塵もない。
誤解を恐れずに言うなら、他のCBRシリーズ以上の高級感を備えているようにも思う。

ただし前述したように、CBR400Rフォアは新世代のスーパーフォアの兄弟車で、外装以外の2台の相違点はエアクリーナーボックスやマフラー、インジェクションマップ、ハンドル、シート、シートレールくらい(驚くことに、足まわりはセッティングも含めてまったく同じ)。
となれば、乗り味も似たようなものだろうと思いきや、意外なことにCBR400Rフォアは、スーパーフォアとは似て非なるキャラクターを構築していたのだ。
ロングランが快適にこなせそう

もっとも、走り始めて5分で勝手知ったる愛車のように扱える驚異的なフレンドリーさや、あらゆる領域で従順な反応を示してくれるパワーユニット、並列4気筒ならではの高回転域のシャープで軽快な吹け上がりが気軽に堪能できることなどは、少し前に当サイトに試乗記をアップした新世代のスーパーフォアと同様である。

では何が違うのかと言うと、僕が最初にオッと思ったのはライディングポジション。
シート高は新世代のスーパーフォアと同じ780mmなのに、セパレートタイプのハンドルや前後長が短いガソリンタンク、軽量なシートレールなどの効果で前輪荷重が上がっているからか、CBR400Rフォアは程よい塩梅で着座位置が高く、シートとステップの距離が広がっているように感じるのだ。

そして市街地を走り始めると、CBR400Rフォアのハンドリングとエンジンフィーリングは意外にしっとりしていて、その特性を認識すると、スーパーフォアはちょっとヤンチャだったような気がしてくる。
そういったキャラクターとフェアリングの防風性能を併せて考えると、生粋のスポーツツアラーではなくても、このモデルは兄弟車よりロングランを快適にこなせるだろう。
兄弟車を凌駕する資質

ただし、市街地を離れてさまざまな場面を走った僕は、CBR400Rフォアが真価を発揮するのはワインディングロードだと思った。
と言うのも、このモデルはスーパーフォアと比較すると、エンジンの高回転域の伸びが明らかに鋭く、コーナー進入時にフロントまわりから伝わってくる接地感が格段に濃厚なので、スポーツライディングがムチャクチャ楽しいのだ。

その感触の理由は、吸排気系とインジェクションマップ、そして前輪荷重だと僕は思ったのだけれど、ちょっと解せない気がしないでもない。
何と言っても、CBR400Rフォアの最高出力と最大トルクはスーパーフォアと同じだし、フロントまわりの接地感に関しては、前輪荷重だけでそこまで変わるのか?というレベルなのだから。

そこで、試乗後に開発陣に話を聞いてみると、カタログデータの最高出力と最大トルクはパワーユニット単体での計測値で、吸気系の抵抗が少なくて高回転域でラム圧がかかるCBR400Rフォアのエンジンは、車載状態ではスーパーフォアよりパワーが出ているとのこと。
そして濃厚な接地感には、走行風を整流するフェアリングの空力性能もかなりの影響を及ぼしているそうだ。

なお峠道を走っている最中、脳内でカワサキZX-4R・RRとの比較を行った僕は、公道ならこっちのほうが速いかも……と思った。
と言うのも、速く走るためには頑張って高回転域をキープしなくてはならないZX-4R・RRとは異なり、CBR400Rフォアは特に意識をしなくても、エンジンのオイシイ部分を普通に使えるのである。

もちろん、国際規格のサーキットで競争するとなったら、ZX-4R・RRのほうが確実に有利だろう。でも一寸先は闇の公道では、最高出力の差を感じる場面はあまり多くなく、その一方でCBR400Rフォアの驚異的な扱いやすさをありがたく感じる場面が少なくないように思う。
チョイ乗りでは美点がわかりづらい?

そんなわけでCBR400Rフォアにかなりの好感を抱いた僕だが、レーサーレプリカ全盛期にバイクに目覚めた友人Aが、販売店周辺だけの試乗で僕と同様の気持ちになるのかと言うと、それは微妙かもしれない。
逆に言うならこのバイクの美点は、ある程度の時間をかけて、さまざまな場面を走らないとわかりづらいような?

だからAのようなライダーを惹きつけるモデルとして、中国市場で販売しているCBR500Rフォア(最高出力は71.8ps/1100rpm)も日本に導入するべきではないかと僕は思ったものの……。
そうすると日本人のために400cc仕様を作ってくれた開発陣の心意気を否定するみたいだし、前述したエンジンのオイシイ部分を普通に使える感は400ccならではという気がするし、そもそも日本市場で500ccに注目するライダーは多数派とは言い難いので、なかなか難しいところである。

ライディングポジション(身長182cm・体重74kg)

ディティール解説








主要諸元
型式:8BL-NC70
全長×全幅×全高:2055mm×760mm×1125mm
軸間距離:1405mm
最低地上高:135mm
シート高:780mm
装備重量:187kg
キャスター/トレール:25°/98.4mm
エンジン形式:水冷4ストローク並列4気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:399cc
ボア×ストローク:55×42mm
圧縮比:12.3
最高出力:43kW〈58PS〉/11500rpm
最大トルク:38N・m〈3.9 kg-f・m〉/9750rpm
燃料供給装置: フューエルインジェクション
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギアレシオ
1速:3.286
2速:2.105
3速:1.600
4速:1.300
5速:1.150
6速:1.043
1・2次減速比:2.273・3.067
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ41mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:120/70ZR17
タイヤサイズ後:160/60ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:15ℓ
乗車定員:2名
燃料消費率WMTCモード値:23.1km/L(1名乗車時)


