生産期間はたったの2年間、台数はわずか4400台
30年以上経った現在も色褪せない魅力を放つ!
今でこそ『ABCトリオ』という呼び方が一般的になったバブル期登場の本格的な軽スポーツ。その『A』が、当時販売ブランドの5チャンネル化を展開していたマツダにより、オートザム店で扱われたAZ-1だ。
外板が応力を受けない特殊かつ専用設計のスケルトンモノコックボディを持ち、そのリヤミッドにはスズキから供給されたアルトワークス譲りのF6Aターボを横置きで搭載。そんなパッケージングに加え、低さを極めたフロントノーズやガルウイングドアの採用などで畳みかけ、“世界最小のスーパーカー”と呼ばれるに相応しい内容と見た目を誇った。

取材車両は、かつて前オーナーがJAF四国ジムカーナ選手権を戦っていた一台。現オーナーの西村さんが購入する際、元々ブーストアップ仕様だったエンジンは純正パーツでオーバーホールしつつ、ノーマルに戻された。西村さんいわく、「今は休みの日に横波スカイラインを朝駆けするくらい。なので購入して3年経ちますけど、実は600kmくらいしか走っていないんですよ」とのこと。

エンジンこそ扱い易さと耐久性を考慮してノーマルとされているけど、足回りやブレーキを始め、シートやステアリングホイール、シフトノブはジムカーナを戦っていた時の仕様のまま。走りを最優先したメイキングは今でも踏襲されていて、峠での楽しさを倍増させる。

唯一、手が加えられたのは、スペックDにてアルト純正を流用した電動パワステ化だ。しかも、走るシチュエーションによってステアリング操舵力を任意に選べるよう、アシスト完全キャンセルを含む3つのモードをスイッチで切り替えられるようになっているのがポイント。車庫入れなどで操舵力が求められる時はアシストオン、横浪を走る時は完全オフなどと使い分けている。

ステアリングホイールはモモレース、シフトノブは球状のジュラコン製で操作性を向上。メーターは9000rpmからレッドゾーンが始まる1万1000rpmフルスケールのタコメーターを中心に、左側に140km/hフルスケールスピードメーター、右側に水温計と燃料計が並ぶ。ちなみに、センターコンソールのエアコン操作パネルはDA系フォードフェスティバと共通。縦配置に合わせて数字やイラストは変更されている。

運転席はブリッドのフルバケ、ジーグⅢローマックスに交換。スポーツ走行時のホールド性を高める。
車高調はジムカーナ向きのセッティングが施されたオーリンズ製。ブレーキはウィンマックス製パッドで強化される。また、4穴ホイールの選択肢を増やすため、アルトワークス純正ハブを流用してPCDを114.3から100に変更している点にも注目だ。

ライバルのビートとカプチーノは1991年に発売され、ビートは生産終了の1996年までに約3万4000台、カプチーノは1998年までに約2万7000台が販売された。それに対してAZ-1は一歩遅れて1992年に登場。極めて高い趣味性に加え、すでにバブル景気の陰りが見え始めていた時代的背景もあって、生産期間はたった2年、生産台数もわずか4409台に留まった。
確かに販売面では大失敗だった。でも、だからと言ってAZ-1が失敗作だったとは思えない。なぜなら、今でも熱烈なオーナーの心を掴んで離さないからだ。むしろ、たった4400台でも、こういうクルマが日本のメーカーから誕生したこと。それを誇りに思うばかりだ。
⚫︎取材協力:スペックD 高知県高知市一宮西町3-2-25 TEL:088-826-5001
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