リヤスライドドアより後方を専用設計

待望の3列7人乗りであるルノー「グランカングー」が話題だ。ルノー・ジャポンによると、ステランティス3兄弟などのフランス製MPV(輸入車CセグメントMPV)は、7人乗りが半数を超えているという。ダブルバックドアの開発によりライバルよりは遅れたものの、待ち焦がれたカングー・ファンも多いはずだ。

特別仕様車という枠組みで追加されたルノー「グランカングー」

グランカングーのボディサイズは、全長4910×全幅1860×全高1810mm。ホイールベースは3100mmに達する。全幅と全高は、2列5人乗りのカングーと同値だ。全長は、2列5人乗り仕様よりも420mmも長く、ホイールベースは385mmも長くなっている。延ばされた全長のうち、約91%がホイールベースの延長となっていて、ロングホイールベース化されている。

ルノー「グランカングー」のリヤビュー

スライドドアより後ろ側が新設計されたグランカングーは、伸びやかなサイドビューが印象的だ。同時に見比べると、5ドア版のみのときは感じられなかったが、5ドア版には若干、寸詰まり感を抱くほど。フロントドアは同じだが、リヤスライドドアは650mmから830mmに延びている。

大開口部による乗降性の向上は「○」の評価

まず「○」は、開口幅が180mm広がったリヤスライドドアの大開口部だ。乗り降りがしやすくなっているだけでなく、2列目、3列目のチャイルドシートに座る子どもの乗せ降ろしもより容易にできるはず。大型化されたスライドドアだが、軽い操作で開閉できるように設計されている。パワースライドドアはグランカングーも備わらないが、これくらいの操作性は織り込み済みで買う方が多いはずだ。

開口幅が180mm広がったリヤスライドドア

なお、2列目の中央席をのぞき、2列目左右席、3列目の2席、助手席の計5席に「ISOFIX」対応のチャイルドシートを装着できるという。2列目中央席は、実測では横幅が約410mm狭かった。そのため、同規格対応のチャイルドシートが装着できないのかもしれない。現実には、ほとんどいないかもしれないが、チャイルドシートが必要な子どもが5人が同時に乗車できる。

ダブルフォールディングが可能

2列目はダブルフォールディングが可能だが、スプリングは内蔵されていないため、2つのアクション(操作)が必要で、少し手間がかかる。スプリングのアシストで一気にダブルフォールディングさせないのは、シートがしっかりしていて重いためで、安全性に配慮した面もあるという。

2列目シート。中央席は少し幅が狭くなっている

3列目への乗降スペース(開口部)も十分に確保されているが、後方にいくほどフロアが高くなるシアターレイアウトを採用しているため、頭上まわりにはそれなりに注意する必要がある。

気になる3列目席の座り心地は?

シアターレイアウトは、3列目でも前方の見晴らし性に優れる一方で、フロアから座面前端までのヒール段差は明らかに低めで、膝を抱えるような着座姿勢になる。

グランカングーの3列目シート。シートサイズの大きさが美点

ライバルのシトロエン「ベルランゴロング」、プジョー「リフターロング」、フィアット「ドブロマキシ」ほど座面は低くはない印象ではあるものの、トヨタ「ノア」、「ヴォクシー」などの国産のミドルサイズミニバンと比べると、より“体育座り”のような姿勢になる。

一方で、3列目のシートサイズ(座面前後長、背もたれ天地高、シートの厚み)は、ライバルのステランティス3兄弟よりも大きい。ヒール段差をのぞき3列目の座り心地も良好なのも「○」だ。

長短併せ持つ2列目と3列目の脱着式シート

なお、2列目と3列目は、すべて脱着可能だが、1脚あたり約23kgと重い。なお、メルセデス・ベンツVクラスは、2列目の標準シートで約25〜30kg、3列目のベンチシートは、大人3人がかりでようやく脱着したことがあるからVクラスよりは軽いが、毎回脱着するのは非現実的だろう。

2列目、3列目は脱着可能。なお、写真のシートの台座は展示イベント向けの特注品

とはいえ、3列目を外しっぱなしにして、車検の時に装着するという使い方もできる。なお、フィアット・ドブロマキシは、限定車で2列5人乗りを設定したことがあるが、グランカングーの2列5人乗りの予定はないという。

さらに、2列目も3列目も背もたれを前倒しして、長尺物を積載するなどの使い方もできる。同時に、先述したようにダブルフォールディングも可能だが、この常態ではシートがロックされないため、安全上、走行時には使えないモードになる。

3列目を装着した通常時でも500Lの大容量を確保する

あえて、「△」を探すと、この2列目と3列目の脱着式と走行時には使えないダブルフォールディングのシートアレンジだろうか。取り外したシートを車庫に置いておけるなどの環境があればいいが、自宅から離れた駐車場やマンションなどでは、先述したように置き場に困るかもしれない。

2列目、3列目を取り外さなくても大容量を確保

しかし、3列目を装着した状態でも荷室容量は500Lと大容量を誇り、取り外さなくても背もたれを寝かせれば、隙間や段差は大きく残るが、長尺物などの積載も可能だ。3列目を取り外すと、1340L、2列目と3列目をすべて取り外すと最大で3050Lまで広がる。最初から1列目のみを使うトランスポーターとしても使える。ロードバイクなどの趣味のギアも容易に飲み込む。

積載イメージ

そのほか、グランカングー専用装備として、2列目足元にフロアアンダーボックス、脱着可能で、長さも変えられるロールアップ式トノカバーも用意される。ロールアップ式トノカバーは、軽量で脱着も容易だったのも朗報だ。

「×」は、6.2mの最小回転半径。ここは要チェックポイントだ。

そして、「×」は、4.9m超の全長と3.1mのロングホイールベースにより5人乗り仕様よりも0.6mも広がった最小回転半径6.2m(参考値)になるかもしれない。多人数乗車と居住性、積載性とトレードオフになった小回り性能は、狭い駐車場や道路事情だと厳しいのは確かだろう。

こちらは2列5人乗りのカングー

なお、6.2mの最小回転半径は、4WDの三菱「トライトン」、ジープ「ラングラーアンリミテッド」などと同値になっている。

しかし、冒頭で紹介したように、ダブルバックドアにこだわったグランカングーは、後方が狭くても上開き式よりも開け閉めしやすく、しかも大開口が広がる。取り回し性だけ許容できれば、多人数乗車可能なミニバンとして、車中泊もするような、多彩な趣味に対応する相棒としても頼もしい存在になるはずだ。