スズキDR-Z4S……1,199,000円

ツーリングには向いていない?

ここ最近の僕の中ではオフロード熱が高まっていて、当企画でトレールバイクを取り上げる際は、7万km以上を走って相当なヤレが進んだホンダSL230に代わる、次期愛車候補としていつも接している。
今回の試乗もそういう意識で臨んだのだけれど、トレールバイクにオールラウンドなツアラーとしての資質を欲する僕の趣向には、DR-Z4Sは合っていないような気がした。

もっともオフロードコースや交通量が少ない山道、スロットルがしっかり開けられて、前後サスペンションをしっかり動かせる場面でのDR-Z4Sは、ムチャクチャ楽しいのである。
ただし、混雑した市街地や真っ直ぐ進むことが困難なオフロードの極悪路、周囲の交通状況に合わせて景色を眺めながらマッタリ走行をしたときなどは、微妙な扱いづらさや居心地の悪さを感じたし、ツーリングの後半では予想以上に心身が疲れたのだ。

SDMSを意識して、前後サスペンションを調整
その理由を考えている最中、ふと頭に浮かんだのはスロットルレスポンスが3種から選択できるSDMS:スズキドライブイモードセレタクターだった。この機構に関して、僕はリニアなBを常用し、舗装路の峠道やフラットダートでは鋭いA、ツーリングの帰路では穏やかなCを使い、どのモードにも価値があると感じた。
でも前後サスペンションはAが前提のようで、しかもオフロードコースのジャンプやフープスに加えて、大柄なライダーの2人乗りを考慮している気がしないでもない。

だったら、Bを念頭に置いてサスセッティングを行えば、自分好みの乗り味が作れるのではないだろうか。
そんな思いに至った僕は、まずは当初から硬さを感じていたリアショックのプリロードを緩め、それに合わせて伸圧ダンパーを弱め、その一方で(リアと比べれば)動きすぎの感があったフロントフォークの伸圧ダンパーを強くしてみた。そして数回の微調整を行ったところ……。

リアの硬さが適度に解消され、前後サスペンションがほぼ均等に動く感覚が生まれ(ノーマルの低回転低速域には、リアを支点にしてフロントが扇の天を描く雰囲気があった)、わずかとはいえリアの車高と着座位置が低くなったことで、ノーマル以上の安定&安心感が獲得できたのである。

もっとも、欲を言うならフロントのプリロードも弱くしてみたいし、僕が目指した方向性が万人にとっての正解とは思えないけれど、このサスセッティングを通して、僕はDR-Z4Sの懐の広さを実感したのだ。
トレールバイクの資質を増強

第1回目に記したように、ノーマルのDR-Z4Sに対する僕の印象は、トレールバイクとレーサーの中間的な資質を備えるスーパースポーツである。ではそのキャラクターがサスセッティングでどう変化したかと言うと、レーサー的な資質が薄れ、トレールバイク寄りになった。

そしてその変化を実感するべく、過去に当企画で何度が紹介している古くからの友人、ヤマハ・セロー250を所有するSと共に林道ツーリングに出かけた僕は、自分好みの乗り味に近づいたことを認識。
市街地やまったり走行は多少なりとも楽になったし、歩くようなスピードで走るガレ場やヌタヌタ路面もそれなりに楽しめるし、帰路の心身の疲労は程よい塩梅で軽減できたのである。

なお未舗装路で面白かったのは、これまでに1000kmガチ試乗で取り上げたホンダCRF250LやカワサキKLX230シェルパ、ヤマハWR155R、そして自分のSL230で走ったときと比べると、先導するS+セロー250のペースを遅く感じたこと。
DR-Z4Sの潜在能力を考えればそれは当然のことで、人によってはもっと飛ばせ‼と言いたくなるのかもしれないが、体感的な遅さは心の余裕につながるので、僕にとっては歓迎したくなる要素だった。

また、Sと出かける林道ツーリングは、行き止まりでUターンをすることが多く、そういう場面で軽二輪トレールバイクより重くて大きなDR-Z4は(車重は151kg、軸間距離は1490mm、シート高は890mm。近年の軽二輪トレールバイクで最も大柄なCRF250L<S>は、141kg・1455mm・880m)、苦労を強いられそうな気がしていたのだけれど、嬉しいことにそこまでではなかった。
もちろん、軽二輪トレールバイクほどイージーではないものの、僕にとっては、少し気を遣うかな……というレベルだったのである。
価格に対する見解

ここまでの文章を読んでいただければわかるように、サスセッティングで特性を変更したDR-Z4Sを、僕はかなり気に入り、現在は次期愛車候補に入っている。
もっとも自分の懐事情を考えると、119万9000円という価格はなかなかハードルが高いのだが、だからと言って僕は価格に関する不満を述べるつもりはない。

と言うのも、DR-Z4Sの主要市場はアメリカで、価格設定はアメリカの景気や賃金に左右されるのだ。
ちなみに、DR-Z4Sの前任に当たるDR-Z400Sの北米仕様は、2000年の登場時は5499ドル(当時の為替レート、1ドル=108円で計算すると約60万円)で販売されていたものの、現地の経済成長と歩調を合わせる形で上昇し、2011年型以降は6200ドル、2021年型以降は6899ドル、2024年型は7199ドルだった。
となれば、全面刷新を受けた2025年型以降のDR-Z4Sの8199ドル(1ドル=150円で計算すると約123万円)という価格は、アメリカ人にとっては決して高くはないのだろう。そして為替レートが2000年と同様の1ドル=108円だったら、おそらく、日本でのDR-Z4Sの価格は90円前後だと思う。

ただしアメリカでも、DR-Z4Sと同時期にデビューしたKTM 390エンデューロRの5499ドル(1ドル=150円で計算すると82万4850円。日本仕様は85万9000円)という価格を、歓迎する声は少なくないらしい。
もっとも、390エンデューロRが既存のデューク/RCシリーズからエンジン+フレームの基本設計を転用し、インド工場で生産されるのに対して、DR-Z4Sはほとんどのパーツが専用設計で(兄弟車のDR-Z4SMは存在するが)、生産国は日本である。

そういった事実を考えると、DR-Z4Sの価格に異論を述べるのは野暮ではないだろうか。と言うより、高いと言われそうなことを承知で日本での販売を行ってくれたスズキに、今の僕は感謝の意を述べたい気分なのだ。
※近日中に掲載予定の第3回目では、筆者独自の視点で行う各部の解説に加えて、約1300kmを走っての実測燃費を紹介します。

主要諸元
車名:DR-Z4S
型式:8BL-ER1AH
全長×全幅×全高:2270mm×885mm×1230mm
軸間距離:1490mm
最低地上高:300mm
シート高:890mm
キャスター/トレール:27°30′/109mm
エンジン形式:水冷4ストローク単気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:398cc
内径×行程:90mm×62.6mm
圧縮比:11.1
最高出力:28kW(38ps)/8000rpm
最大トルク:37N・m(3.8kgf・m)/6500rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ
潤滑方式:圧送式ドライサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式5段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギアレシオ
1速:2.285
2速:1.733
3速:1.375
4速:1.090
5速:0.863
1・2次減速比:2.960・2.866
フレーム形式:セミダブルクレードル
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ46mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前:80/90-21
タイヤサイズ後:120/80-18
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:151kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:8.7L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:34.9km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3-1:27.7km/L(1名乗車時)
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