自身のクセを出さずに前車を完全コピーする気概

「見て習え」は日本で古くから技術を習得する手法として広くいわれてきたことですが、ドラテク向上においても使える技です。

どんなドラテクレベルであろうとも、他の人の運転を間近で見れば、自身と比較して「よし悪し」がわかる点が必ずあるでしょう。

操作を間近で見れる同乗走行が理想ですが、そのような機会はなかなか難しいのも事実。しかし、コースで上手い人の後を追うのは、タイミングさえ合わせればいつでも可能です。

ピットアウト時に速い人の後を追い掛けてもよし。クーリング走行しながら速い人を待ち伏せしてもよし(実際のレース参戦となると、ライバルが嫌がって後追いさせてくれない、なんてこともありますが……)。

また、ドライビングレッスンでは、お手本となるペースカーによる先導走行もありますね。こういったチャンスを活かして、効率よくドラテクを向上させるにはどうしたらよいか、そのコツを紹介しましょう。

まず、いちばん大切なのは前車の運転を「完全にコピー&ペーストを目指す」すなわち「完コピ」することです。せっかくお手本を間近で見られるのですから、それを真似することが上達の近道。

一度ご自身のクセとなっている走り方を忘れて、ブレーキの踏み方・リリース、ハンドルの切り方・戻し方、ライン取り、アクセルの踏み方… …など「完コピ」を目指しましょう。

自覚があってコピーしない またはできないパターン

せっかくの追い掛け走行に関わらず、いつもの自身の走りをしてしまって「完コピ」をしない。これは何も全開走行時に限りません。

慣熟時の先導走行でゆっくり走っていても、つい自身のいつものラインを走行してしまうクラブマンを多く見かけます。

この症状には、①自覚があって「完コピ」をやらないパターンと、②やろうとしてもできないパターンの2種類があります。その改善方法とは?

対処法①何がなんでもラインとクルマの向きをトレース

この意識が重要です。極端にいえば、ほかの意識は捨てて、トレースすることだけを目的に走れば、案外簡単にトレースできるはずです。

トレースすると「いつもと異なる走り方」になるので、気持ち悪さや走りにくさを感じることもあるでしょう。その違和感が第一ステップです。

違和感をなくそうとして、ある程度トレースしながらも、基本は自身の走り方をしてしまうと、上達の妨げになります。

対処法② 操作と反応ラグを見越して先導車の目線で走る

クルマはハンドルを切ってから、実際に曲がり始めるまでにはタイムラグがあります。先導車が曲がり始めたのを認識してからハンドルを切ったのでは、切り遅れになります。

先導車の挙動をよく観察して、ロールが始まる瞬間、すなわちハンドルを切った瞬間を見計らって切り始めると、ちょうどよいタイミングかもしれません。

同様にアクセル・ブレーキも同じで、操作と挙動にはタイムラグがあることを意識し、早め早めのアクションをするとよいでしょう。

追い掛け走行は何もコースだけとは限らず、街乗りでも同様のことがいえます。サーキットの行き帰りも上手い人の後追いをすると、自身の運転との違いが見つかるかもしれません。

またもうひとつ大切なことして「先を見る」意識も挙げられます。理想としては、先導車のドライバーになったつもりで目線を先に持っていくといいでしょう。「先と先導車を交互に見る」くらいのつもりで走るとよいかもしれません。

走行車両の目線になってコース外でも見て学ぶ

「見て習え」は何も追い掛け走行だけにとどまりません。コース外のスタンドからも走りを観察できます。大切なのは「ライン取り」と「クルマの向き」、「ピッチング・ロールなどの姿勢の変化」です。

ライン取りはスポーツ走行のすべての基本になります。とくにS字などの複合コーナーでは、走り方がドライバーや状況によって異なります。雨の日の専用ライン(いわゆる雨ライン)も参考になるでしょう。

「ピッチングの変化」でブレーキの踏み始めポイントや、ブレーキを一挙に踏み始めているのか、ジワっと踏み始めたのか観察できます。

「クルマの向き」「ロールの変化」で、ハンドルの切り始めポイントや舵角の入れ方がわかります。 また、プロのレースを観察すると周回によってドライビングスタイルを変えているのがわかります。

クルマの挙動はその瞬間その瞬間で変化していきます。たとえばガソリンが減ってきて前後重量バランスが変わった、タイヤが消耗してきた… …など。

前の周でアンダーを出してしまったら、翌周ではアンダーを出さないように意図的にオーバー方向で走るなど、アジャストしているのがわかると思います。

ただし、レーシングカーの場合、アジャストすると言っても極めて細かい操作になりますので、観察すること自体にスキルが必要にはなりますが、こういった玄人向けの視点から観るのも面白いと思います。


講師
梅田 剛

先導走行や追い掛け走行では、いつもの自身の走り方ではなく、あえて前車の走り方をコピーすることが上達の秘訣と梅田講師。「走りを学ぶ」には、どんどん取り入れて試せる柔軟性が必要というわけだ。