2026年シーズンのMotoGPもすでに3分の1を終えたところだが、あらためて、ここで今季のコンセッションについて整理したい。

「コンセッション、聞いたことはあるし、たまに見るワードだけどよくわからない」というMotoGPファンもいるだろう。少しだけややこしいけれど、この単語を理解しておくと、MotoGPがもう少し楽しく見られるはず。この機会にぜび、知ってみてください。

「コンセッション」という、ちょっと複雑なシステムを知ってみる

2024年から導入されている現在の「コンセッション」のシステムでは、メーカーごとに「A」「B」「C」「D」という4つのランクに分けられている。

2026年シーズンの開幕時点で、各ランクは以下の通り。

  • ドゥカティ…A
  • アプリリア…C
  • KTM…C
  • ホンダ…C
  • ヤマハ…D

このランク分けは、大まかに言えば、定められた期間で各メーカーが獲得したポイント数の割合によって分類される。

ランクによって何が違うのかというと、Aに近づくほど様々な規制が厳しくなり、Dに近づくほど規制が緩やかになる。

例えば、ランクAであるドゥカティは、テストのためのタイヤ本数が75本、プライベートテストを実施できるのはテストライダーのみ。シーズン中のワイルドカード参戦(テストライダー等がスポットで参戦すること。主に開発を目的としている)は、できない。

一方、ランクCのアプリリア、KTM、ホンダは、もう少し緩やかだ。テストタイヤが93本で、プライベートテストはランクA(ドゥカティ)同様にテストライダーしか行うことができないが、ワイルドカード参戦は6回認められている。実際に、アプリリアは、スペインGPでテストライダーのロレンツォ・サバドーリをワイルドカードで参戦させた。

ランクDのヤマハになると、さらに規制が緩やかになる。テストタイヤは115本。さらに、プライベートテストにはテストライダーのほか、レギュラーライダーが参加できる。つまり、テストライダーとともに、ファビオ・クアルタラロやアレックス・リンス、ジャック・ミラー、トプラク・ラズガットリオグルがプライベートテストに参加できるということだ。

もちろん、レギュラーライダーがシーズンを戦いながら合間を縫ってプライベートテストにも参加する、ということは、開発に有用であると同時にライダーにとって身体的、精神的な負荷がかかる。メリットばかりではなく、そうした側面もある。

一つ、ワイルドカード参戦について補足しておこう。2027年シーズンには技術規則が改定される。大きな違いとしては、マシンの排気量が現行の1000ccから850ccになるというものだ。ただし、今シーズン中のワイルドカード参戦では、コンセッションのランクを問わず、2027年向けの850ccマシンを使用することはできない。今季のレースウイークでは850ccマシンが走ることはない、ということだ。

ランクDはシーズン中もエンジンのアップデートができる

そして、ランクDの最も大きなメリットは、「エンジンの仕様が承認対象外である」ということである。

通常、各メーカーは、シーズン開幕前にそのシーズンを戦うエンジン仕様に承認を受け、承認を受けた仕様のエンジンで1シーズンを戦う。つまり、シーズン中にエンジンをアップデートすることはできない。

しかし、ランクDは、アップデートが許されている。つまり、シーズン開幕前にエンジン仕様の承認を受ける必要がないのである。

ヤマハ、そして2025年シーズンにランクDだったホンダも、昨シーズン中には何度かエンジンをアップデートしている。言うまでもなくエンジンはマシンを構成する大きな要素であり、アップデートできることは開発にとっても重要だ。

また、空力デバイスについても、ランクAからCはライダー一人あたりのシーズン中のアップデート数が1回であるところ、ランクDは2回となっている。

このように、ランクDは、開発、進化がより進むように規制が緩やかになっている。それだけ苦しい状況にある、とも言える。ただ、ランクDの恩恵を受けているとはいっても、ライバルと肩を並べるのはそう簡単な話ではない。ランクAのドゥカティも、そしてアプリリアやKTM、ホンダも、プライベートテストにレギュラーライダーが参加できずとも、シーズン中のエンジンのアップデートができずとも、当然ながら常に進化しているからだ。日進月歩のMotoGPにおいて、進み続けるライバルに追いつくことは容易ではない。

今季、ランクCのホンダ。けれど、アプリリアとKTMと同じではない?

2026年シーズンのホンダについて補足しておこう。

ホンダは、同じランクCのアプリリア、KTMとはエンジンの状況が異なる。

2026年シーズン、ドゥカティとアプリリア、KTMは、2025年シーズンの開幕前に承認を受けた仕様のものを使用している。2027年シーズンに技術規則が改定されることを受け、2025年と2026年シーズンは同じ仕様のエンジンで戦わなければならない。

ただ、ホンダは2025年シーズン末のチェックポイントで、ランクDからCに浮上した。このため、ホンダは2026年シーズン開幕前にエンジン仕様の承認を受け、そのエンジンで今季を戦っている。

つまり、同じランクCではあっても、アプリリアとKTMは2025年仕様のエンジン、ホンダは2026年仕様のエンジン、という違いがあるということだ。

次回のチェックポイントは……

次にコンセッションのランク分けが行われるチェックポイントは、サマーブレイク前の最後のレースとなる7月のドイツGP後である。各メーカーの進化や勢いが可視化されるポイントでもあるので、ぜひ注目してみてほしい。

なお、2027年シーズンは技術規則の改定により850㏄マシンとなるため、2026年に参戦した全メーカーがランクBでスタートする。