2027年シーズン、MotoGPに大きな変化が訪れる。
マシンのエンジン排気量が850ccになるのだ。これは主な変化の一つだが、変わるのはそればかりではない。2027年のMotoGPは、何が変わるのか。少し詳しく見ていこう。
エンジン排気量が850ccに
最も大きな変化と言えるのが、エンジン排気量である。
2026年までのMotoGPマシンのエンジン排気量は1000ccを上限としていたが、2027年からは850ccに引き下げられる。また、最大ボア径も81mmから75mmへ縮小される。
排気量については、これまでにも何回か変更されてきた。2002年にロードレース世界選手権は「MotoGP」となり、最高峰クラスは、それまでの2ストローク500ccのマシンから4ストローク990ccのマシンに、名称も「MotoGPクラス」となった。
その後、2007年から2011年は800cc、2012年から2026年までは1000ccの排気量のマシンで争われてきた。そして2027年、MotoGPマシンの排気量は850ccになる、というわけだ。
また、各シーズンで使用が許可されるギア比(ギアの組み合わせ)の総数は、これまでの24種類から16種類に削減され、一次減速比はこれまでと同じく4種類まで使用できる。
最低車両重量も変わる。2026年までは157kgだったが、2027年からは153kgになる。4kg軽量になるということだ。
ガソリンタンクの容量も、2026年までは決勝レースで最大22リットル、スプリントレース(決勝レースの半分の距離で行われる)で12リットルだったが、2027年は決勝レースで20リットル、スプリントレースで11リットルに引き下げられる。使用するガソリンについても変更があり、今季は40%が非化石燃料であるところ、2027年からはその割合が100%となる。
空力デバイスは、大まかに言えば、全体的に縮小される。また、リアの空力デバイスについても承認の対象となり、アップデートが認められるのは1シーズンにつき1回となる。
そして、ホールショット・デバイス、ライドハイトデバイスが、2027年に禁止となることも、大きなポイントだ。ホールショット・デバイス、ライドハイトデバイスとは、車高を調整する装置のことである。主にスタートや、コーナー立ち上がりの加速時などに使用されている。
ドゥカティが最初に導入したこのシステムは、今では全メーカーが取り入れている。一方、レース中に解除されず車高が元に戻らない、といったトラブルが度々発生している。2025年イギリスGPでトップを走っていたファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)が、マシントラブルでリタイアを余儀なくされたが、これはライドハイトデバイスが解除されないというトラブルが原因だった。このとき、同様のトラブルがチームメイトのアレックス・リンス(ヤマハ)にも発生している。その危険性が度々指摘されてきたシステムでもある。

マシン以外に変わること
2027年シーズンからは、公式タイヤサプライヤーがピレリになる。これも大きな変更だ。
現在、MotoGPでは一つのタイヤメーカーがシーズンを通してタイヤを供給している。2015年まではブリヂストン、2026年まではミシュランがサプライヤーを務めてきた。
なお、ピレリは2024年よりMoto3、Moto2クラスのタイヤサプライヤーを担っている。さらに付け加えると、イデミツMoto4アジアカップ、レッドブルMotoGPルーキーズカップ、Moto3ジュニア世界選手権にタイヤを供給するのもピレリである。これらは、MotoGPを目指す若いライダーが参戦する選手権だ。MotoGPクラスのサプライヤーとなることで、ライダーが若いころから一貫してピレリタイヤで戦いながら最高峰クラスまでステップアップできるようになった。
ピレリとミシュランは、タイヤのキャラクターがかなり異なっていると聞く。2025年ポルトガルGPとバレンシアGPに、マルク・マルケス(ドゥカティ)の代役として参戦したスーパーバイク世界選手権(SBK)ライダー、ニコロ・ブレガ(ドゥカティ)のコメントを紹介しよう。
「スーパーバイク(ピレリ)ではブレーキングの初期でアグレッシブにいかないとバイクが止まらないけど、ここ(ミシュランを使用するMotoGP)ではまったく逆なんだ。アグレッシブにいくとフロントを失ってしまう」
もちろん、このコメントは、SBKのピレリとMotoGPのミシュランを比べたものだ。ピレリはMotoGP向けのタイヤを開発しているだろうから、2027年のタイヤがこのような特性と同じとは限らない。ただ、少なくともキャラクターはミシュランと異なるはずだ。
なお、6月のチェコGP後と、9月のオーストリアGP後に来季に向けたピレリのタイヤテストが予定されている。
2027年の技術規則改定により、何が変わるのか?
では、2027年に技術規則が変わり、マシンの排気量が850ccになり、空力デバイスのサイズが縮小され、ホールショット・デバイス(ライドハイトデバイス)が禁止となることで、レースはどう変わるのだろうか。
排気量が引き下げられることで、一時的に最高速やタイムは下がるかもしれない。個人的な見解を述べるなら、最高速やタイムが例え一時的にでも抑えられることは、とりわけ大きな問題ではないだろうと考えている。重要なことは、今あるものとレギュレーションのなかで、いかにエキサイティングで素晴らしいバトル、レースが行われるか。それがモーター「スポーツ」ではないだろうか。
もう一つ、変わることが期待されるのは、空力デバイスの縮小やライドハイトデバイスの禁止により、現在よりもさらにライダーの力量次第のレースになるのではないか。速いバイクを持つことはMotoGPの勝利にとって重要だが、今、マシンの重要性は大きくなった。2027年の技術規則によって、ライダーのポテンシャルがもっと報われるレースになるだろう。そう期待している。
なお、2026年シーズン中は、ワイルドカード参戦で2027年に向けた850㏄マシンを使用することはできない。つまり、レースウィークに2027年型850ccマシンが走ることはできない。各メーカーは、プライベートテストで開発を続けることになる。

