ようやく、マツダ3を公道で試乗できた。しかも4日間600kmにわたって、普段使いしてみる機会に恵まれた。ファストバックのXD、ディーゼルエンジン搭載のFF、その最上級グレードである。最上級といっても300万円を切る。さて、マツダ3、その完成度やいかに。
マツダ3は、高くない。いや、安い

ボディカラーは、ファストバック専用の新色、ポリメタルグレーメタリック
試乗車は、ファストバックのXD Burgundy Selection 2WD。トランスミッションは6速ATだ。XD(ディーゼル搭載)の最上級グレードがBurgundy Selection。のっけから価格の話で恐縮だが、これで車両本体価格は298万9200円である。300万円を切る価格なのだ。 試乗車には、オプションのBoseサウンドシステムと360度ビューモニター+ドライバーモニタリングがついて315万100円だが、いずれにせよ、非常に競争力がある価格設定だと言える。

全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm

車重:1410kg 車重1410kg 前軸軸重 900kg 後軸軸重 510kg

最小回転半径は5.3m
先代アクセラから価格が上がった、という見方もあろうが、上がった価格以上にマツダ3は良くなっている。価格が1ランクだとしたら、クルマの出来は2ランク以上上がっている。 ディーゼルエンジン搭載のCセグハッチバックでいえば VWゴルフTDIコンフォートライン:323万円 プジョー308GTラインBlueHDi:329.9万円 メルセデス・ベンツA200d:399万円 ゴルフで言えば、マツダ3のXD Burgundy Selection 並みの装備を、と考えればTDIハイラインとなって362万円まで価格は上がる。マツダ3XD Burgundy Selectionの300万円以下という価格に説得力を感じるではないか。

インテリアの質感は、先代から2ランクアップといっていい

マツダ3からキーも新しくなった

マツダ3からキーも新しくなった

マツダ3からキーも新しくなった
冒頭、価格の話が長くなってしまった。 さて、ようやくマツダ3に一般公道で試乗することができた。マツダ横浜R&Dセンターでマツダ3に対面。新色のポリメタルグレーメタリックを初めて陽の光の下で見ることができた。不思議なカラーだが、非常に魅力的だ。マツダ会心の、と言っていいボディデザインと相まって、素直に「これは、かっこいいな」と呟いてしまった。 まずは、クルマはかっこよくなくては。これは軽くクリアである。 預かったキーも、新世代商品群から変わった。ドアを開けてシートに腰を下ろしただけで、明らかに先代とは違うクラスのクルマだとわかる。内装の質感がグッと上がっているし、マツダコネクトのセンターディスプレイのサイズも変わった。何より、ディスプレイの高精細さが、美しい。Burgundy Selectionは、ヘッドアップディスプレイが標準装備されている(プロアクティブ、Lパッケージにも)。これも、コンバイナー式(反射板がせり上がってくるタイプ)ではなく、前面ガラスに投影するタイプ。これもいい。

マツダ3を測って測って測りまくる。高さは? トランクは? 公園で全開シリーズ:15回目 Mazda 3

例によってボンネットを開けるとこう見える。フードにダンパーはつかない(ちょっと残念)

エンジン 形式:1.8ℓ直列4気筒ディーゼルターボ 型式:S8DPTS(SKYACTIV-D1.8) 排気量:1756cc ボア×ストローク:79.0×89.6mm 圧縮比:14.8 最高出力:116ps(85kW)/4000pm 最大トルク:270Nm/1600-2600rpm

例によって興味はないかもしれませんが、これがエンジンカバー

裏側はこうなっている
エンジンをかける。エンジンは、ご存知SKYACTIV-D1.8。従来のアクセラにはあったD2.2は今回はラインアップには存在しない。ディーゼルは、このD1.8のみだ。 パワースペックは116ps/270Nmと控えめだ、 マツダの新世代技術がすべて入った第一弾がマツダ3だ。シャシーのSKYACTIV Vehicle-Architectureの初出しがこれ。乗り出してすぐに感じるのは、「曲がる」の楽しさだ。ステアの正確さ、操作感も含めたステアリングのフィールともに素晴らしい。アクセルペダルを踏む、ステアリングホイールを操作する、その連携がとても気持ちがいい。数字には表しにくいところだが、マツダ3、第一印象、非常によし、だ。

翌日、良い第一印象のまま往復200km程度の試乗&撮影に向かった。この日は、4人乗車である。 ちょっと突き上げがきついかな、と思ったが、ドライバーである私は、相変わらず運転が楽しい。しかし、後席、そして助手席の同乗者からは、「乗り心地が悪い。跳ねる」というコンプレインが。たしかに、乗り心地はイマイチだ。事前の説明や取材で説明されていたのとは違うじゃないか!という思いが募る。 そう。乗り心地が悪いのだ。路面の悪い市街地、そして第三京浜道路と、路面が悪いところでの突き上げがきつい。事前の試乗会では路面のよいテストコースでの走行だったので、気づかなかったが、これがちょっと許容できない。 ひとつ気になり始めると、別の欠点もひっかかってくる。 100km/h巡航のエンジン回転数は2000rpm、110km/hでは2200rpm程度だ。7速DCTのゴルフTDIの100km/h巡航は1550rpmだ。だが、エンジン回転数の高さは、まったく気にならない。なぜならとても静かだから。マツダ3の美点として、風切り音が極めて低いことがあげられる。サイドミラー周りの風切り音は皆無と言っていいほど静か。これはいい。 マツダ3に対して6速ATの変速ギヤ段数が足りないという指摘もあるようだが、私はそうは感じなかった。6速で不足なし、だと思う。 不足があるとすれば、パワーとトルクだ。 ひとりでドライブしている分にはまったく問題ないと感じたが、4人乗車(と言っても、私以外は女性だったから、プラス180kgにもなっていないと思う)での登坂となると、ディーゼルエンジンに期待したほどの力強さを感じられなかった。

ステアリングの正確さ、フィールは秀逸。運転が楽しい
マツダ3:1.8ℓディーゼルターボ 最高出力:116ps(85kW)/4000pm 最大トルク:270Nm/1600-2600rpm パワーウェイトレシオ:12.16 トルクウェイトレシオ:5.22 VWゴルフTDI(2.0ℓディーゼルターボ) 最高出力:150ps(110kW)/3500-4000pm 最大トルク:340Nm/1750-3000rpm パワーウェイトレシオ:9.53 トルクウェイトレシオ:4.20 というのが、そのまま体感とシンクロする。 ちなみに、私のマイカーであるBMW320d(F30型)のそれは 最高出力:190ps(140kW)/4000pm 最大トルク:400Nm/1750-2500rpm パワーウェイトレシオ:8.16 トルクウェイトレシオ:3.88 である。マツダ3におけるSKYACTIV-D1.8搭載グレードのポジショニングを勝手に、「GTD」的な性格だと思っていると、ちょっと違う。燃費性能に優れたエコグレードだと思えば、走る・曲がる・止まるの基本性能の高さと質感の良さで、ちょっと(嬉しい)違和感を覚えるが、一方、曲がる・止まるの基本性能と燃費性能の高さに、「GTD」的な走りを期待すると、ちょっと(がっかり)違和感を覚えるかもしれない。 プジョー308GTラインBlueHDi 1.5ℓ直4ディーゼル 130ps/300Nm メルセデス・ベンツA200d 2.0ℓ直4ディーゼル 150ps/320Nm

6速ATのギヤ比は最終ギヤ比を含めてG2.0とD1.8は4.095で同じ
こうしてみると、マツダSKYACTIV-D1.8のスペックの控え目なのがわかる。控え目にしているメリットも、もちろんある。尿素SCRシステムなしに排気規制をクリアできるのは大きな長所。AdBlueが必要ないのはユーザーにとっても大きなメリットだ。 ちょっと物足りなく思えたのは、前述の通り、期待度の高さによるものと、SKYACTIV-Xエンジン搭載車の全貌がわからないからだ。よりスポーティ、より走りに振ったグレードがSKYACTIV-Xエンジン搭載車でSKYACTIV-D1.8のモデルは、燃費がいいジェントルな(それでも望外に走りがいい)グレードなんだとしたら、それはその通りになっている。

タイヤは215/45R18サイズのトーヨー。タイヤの空気圧を変更してみる。これがてきめん乗り心地に効いた

タイヤは215/45R18サイズのトーヨー。タイヤの空気圧を変更してみる。これがてきめん乗り心地に効いた
ここまで書いたが、マツダ3の完成度は非常に高い。これまで多くの取材をしてきたおかげもあって、極めて前評判が高かったから、走りも燃費性能も別次元にすごいクルマ、という先入観があっただけである。 お借りしたマツダ3は翌日、別の取材チームの手に委ねられた。試乗を終えての感想を聞くと、エンジンについてはあえての抑えたスペックで得られたものを高く評価していた一方、やはり乗り心地、とくにリヤの突き上げは気になったという。 そこで彼らが行なったのは、「空気圧の調整」だ。 マツダ3XDの指定空気圧は 前260kPa 後250kPa とちょっと高めだ。 マツダの広報車の管理は非常にしっかりしていて、借り出しの際にはぴったりと指定空気圧になっている。それを 前260kPaはそのままに、後ろを220kPaまで落としたという。そしたら、リヤの突き上げは格段に改善したというのだ。 再びマツダ3を預かった際に、スタッフと話し合って 前240kPa 後220kPaに変更した。 これが効いた。俄然、思ったような乗り心地に変わったのだ。ステアリングはややダルになったように感じたが、それを補ってあまりあるほど乗り心地が改善した。これが(勝手に)思い浮かべていたマツダ3の乗り心地だ。

日曜日の早朝4時のドライブ
さて、マツダ3ファストバックのXD FFの、最初の試乗の結論を出そうと思う。その確認をするために、日曜日の早朝4時にドライブに出かけた。最初に、「乗り心地が悪い」と感じたコースを再度走ってみようと思ったのだ。 日曜日の早朝。自宅ガレージでマツダ3のエンジンをかける。あらためて感じたが、非常に静かだ。住宅街で周囲を気にしなくても大丈夫だ。BMW320d(F30型)よりも静かである。日の出前(というかまだ夜中)の東京でも、マツダ3のアダプティブハイビームの効果は確認できた。

マツダ3のBoseサウンドシステムにはCDスロットがある。持ち込んだのは、ケイト・ブッシュの『The Whole Story』Boseらしい音は非常に良かった。
指定空気圧ではあれほど突き上げが感じられた乗り心地も、スムーズで気持ちよい。日曜日の早朝のマツダ3のドライブは、至福の時間だった。ノーマルのオーディオの出来を確認したかったが、試乗車にはBoseサウンドシステムのオプションが装着されていた。 お気に入りのCDをかけてのドライブは本当に素晴らしい。なにより、CD/DVDスロットがあることが嬉しい。 マツダ3の美点は、スピード域に関わりなく手応えが一定であること。ステアリング、アクセル/ブレーキ、ボディのしっかり感が連携していることだ。だから、高速道路でむやみに速度を上げずに制限速度内で走っていてとても楽しい。三浦半島の海沿いの道を低い速度で走っても、畑の間の細いクルマ1台がやっとの道を極低速で走っていても、楽しいのだ。

日曜日の早朝の三崎港。朝5時過ぎに着いたが、朝市で賑わっていた
気になる燃費は、607.2km走行して燃費は17.1km/ℓであった。WLTCモード燃費19.8km/ℓに対して86.4%という結果だ。これを各モードに当てはめると、 市街地モード 16.4km/ℓ→14.2km/ℓ 郊外モード 19.7km/ℓ→17.9km/ℓ 高速道路モード 21.8km/ℓが18.8km/ℓ となるが、印象とも一致する。この走りでこれだけの燃費性能ならまったく不満はない。 若干、不満があるとすれば、左後方の視界だ。太いCピラーのせいでここは正直よく見えない。パーキングエリアで前から斜めに駐めたあとの出発、というようなシーンで見えなくてちょっと不安を覚えた。ただし、これはすばらしくかっこいいデザインとのトレードオフ、と考えれば納得がいく。とにかくかっこいいから。 結論を言うと、マツダ3、とってもいい。 このクラスのスタンダートを一気に上げたと言っていい。価格まで考えたら、正直マツダ3のライバルはいない。買った時の満足度はゴルフ7より上だろう。 問題は、SKYACTIV-Xを待つかどうか。そして、真のライバルがゴルフ7ではなく、これから登場するゴルフ8だということかもしれない。アメリカで、ヨーロッパで、中国で、そして日本で、新しいマツダはすごい、と思わせなければいけない役割を担うマツダ3。そのポテンシャルは充分だ。 個人的な感想を言うと……、マツダ3を買うなら、どうあれSKYACTIV-Xだろう、と思っていた。が、XとD1.8の価格差と、今回の試乗車の完成度を考えると……D1.8、買って後悔はない……と思う。新しモノ好きの戯言として、蛇足ながら……。

マツダ3 FASTBACK XD Burgundy Selection 全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm ホイールベース:2725mm 車重:1410kg サスペンション:Fマクファーソンストラット式&トーションビームアクスル式 駆動方式:FF エンジン 形式:1.8ℓ直列4気筒ディーゼルターボ 型式:S8DPTS(SKYACTIV-D1.8) 排気量:1756cc ボア×ストローク:79.0×89.6mm 圧縮比:14.8 最高出力:116ps(85kW)/4000pm 最大トルク:270Nm/1600-2600rpm 燃料:軽油 燃料タンク:51ℓ 燃費:WLTCモード 19.8km/ℓ 市街地モード 16.4km/ℓ 郊外モード 19.7km/ℓ 高速道路モード 21.8km/ℓ トランスミッション:6速AT 車両本体価格:298万9200円 試乗車はオプション込みで315万100円
