日本にスポーツワゴンというジャンルを根付かせたレガシィ・ツーリングワゴンのDNAを継承。伝統の走りを磨き上げるだけでなく、快適なロングツーリングに不可欠な静粛性と乗り心地を改善してきた新型レヴォーグ。 アイサイトをはじめとする安全装備も充実し、さらなるステージへと進化した。 REPORT●安藤 眞(ANDO Makoto) PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki) ※本稿は2017年8月発売の「ニューモデル速報 Vol.555 新型レヴォーグのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様や道路の状況など、現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。
スバル・レヴォーグのパッケージング
■ 伝統のツーリング性能を常に磨き続けるスバルの開発姿勢 日本において“ステーションワゴン”というカテゴリーを定着させたのは、1989年に発売された初代レガシィだ。 それまで国産ステーションワゴンといえば、多くは商用バンと同時開発され、「荷物の積み下ろしがしやすい」という以外、取り立てて特徴のあるクルマではなかった。 ところがレガシィは、“ワゴン”の前に“ツーリング”というキーワードを付けて登場。商用バンはラインナップせず、「セダンにさらなる付加価値としてユーティリティをアドオンしたクルマ」として訴求を図った。 実際のクルマも、セダンと同じメカニズムを採用。バンといえば、リヤサスはリーフリジッドが当たり前だった時代に、ストラット式独立懸架を採用して操安性と乗り心地を改良。 ハイエンドグレードの「GT」は、エンジンも当時の「10万km世界速度記録」を達成したセダン「RS」と同じ2.0ℓターボを搭載するなど、荷役性以外の点でも、クルマ好きの心を捉える魅力を持っていた。 さらに二世代目と三世代目では、1km区間平均最高速度記録で「量産ワゴン最速(249.981km/hと270.532km/h)」のタイトルを獲得。「走れるワゴン」としてのキャラクターを明確にした。 しかし、その後レガシィは、好調な北米市場に軸足を移し、ボディも大型化し始め、五代目ではサイズアップが顕著になる。北米では、SUVテイストを加えた“アウトバック”が販売の中心へと移行。“ツーリングワゴン”は日本市場がメインとなる。 そうなると「大きさの問題」が顕在化し始め、旧来のファンや販売店から、「四代目レガシィ(BP型)クラスに凝縮したサイズのワゴン」待望論が沸き起こる。それに応える形で開発されたのが、レヴォーグである。 名前の由来は、“レガシィ レヴォリューション ツーリング”。レガシィの伝統であるツーリング性能に、WRX STIのスポーツテイストを融合させた“革新スポーツツアラー”をコンセプトとする。 驚かされるのは、日本専用モデルとして企画されたこと。日本市場だけで利益を出すには、月間販売台数30傑には定着したい。台数にすると、2000台強/月が目安となる。 しかし大メーカーといえども、新規参入モデルでこのレベルに届かず、消えていったモデルは少なくない。 ところがレヴォーグは、3年間で約9万5000台を売る人気モデルとなった。それだけでなく2014年の東京モーターショーで発表されるやいなや、欧州マーケットからの盛大なラブコールを巻き起こした。 そして、急遽、輸出仕様を仕立てる必要に迫られたのだが、このことが、さらにレヴォーグの走行性能を磨き上げることになった。より走行速度の高い欧州で浮き彫りになった改良点が、年次改良で日本仕様にも反映され、性能の底上げにつながったのである。 デビューから4年目となる今回は、初のビッグマイナーチェンジ。“D型”となった新型レヴォーグは、どんなふうに生まれ変わったのだろうか。 <スバル・ツーリングワゴンの足跡> ▼ 初代レガシィ・ツーリングワゴン「GT」

スバルにWRC初優勝をもたらした2.0ℓターボ+フルタイム4WDセダン、初代レガシィ「RS」と同じEJ20型エンジンをワゴンに搭載。スポーツカーの心臓を搭載する快速ワゴンという新ジャンルを打ち立てた。
▼ 二代目レガシィ・ツーリングワゴン世界速度記録達成車

1993年9月9日にデビュー直前の二代目レガシィ・ツーリングワゴンが、アメリカ・ユタ州のボンネビルスピードウェイで、ステーションワゴン多量生産車無改造部門における1kmの区間平均速度249.981km/hの世界速度記録を達成。
▼ 四代目レガシィ・ツーリングワゴン「GT」

2003年に登場。三代目まで5ナンバーサイズだったボディを1730mmに拡幅した3ナンバーサイズを採用。現在のレヴォーグとほぼ同じ大きさ。2003-2004日本カー・オブ・ザ・イヤー(日本カー・オブ・ザ・イヤー 実行委員会主催)をスバルとして初受賞。
▼ 六代目レガシィ・アウトバック

2014年に発売されたレガシィの現行モデル。国内市場向けツーリングワゴンの位置をレヴォーグに譲り、好調な北米市場に合わせた大柄なボディサイズを採用。セダンのB4とクロスオーバーSUVタイプのアウトバックの2タイプとなった。
■ 良好な乗降性はそのままにリヤシートを大幅に改良 今回はマイナーチェンジであるため、ランニングコンポーネントの搭載方法や乗員の座らせ方など、主要なパッケージングには変更はない。外形寸法も「基本的に」同じだ。

全長×全幅は、4690mm×1780mm。均整がとれているためあまり大きくは見えないが、全長はいわゆる5ナンバーサイズ(4700mm)いっぱい。全幅は5ナンバー枠を80mmはみ出している。 しかし実際のサイズ感としては、四代目レガシィのツーリングワゴン(BP型)とほとんど変わらない。「2.0GT−S」の全高はルーフアンテナ上部までで1490mmだが、「1.6GT」は1495mm、同「GT−S」「GT S−Style」は1500mmと高くなった。 Bピラーから前は、基本的に旧型インプレッサ(GP/GJ型)と同じため、乗降性や居住性も同じ。 サイドシルスポイラーが全車標準装備されるため、シル幅は広めだが、裾広がり形状になっているため、足運びは気にならない。運転席の着座は522mmと低過ぎず、間口の高さも十分にあるため、身長181cmの筆者でも乗降性は良い。 筆者がシート位置を合わせると、最後端から80mm程度(スライド量は240mm)、ハイトアジャスターは5〜10mmぐらい上げてちょうど良い。 ステアリングコラムには、42mmのチルト(上下)と40mmのテレスコピック(前後)調整が付き、操舵重視のポジションも、高速でリラックスしたポジションもつくりやすい。内装はシルバー系の加飾が控えめで、落ち着いた雰囲気になった。 操作系のレイアウトは前モデルを踏襲しつつ、ステアリングスポークに配置されるスイッチ類を適正化。右側スポークのステアリング制御スイッチは、注目のツーリングアシストを象徴して、ステアリングのマークへと変更されている。 運転席からは、ボンネットは5分の3程度まで目視できる。Aピラーとドアミラーの間に隙間があるので、交差点左折時の死角も小さい。 斜め後方は、リヤクォーターウインドウがよく機能しており、後席ヘッドレストも視界を妨げない。真後ろは、車両から50ccmのところに置いた1mのポールが視認できる設計だ。 後席の乗降性も良好。腰の動線はしっかり確保される。Bピラー下部やドアトリムも逃げ形状で、27cmのアウトドア用スニーカーが真横に通せる。筆者が着座すると、頭上の余裕は約80mm、膝前の空間は約50mm。フロアトンネルが大きいが、2名掛けなら足の置き場も必要十分だ。 今回のモデルチェンジの目玉は、リヤシートの改良。バックレストが6対4分割から4対2対4分割となり、真ん中に長尺物を積んで2名がゆったり座れるようになった。スキーフリーク待望の改良である。 ラゲッジ容量は五代目レガシィ(BR型)とほぼ同等。「レガシィから乗り換えるお客様に不便を強いないように」との配慮からで、四代目(BP型)と比べると、63ℓ大きい。 広くて見やすい視界

右左折時やコーナリング時に視界の妨げにならないよう、ピラーやドアミラーの形状、位置を最適化。フロントサイドウインドウに三角窓を設け、視界を拡大。運転席からはボンネットの5分の3程度まで目視できる。
疲れにくいフロントシート

乗り心地とサポート性を追求し、運転時の疲労を軽減。正確なドライビングを支える。フロント、リヤともにシートバックのメイン部とサイド部は硬さの異なる素材を採用。フロントシートのヘッドレストは上下だけでなく角度も調整できる可倒式。
ゆとりある後席スペース

リヤシートの膝まわりに十分なスペースをとっているので、ロングツーリングでも前席、後席ともに心地よい時間が過ごせる。さらに、リヤにもシートベルト未装着ウォーニングランプ&ブザーを装着して安全性を高めた。
4対2対4分割式リヤシート

スバル初採用の4対2対4分割可倒式リヤシートは、シートフレームから新設計。中央席を独立して倒せるので、後席2名乗車時でもスキーなどの長尺物の積載が可能に。シートアレンジにより多彩なシーンに対応できる。また、シートが急に倒れにくい機構を採用。操作時の指の挟み込み防止に配慮している。
空調パネルのデザイン変更

8インチのナビ画面採用に伴い、空調パネルのメッキリング付きエアコンダイヤルのスイッチレイアウトを変更し、従来型より薄くなった。エアコンは左右独立温度調節機能付きフルオートエアコンを全車に標準装備している。
スバル・レヴォーグのボディ
■ WRX譲りの高剛性ボディに高い静粛性が与えられた 今回はボディ本体には手は入れられておらず、改良は静粛性の向上が中心となっている。

<静粛性向上の対策ポイント> ❶ フロント&リヤドアガラスの板厚UP 3.5㎜→4.0㎜ ❷ フロント&リヤのウェザーストリップ断面形状を変更 ❸ リヤドア用のウェザーストリップ二重化 ❹ ドアシール部の穴埋め ❺ リヤゲートガラスの板厚UP 2.8㎜→3.5㎜ ❻ ボディ床面にサイレンサー追加&荷室まわりの吸音材追加 ❼ フロントレールの空洞に発泡剤を追加 まず、ガラス類の板厚アップ。前後ともドアガラスは3.5㎜から4.0㎜へと厚板化。リヤゲートガラスも、2.8mmから3.5mmへと厚板化が図られている。 ちなみにリヤクォーターウインドウは、C型にモデルチェンジした際に、3.1mmから3.5mmへと厚板化を実施済み。これらはもちろん、遮音性を高めるための対策である。 ガラス厚さの変更

ドア開口部をシールするウェザーストリップは、断面形状を変更。内部に遮音スポンジを追加し、遮音性の向上を図った。 これは、ドア開口部のボディ側に取り付ける部品。ドア開口部を溶接するためのフランジ部を挟み込むように配置するものだ。 サイドシル側以外は連続しているので、一見すると隙間はできないように思えるが、実は内部に微妙な隙間ができる。溶接フランジには多少の凹凸があるし、板の重ね枚数が変わるところでは、段差もできる。会話を阻害する高周波のザワザワ音は、そんなわずかな隙間からも通り抜けてくる。 そこで今回は、フランジ面が突き当たる部分に、遮音スポンジを山型に配置。これを利用してパネルの凹凸や段差によって生じる隙間を埋め、漏れてくる音の遮断を図った。 ウェザーストリップ断面形状変更

ドア本体側の遮音対策も、細かく行なわれている。 まず、ドアシール部の穴埋め。ベルトラインの見栄えを良くするため、窓枠の下辺に取り付けられる部品だが、これはドア外板に開けられた角穴に、クリップを突っ込んで固定するようにできている。 このクリップと穴の周りにも隙間ができるため、クリップの根元にシール材を追加し、隙間ができないよう改良を図った。 ドアシール部の穴埋め

さらに、リヤゲートガラスリップの二重化を実施(フロントドアはC型で対策済み)。これは前記ドアシールと同じ場所の室内側に付いている部品だが、リップを二重化することで、遮音性能の向上を行なっている。 床下からの騒音には、サイレンサー(制振材)の板厚アップと面積拡大で対応。前席足元は板厚を厚くし、前席クッション下は面積の拡大を行なった。 レヴォーグはもともと、フロアパネルの板厚が旧型インプレッサより約40%厚く、振動騒音面では有利だったが、今回はさらにレベルアップを図った。 最後にもうひとつ、フロントレールの空洞部に、発泡ウレタンの注入を行なっている。 フロントレールとは、フロントガラス上部を横断するクロスメンバーのスバル流呼称。フロントガラスやルーフパネルが高速走行時に振動し、それがフロントレール内の空洞で、気柱共鳴を起こして音が増幅される。それを防止するための対策である。 これらの対策によって、100km/h走行時の会話明瞭度は前後席とも、約3ポイント向上。前後席間の会話でも、ことさら声を大きくする必要はないレベルになっている。 以降は基本ボディの説明となるが、今回は変更は行なわれていない。本記事では概略に止めるので、より詳しくは、本シリーズ第496弾「新型レヴォーグのすべて」を参照願いたい。 パッケージングの項で、「Bピラーから前は旧型インプレッサと同じ」と書いたが、ボディシェルという点に絞れば、「現行WRXと同じ」と言うのが正確。 インプレッサをベースに、サーキット走行まで想定したハイグリップタイヤを履き、300ps超のパワーを受け止めるために、大規模な補強が加えられたものだ。 基本骨格はWRXと共通

北米や欧州でも販売するWRXとプラットフォームの共用化を図ることで、日本専用車としてのレヴォーグが成立したという側面もあるが、それは恐らく、ユーザーにとっても、幸せなことだったに違いない。 それはともかく、ボディの強度及び剛性に対する考え方は、スバルグローバルプラットフォーム(SGP)の基礎となったもの。 ゼロからの開発ではないため、重量効率ではSGPには及ばないとはいえ、向いている方向は同じ。ベースのGP/GJ型インプレッサに比べると、車体剛性は捩り方向で約40%、曲げ方向で約10%向上している。 高い安全性を実現した衝突安全ボディ

先代インプレッサに対するレヴォーグの補強箇所

補強が加えられたのは、上の図の赤で示された部分。前後サスまわりとリヤゲート開口部が重点 的に強化されているのがわかる。 フロントはまず、ストラットタワーの板厚をアップ。タワーの内側には、サイドメンバーと接続する部分にガセットを追加している。これらによって、ダンパー入力をしっかりと受け止め、微少域から減衰力を正確に発生させることで、操縦安定性と乗り心地の向上を図った。 タワーの上部外側を走るフェンダーリッジには、側面から大きなY字型のガセットが当てられており、そこからつながるフロントドアピラーや、キャビンにつながるトルクボックスも補強されている。 これらによって、前輪で発生した横力を、遅れることなくキャビンへと伝達する。 さらにキャビンは、フロアの板厚が高められているのに加え、トーボードには厚板のパッチを設定。前から伝わってくる横力を、遅れることなくリヤサスへと受け渡す。 キャビンからリヤサスにかけては、骨格の分岐部が集中的に強化されているほか、リヤダンパーの入力経路に沿って、ホイールハウスが内外から補強されており、Cピラーでしっかりと支える構造となっている。 リヤゲート開口部まわりの設計は、ワゴンボディにとっては要となる部分だが、特にこだわった点は、ワゴンらしいラゲッジの使い勝手と、デザイナーの意図したスタイリッシュさの両立を図ること。具体的に言えば、リヤゲート開口部の高さをしっかり取りながら、ルーフエンドを低くしたクーペライクなデザインを成立させること。 そこで、開口部の剛性を睨みながら骨格断面を薄くし、不足する部分は、ここを通っているハーネス(電線の束)を2分割してスペースを稼ぎ、ルーフトリムを固定するクリップも薄型化して、両者を成立させた。 高張力鋼板の使用グレードは、最大9800Mpaまで。やたらに強度を高めても、薄板化すれば剛性が下がるから、レヴォーグのコンセプトに、これが最適バランスなのだろう。 高張力鋼板の積極採用

衝撃吸収に有利な水平対向エンジン

スバル・レヴォーグのエンジン・パワートレーン
■ 1.6ℓ車のエンジンとCVTの制御を変更 今回はパワートレーン系に変更はなく、従来通り1.6ℓと2.0ℓの直噴ターボを搭載する。「STIスポーツ」も「GT」系と同じエンジンを搭載しており、動力性能面での差別化は行なわれていない。 1.6ℓのFB16型は、ボア×ストロークはφ78.8mm×82.0mm。「幅をとる水平対向エンジンのロングストローク化は困難」という常識を覆し、ストローク/ボア比は1.04を確保する。 動弁系はチェーン駆動のDOHCで、ローラーロッカーアームを介してバルブを開閉。吸排気両側に、油圧式の可変タイミングリフト機構を装備する。 特徴的なのは、レギュラーガソリン仕様の過給エンジンでありながら、圧縮比が11.0対1と高いこと。圧縮比が高ければ、熱効率が高まって燃費が良くなるだけでなく、過給圧が上がらない領域でのトルク痩せが少なく、発進時からしっかりしたトルクを得ることができる。 FB16型 1.6ℓ水平対向4気筒ターボエンジン
排気量…1599cc 種類・気筒数…水平対向4気筒・縦置き 弁機構…DOHC 16バルブ 可変バルブタイミング直噴ターボ ボア×ストローク…78.8mm×82.0mm 圧縮比…11.0 最高出力…125kW[170ps]/4800rpm-5600rpm 最大トルク…250Nm[25.5kgm]/1800rpm-4800rpm 使用燃料…レギュラー 燃料タンク容量…60ℓ
FB16型の特徴

専用TGV(タンブルジェネレーションバルブ) FA20 型に対し、バタフライ閉時 の吸気通路をエンジン内側に変更。専用設計の吸気ポートや燃焼室を組み合わせることでタンブル流を強化し、燃費・排出ガス性能を向上。

専用ポート隔壁 タンブルジェネレーションバルブに合わせて、分割比率が5対5(FA20型は6対4)のポート隔壁を採用。これにより、吸気の流れによる筒内流動を強化。クラストップレベルの燃費と排出ガス性能に加え、2.5ℓ自然吸気を上回る動力性能を実現した。
FB16型の実用燃費を向上

一方で、圧縮比の向上はノッキングとの戦いとなるため、燃焼温度が上がり過ぎない対策が必要となる。 ひとつめは、燃料噴射の直噴化。吸気管内に噴射していた燃料を、シリンダー内に直接噴射すると、燃料が気化する際にシリンダー内の熱を奪い、圧縮開始温度が低下してノッキングを誘発しにくくなる。 ふたつめは、水冷式EGR(排ガス再循環)クーラーの採用。もともと排ガス対策用として考え出されたEGRだが、三元触媒で排ガス対策が可能になったガソリンエンジンでは、吸気損失を低減して燃費を良くするために使われている。 しかし排ガスは大気より熱いため、吸気に戻せば温度が高まり、ノッキングには不利になる。そこで、ラジエーターを小さくしたような水冷式クーラーで再循環ガスを冷却し、ノッキングを回避している。 ところがEGR量が増えると、酸素密度が低下して失火が起こりやすくなる。 そこで、吸気の流動速度を高め、失火を防ぐために付けられたのが、タンブルジェネレーションバルブである。このバルブによって吸気流量の少ない低負荷時には、吸気管の外側半分を閉じて流路を狭め、吸気流速を高めてシリンダー内の縦渦(タンブル)を強化する。 他にもシリンダーヘッドまわりの冷却改善など、ノッキング対策はいくつか行なわれているが、それらについては本シリーズ第496弾「新型レヴォーグのすべて」に詳述しているので、そちらを参照願いたい。以下、今回の改良点について見ていこう。 今回、施された改良は1.6ℓエンジンの燃料噴射制御。実用燃費改善のための見直しが行なわれている。 FA20型 2.0ℓ水平対向4気筒ターボエンジン
排気量…1998cc 種類・気筒数…水平対向4気筒・縦置き 弁機構…DOHC 16バルブ 可変バルブタイミング 直噴ターボ ボア×ストローク…86.0mm×86.0mm 圧縮比…10.6 最高出力…221kW[300ps]/5600rpm 最大トルク…400Nm[40.8kgm]/2000rpm-4800rpm 使用燃料…プレミアム 燃料タンク容量…60ℓ
WRX S4と同じ300psを発揮

FB16型の圧縮比が高いのは既述の通りだが、高圧縮比化には常に、ノッキングのリスクが付きまとう。ノッキングが発生しやすいのは、主に低速中負荷より上の領域だ。 ノッキングとは、スパークプラグで点火した火焔が燃え広がらないうちに、燃焼室の端の方で自己着火が起きる現象のこと。火焔伝播燃焼に比べて燃焼速度が速く、高速の圧力波を生じる。 正常な燃焼が行なわれている際は、燃焼室壁の表面は、層流底層という一種の断熱層に覆われているが、ノッキングの圧力波はこれを突き破り、燃焼熱を直接、金属面に伝えてしまう。 すると、鋳鉄のシリンダー壁面より融点の低いアルミでつくったピストンが熔損し、焼きつきやピストンの吹き抜けを発生させてしまう。 これを防ぐために、ノック音を検出するノックセンサーを取り付け、ノッキングを検知した瞬間に、点火時期を遅らせて燃焼温度を下げるという対策が行なわれるが、もうひとつ行なわれているのが、リッチ空燃比の利用。 これはノックを検知してから行なうのではなく、噴射率制御マップに最初から入れておき、保険的に行なわれるものだ。 ガソリンは空気との質量比が1対14.7の時に、燃え残りも酸素も残らない完全燃焼になる(これを理論空燃比=ストイキオメトリーという)。完全燃焼だから発熱量も大きく、効率が良い代わりに、ノッキングが生じる可能性も高まる。 そこで、燃料噴射量を増量すれば、燃えないぶんの燃料が気化したり、熱解離する際に熱を奪い、燃焼温度が低下してノッキングを抑えることができる。 FB16型も、中負荷以上では徐々に空燃比を濃くしていたが、今回はこの制御を見直し。欧州仕様(オクタン価95)の制御マップをつくった際のノウハウを日本仕様(同90)へ投入したとのことだ。 モード燃費は変わっていないが、JC08モードの走行パターンは負荷率が小さく、リッチ領域には入らないから、数値には現れない。実走行では、起伏の多い高速道路を走行したり、峠道の登りでメリハリの良い加減速を行なうような走り方をした場合に、効果が現れるそうだ。 トランスミッションは、全グレードにチェーン式CVTの“リニアトロニック”を搭載。1.6ℓと2.0ℓでは最大トルクが異なるため、 別ユニットが使われている。 SI-DRIVE(2モード)

SI-DRIVE(3モード)

いずれもハードウェアに変更はないが、1.6ℓ用のユニットは制御を刷新。 CVTというと、エンジン回転数と加速度が比例しない「ラバーバンド感」が生じがちだが、アクセル開度がある程度大きくなると、有段ATのようにステップ的にプーリー比を切り替える“オートステップ変速”制御を導入した(2.0ℓ用には、当初から導入済み)。 1.6ℓ車のオートステップ変速の採用


駆動方式は、全グレード4WD(スバルはAWDという呼称にこだわっている)だが、エンジン排気量ごとにシステムは異なる。 1.6ℓモデルは、機械式センターデフを持たない電子制御多板クラッチ式を採用。 多板クラッチの圧着力制御によって、前後トルク配分を100対0から直結までの間でオンデマンドに変化させている。 2.0ℓモデルには、複列プラネタリーギヤ式のセンターデフと、多板クラッチ式の差動制限装置を組み合わせたVTD(バリアブル トルク ディストリビューション)システムを採用。センターデフのトルク配分比は45対55で固定されており、必要に応じて多板クラッチの圧着率を変え、差動制限を行なう。 ふたつの4WDシステム


スバル・レヴォーグのシャシー
■ 前後サスはチューニング変更電動パワステは操作性を向上 リヤ

① ダンパー ・リバウンドストロークを延長(+8mm) ・減衰力最適化 ② コイル(※「1.6GT」「1.6GT-S」のみ) ・バンプストローク延長(+8mm) ・バネ定数ダウン ③ スタビライザー ・直径ダウン(φ20→φ18)→路面-タイヤの追従性改善
フロント

① ストラット ・リバウンドストロークを延長(+5mm) ・減衰力最適化 ② コイル(※「1.6GT」「1.6GT-S」のみ。) ・バンプストローク延長(+8㎜) ・バネ定数ダウン ③ アームブッシュ ・ピロボールをゴムブッシュ化→ハーシュネス改善
電動パワーステアリングの操舵フィーリング改善

今回のマイナーチェンジの大きなテーマは「動的質感の向上と乗り味の熟成」。シャシー系はチューニングを全面的に見直しているだけでなく、ステアリングシステムにも改良が加えられている。 サスペンションの基本構造に変更はなく、フロントはストラット式、リヤはダブルウイッシュボーン式を継続採用する。 チューニングレベルは4種類あり、「1.6GT」がKYB製ダンパーで、「1.6GT−S」と「2.0GT−S」がビルシュタイン製倒立ダンパーを採用する。 「STIスポーツ」は全グレードがビルシュタイン製で、フロントにはダンプマティックⅡシステムを採用している(詳細は本シリーズ第536弾「レヴォーグSTIスポーツのすべて」を参照)。 これだけでは3種類だが、今回は「1.6GT」と「1.6GT-S」の車高を10mmアップした。その結果、①KYBダンパー+車高アップ(1.6GT)、②ビルシュタインの車高アップ版(1.6GT-S)、③ビルシュタインのノーマル車高(2.0GT-S)、④ビルシュタイン+ダンプマティックⅡ(STIスポーツ)の4種類となる。 「1.6GT」及び「1.6GT-S」の車高を上げたのは、バンプストロークを増やして凹凸吸収能力を高めるため。それだけではリバウンドストロークが不足するので、ダンパーのリバウンドストロークをフロントで5mm、リヤで8mm延長している。 また、「1.6GT」と「1.6GT-S」のコイルスプリングは、前後ともバンプストロークを8mm延長。バネ定数は従来よりもソフトにし、それに合わせて減衰力も再チューニング。乗り心地を向上することで、より多くのユーザーに受け入れやすいキャラクターを明確化した。 それ以外のグレードでも、車両姿勢変化を許容しつつ、ロードホールディングと乗り心地を高める改良が実施された。 前後ダンパーのリバウンドストローク延長と、リヤスタビライザーの小径化(旧φ20mm→新φ18mm)は、全グレードに適用される。「GT」系はフロントのロワアーム後側ブッシュをピロボールからゴムブッシュとし、ハーシュネスを改善し ているのだ。 ステアリングシステムの形式は、ピニオンアシスト式の電動パワーステアリングと従来から変わりはないが、アシストモーターとECUを別々に配置していた従来型に対して、モーターユニットにECUを内蔵した“機電一体式”を採用。ギヤボックスまわりも新設計して、操舵感の向上を図った。 ギヤボックスは、ラックのスリーブの構造を変更し、ガタを詰めながらフリクションを低減。静摩擦と動摩擦の差を小さくすることで、切り始めの滑らかさの向上を図った。 また、機電一体化することで、モーターのトルクリップル(波打ち)特性と制御のキャリブレーションを部品単位でできるようになり、トルクリップルに起因する微少なトルク変動を打ち消す制御が可能になった。 アシスト特性も見直されており、今回から戻り方向の制御も追加。セルフアライニングトルクによる自然なリターナリビリティが得られる制御をつくり込んだ。
スバル・レヴォーグの安全技術
■ 安全技術が大きく進化。死角を減らす装備を設定。 今回のマイナーチェンジの柱のひとつが、「先進安全技術のさらなる進化」。キーワードは「見る」ということ。 安全運転の出発点は、ドライバーに十分な視覚情報を与えること。直接視界が良いのはスバル車共通の美点だが、今回は、“夜間”と“後方”の視界改善にも取り組んだ。 まず、ステアリングレスポンシブヘッドライト(SRH)。いわゆるアダプティブヘッドランプのことで、車速と操舵角からクルマの進行方向を予測し、ヘッドランプの光軸を進行方向に動かす。 システムとしては“スイブル式”に属し、灯体そのものを、電動アクチュエーターで左右に動かす。最大作動角は、車両の外側に18度、内側に5度。旋回内側のライトをより多く動かし、外側のライトはその半分程度の角度で制御する。単にイン側を明るく照らすだけでなく、コーナー全体を把握しやすくする配慮だ。 ヘッドランプの光源には、LEDを使用。片側1個のLEDとレンズで、ハイとローの両方を賄う“バイファンクション”仕様だ。ロービーム時には、遠方に飛ぶ光をカットするシェードを降ろし、ハイビーム時にはそれを上げてフル照射する。 前方の明るさや対向車/先行車を専用のカメラで捉え、適宜ロー/ハイを切り替えるハイビームアシスト機能も用意されるが、それは“アイサイトセイフティプラス”にパッケージオプションとなっている。 ハイビームアシスタント

後方については、スマートリヤビューミラー(SRVM)を新設定。ルームミラーの全面に液晶ディスプレイを組み込み、リヤゲートガラスの上部に取り付けられたカメラの映像を映し出す。カメラは後退アシスト用の広角カメラとは別に、専用のものが用意されている。 スマートリヤビューミラー

スバルリヤビークルディテクション

鏡面はハーフミラーになっており、SRVMオフ時には、通常の光学式ミラーとして使用が可能。防眩ミラー用のレバーを操作すると、SRVMがオンになり、ディスプレイの映像がハーフミラーを透過して見えるようになる。 ミラーの位置調整は通常のミラー同様で、まずSRVMがオフ状態で行なう。そうすることでSRVMオン時にも不要な乱反射を抑えた角度に設定ができる。 光学式ミラーでは、後席に人が乗っていたり、ラゲッジに荷物が満載されていたりすると視野が遮られてしまうが、SRVMならば心配は無用。視野角もリヤゲートガラスの大きさに左右されないため、より近いところまで見ることができる。 SRVM作動中は、いわばテレビ画面のようなものなので、アイポイントの位置に関わらず、どこからでも同じ映像を見ることができる。すなわち、助手席や後席の乗員からでも後方を確認できる、ということだ。 フロント&サイドビューモニター

▼ 既存のSDビューカメラの画像と合わせて広範囲を見える化できる。


ニューモデル速報 Vol.555 新型レヴォーグのすべて 1.6L/2.0L直噴ターボとリニアトロニック、4WDを組み合わせたパワートレーン、そしてWRXと兄弟関係にある、鍛えられた基本骨格とサスペンションを備えるレヴォーグ。17年7月に実施されたマイナーチェンジで、全車が標準装備するアイサイトは新たにツーリングアシストが加わり、足まわりやパワーステアリング制御、エンジン特性を最適化するだけでなく、遮音性の向上も実現。エクステリア/インテリアのブラッシュアップも実施するなど、そのきめ細やかな進化の全貌を解説した1冊です。
