S耐レース車両OHLINS CIVIC NATSのフロントブレーキはFRN6 FORGED RACING CALIPER 6Pistonsと380mmローターの組み合わせ。パッドを含め、いずれもレーススペックにはなっていて、前者はパッド厚が25mm仕様、後者もディスク摺動面幅が広いタイプだが、基本設計は市販品と変わらない。

FRN6 FORGED RACING CALIPER 6PistonsはイギリスのALCON社とのコラボレーションモデルで、アルミ合金鍛造軽量6POTキャリパー。市販品は全長300mm×全幅173mm×全高80mmで、ピストン径は30.2mm/34.9mm/38.1mm。ローターは355mm、370mm、390mmが選べるが、すべて、フローティングディスク構造にベディング(焼き入れ)済みの2ピース。そのほか、ブラケット、パッド(TYPE PS)、テフロンブレーキライン、ボルト類一式がセットで税込み87万7800円~(税別79万8000円~)。

リアは純正キャリパーと350mm×11mmの大径ローターの組み合わせ。ディスクはプレーン。ブラケットは赤に塗装されている。市販ローターは片面8本、両面16本のスリッド入りで、予価は税込み19万5800円(税別17万8000円 ブラケット付属)となる。ちなみに、レースカーもパッドは市販品だ。

FL5用はこちらの370mm×34mmのローターとのセットで、税込み87万7800円(税別79万8000円)。ローター径を370mmとすることで、18インチのタイヤ&ホイールを選択できるようにしている。

温度上昇時の効きやリアとのバランスを克服


とはいえ、S耐車両のブレーキは、ひと筋縄ではいかなかった。広報の森一与利さんに話を伺う。

「フロントをビッグキャリパーと大径ローターに換えても温度は上がる。そこで効きが上がってしまうと、リアがリフトして制御が入る。冷却ダクトとパッドで対策していきました。

リアはバランス的に効きを上げられない。よって、効かせたくないのですが、24時間レース対策としてローターを大きくしました。効かない方向のパッドを用いて調整。結果、フロントを助けて、ライフを長く保つことができるようになりました」という。

もっとも、レースカーと市販車は違い、市販車にはそれ用のアレンジが必要だ。

「純正のフロントローターはクラックが入りやすく、制御の介入を抑えるのにも、キャリパー&ローターの交換は有効に働きます。もちろん、パッドの選択が重要ですが、弊社では、普段乗りで支障がなく、サーキットに行って、走って、帰ってくるという用途を満たす推奨のメニューを用意しています。

S耐でのノウハウの蓄積により構築できたものですが、タイヤはもちろん、走るサーキットやクルマによって決め打ちはできないので、まずは相談いただくようにしています」と森さん。同社のフロントキャリパー&ローター、リアローターというパッケージを前提に、パッドの選択など、それぞれに適したセットをアドバイスいただけるはず。

OHLINS CIVIC NATS ドライバーのブレーキ評

スーパー耐久で、ともに歩んできて、3年目を迎えている3名のドライバーにも話を伺った。改めてFL5シビックタイプRのブレーキ開発の難しさを知ることができるだろう。

山野哲也

「ハイパワーのFFということで、もともとレースカーには向いていない。しかも、ダブルウイッシュボーンなどならともかく、ストラットのフロントはちょっと役不足。タイヤと路面のコンタクトが強いクルマなら強いブレーキが使えるのですが、それが使えない。それを前提として開発は始まりました。

最初の頃はブレーキ以外の要因もあり、富士スピードウェイの1コーナーなどでは、ブレーキングでスネーキングが出てしまい、90°ぐらいのカウンターステアを当てることもありました。

そこから、わがままをいって今日に至り、だいぶ合わせ込んでいただいています。最適解のキャリパー、ローター、パッドを探し当てた印象で、大きな不安はありません。キャンバーが5°くらいついているにも関わらず、タイヤの接地はまずまず。強いブレーキを踏めるようになりました。また、制動が安定して、ドライビングに自信が持て、奥まで突っ込めるようになっています。

僕の好みですが、パッドは初期のバイトが強いものにしていただいています。初期の制動に高い精度を求め、リリース時のコントロール性の高さにつなげています。足が乗った瞬間から強い制動が出るブレーキシステムとそこに存在する剛性感。速く走るためには、最大の効きが瞬時に出てほしく、いちばん速度が出ているときに最も落としたいのですが、それができています。

タイヤの接地面変化を出さないように前後のバランスを整えるのは難しかった。バランスは配分だけではなく、効き始めるまでの時間が前後で違うと、ドライバーは怖いのですが、4つのタイヤにできるだけ同時にブレーキが掛かるように部材をそろえていきました」

金井亮忠

「1年目はいろんな摩材をテスト。後半からまとまってきました。2025年の富士24時間レースもリアのこのローターは使っていて、それ以来、ずっとこのパッケージになっています。

周回を重ねると、タッチは少し軟らかくなりますが、そこからの変化は少ない。前後のバランスもいい感じです。軽く踏むとリアから効き始めるので、決勝ではそれを利用して向きを変え、タイヤをいたわって走っています。耐久性もよくて、24時間レースでもリアパッドは1回交換のみです」

野島俊哉

「最初から比較的タッチなどに不満はありませんでした。ロングのときも熱による性能の低下が極端に出ることはなく、安心して踏める印象です。高熱になって、ストロークが増えて、止まらなくなるという現象もありません。富士スピードウェイの1コーナーなどでは、リアが助けてくれている感じがあります」


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