派手だけど、じつは“モトコンポらしさ”を大切にした一台


ベースとなったホンダ・モトコンポは、1981年にホンダ・シティ搭載用として登場したトランクバイク。全長1185mm、乾燥重量42kgという小さな車体に、49cc空冷2ストロークエンジンを搭載。折りたたみ式ハンドルやステップ、液漏れ防止機構など、クルマに積むことを前提にした専用設計が与えられていた。新車当時の価格は8万円。いま見ても唯一無二の存在である。ちなみに2026年7月現在の中古相場を独自に調べたところ、30万円以下の個体は見つけられかった。希少価値の高いモデルだと言えるだろう。

そんなモトコンポをベースに、馬ちゃんさんが仕上げたのがこの一台。外装は、漫画/アニメ『干物妹!うまるちゃんR』をモチーフにしたフルラッピング。知らない人には“ポップなキャラクターラッピング”として映り、知っている人には一発で刺さる仕様だ。ご覧の通り外観は派手だが、カスタムの方向性は意外にもノーマル尊重。エンジン、キャブレター、駆動系、ハンドル、レバー、メーター、フロントフォークなどは基本的にノーマルをキープしている。
目につくチューニングパーツは、ナッティーワークス製のカウル類とチャンバー(マフラー)あたり。アンダーカウルを含む外装パーツはナッティーワークス製で、協力ショップはナッティーワークスとサブアーム。フルラッピングで大きくイメージを変えながらも、モトコンポ本来の四角いシルエットやコンパクトさはしっかり残しているのがポイントだ。

反対側から見ると、ラッピングの表情も大きく変わる。モトコンポの四角いボディは、グラフィックを見せるキャンバスとしても相性抜群だ。
見えない部分にもチタンパーツを投入
このマシンの本当の見どころは、派手なラッピングの奥にある。ボルトやアクスルシャフト、オイルタンクキャップ、フェンダーボルト、ブレーキアジャスター、各部キャップやボルト類までチタン製パーツを投入。小さなモトコンポに、そこまでやる!? と言いたくなるほど細部が贅沢なのだ。
しかも、チタン製アクスルシャフトに至っては、オーナーの職業柄レース用マシンレベルの品質。まさに「ボルトだけでMotoGP仕様」という表現がぴったりだ。見た目だけを派手にするのではなく、普通なら見逃してしまうようなパーツにまで手を入れているところに、このカスタムの深さがある。
さらに、キャブレターの調整ノブなど、もともとは樹脂製だったプラパーツも自作のステンレス製に置き換え。こういう細かい金属パーツの置き換えは、写真で見ても“知っている人だけが気づく”タイプのカスタム。だからこそ、近くで見れば見るほど感心するのだ。

フロント周りにもチタン製パーツを投入。アクスルシャフトをはじめ、ボルトやアジャスターの焼け色が存在感を放つ。

ホーンスイッチボタンもチタン製! cfポッシュ製ハンドルグリップはホイールと色を合わせている。
エンジンはノーマル、でも“乗って楽しむ”ための味付けはしっかり

エンジン本体はノーマルで、プラグはNGKの4番を使用。マフラーはナッティーワークス製チャンバーを装着する。見た目のインパクトに対して、走りの部分は大きく崩さず、モトコンポ本来の扱いやすさを残しているのがこの車両らしいところだ。
タイヤは、ホンダ・ズーク純正採用のIRC製8インチタイヤを前後に装着。蛍光色に塗られたホイールと相まって、ポップなラッピングとの相性もグッド。小さくてかわいい、普段から近所へ気軽に乗っていける。オーナーが80Sスクーターの魅力として挙げるその感覚を、きちんと残した仕上がりになっている。
大きく速くするのではなく、モトコンポらしさを残したまま、見た目と細部で遊び尽くす。フルラッピング、チタンパーツ、ステンレス小物、ナッティーワークス製チャンバー。その全部が合わさって、馬ちゃんさんらしい一台になっているのだ。

チャンバーはナッティーワークス製。外装のポップさに対して、黒いサイレンサーと焼け色の入ったエキパイがメカっぽさを引き立てる。
※この記事は月刊モトチャンプ2021年3月号を基に加筆修正を行っています
【モトチャンプ編集部】