クルマの挙動を決めるのは
じつは「舵角スピード」

コーナリングでのハンドル操作において、舵角が多い、少ない、と舵角量にこだわる人は多いです。しかし、ハンドルを切る、戻すスピード(以下、舵角スピードと呼びます)を意識している人は少ないと思います。

クルマの挙動は舵角量よりも舵角スピードによって変わるので、極めて重要です。今回はこの舵角スピードについて深掘りします。

巷でいわれる舵角一定は
正解のドラテクではない

『コーナーは舵角を少なく曲がるべき』は間違い!? レブスピードR会 ドラテクの「傾向と対策」セレクション

その昔のドラテク教材には、「コーナー手前でブレーキは終了。コーナリング中は舵角一定、アクセルはパーシャルで安定させる」なんていうセオリーがあった。しかし、クルマもタイヤも進化した。クリップ手前で舵角を増やして、すぐ戻すがいまの正解だ。 Photo/奥隅圭之 Text/梅田 剛 本記事はレブスピード 2020年10月号からの抜粋です。

スポーツドライビングの基本として昔から巷でいわれてきた『舵角一定』にするには、コーナーリングの初期で舵角を決める(姿勢を決める)必要があり、そのため、切り始めの舵角スピードを速くする必要があります。

この舵角一定コーナリングは旧いドライビングスタイルであり、最近のクルマやタイヤの性能を引き出す走らせ方ではありません。いまのトレンドは舵角量がクリップで最大になるように、クリップまで少しずつ増え、クリップ以降で少しずつ減っていく走り方です。

ポイントその①
高速域ではゆっくり 低速域では速く操作する

日常運転でも誰もが無意識に行っていると思いますが、高速域では舵角スピードはゆっくりで、低速域では速くなるものです。

これはスポーツ走行ではより顕著になり、鈴鹿サーキットの130Rなどの高速コーナーとなると、かなりゆっくり切る必要があります。

そのため、舵角スピードも大切ですが、コーナーの手前から早めに徐々に切り始める、ハンドル操作のタイミングも重要です。低速域で速く切ることは簡単ですので、高速域の舵角スピードに着目するのが、上達のヒントになります。

ポイントその②
ブレーキをしながらではハンドル操作はゆっくりに

ブレーキングしながら、つまり前荷重が強いときは舵角スピードはゆっくりにしなければなりません。この状態では少しのハンドル操作で、挙動が大きく変化するからです。強い前荷重状態ではオーバーステアが出やすいと勘違いされやすいですが、意外とアンダーステアに転じることも多いです。

ポイントその③
クリップ付近になるにつれ舵角スピードは速くする

クリップに近づくにつれて車速が落ちて、最低速度を迎えるはずです。またクリップ直前ではアクセルもブレーキも踏んでいないパーシャル荷重に近い状況かと思います。

この状況であれば舵角スピードが速くても挙動が暴れにくく、速く切り込むことでクルマの鼻先を出口に向けることができます。逆にいえば、速く切る必要があるともいえます。

ポイントその④
ハンドルを戻す速度も盲点となりがち

意外と盲点なのが『戻し側』の舵角スピードです。切る操作と逆でクリップ以降は早く戻し、立ち上がって直線に近づくにつれてゆっくり戻すのが理想です。

切る操作は能動的で、戻す操作は受動的です。つまり戻す操作が上手くできないのは、戻すことに問題があるのではなく、それ以外に問題があります。たとえばクリップ以降で速く戻せないとすれば、向きの変え方(変えた量)が足りていないなどが考えられます。

ポイントその⑤
加速するように切り 減速するように戻せ

舵角スピードのコツをまとめると、切り始めはゆっくり、クリップでは速く、戻し終わりはゆっくり、となります。

私は以前に某先輩ドライバーから「ハンドルは加速するように切り、減速するように戻せ」と習ったことがあります。まさに上記の舵角スピードのことと同じですね。

ポイントその⑥
カウンターステアでの操作スピードは速く行う

いままでの話はいずれかというと、「ゆっくり操作をすべし」という話ですが、カウンターステアの場合は逆に速く操作するのが望ましいです。

挙動が小さいうちにカウンターステアで修正できれば、小さなハンドル修正量で済み、タイムロスが少ないです。これには訓練が必要で、広場トレーニングなどでの練習が最適です。

ポイントその⑦
ギア比によって異なるハンドル操作スピード

クルマによってステアリングギア比は異なりますし、ハンドリング特性もさまざまです。そのため、決まった舵角量やスピードの操作をするのではなく、車種にアジャストさせる適応力が重要です。とくに切り始めと戻し終わりの「舵角スピードがゆっくりの状況」でクルマによる差が出やすいです。

ポイントその⑧
路面やタイヤの状況により操作スピードは異なる

一概にはいえませんが、オーバーステアが出やすいときは舵角スピードをゆっくりに、アンダーステアが出やすいときは速くしてやることも対処法として使えます。タイヤの消耗やコーナーによってもハンドリング特性は変わります。臨機応変に対応することが大切です。

普段の街乗りから
舵角スピードを意識する

「速い人」は街乗りから違う! タイムアップの秘訣は日頃の運転の意識にあり レブスピードR会 ドラテクの「傾向と対策」

レブスピードのドラテク通信添削『R会』受講者から送られてきた車載映像をチェックしている梅田 剛講師は、必要な基本操作は日常の運転で習得しておくべきと力説する。 Text/梅田 剛 本記事はレブスピード 2020年12月号からの再掲です。

このコラムで過去にもお伝えしている「ドライビングは街乗りから意識するべし」ですが、今回のテーマも同じことがいえます。

日常から意識して練習していないと、本番であるサーキットでの実践は難しいものです。R会添削受講者の多くの方でも、舵角の始まりと終わりで速く、クリップでは遅い(舵角一定に近い)パターンが多いのです。

この症状を治す最初のステップとしては「初期の舵角スピードをゆっくりする」ことがポイント。初期の舵角スピードをゆっくりさせると曲がりきれないと心配する受講者が多いですが、ほとんどの場合は切り遅れで急ハンドルのパターンです。

そのため、早めから舵角を始めるように心掛けてください。次のポイントとしてはクリップ付近での舵角スピードを上げることです。

この操作で、クルマの向きがスッと変わり、脱出に向けてスムーズに舵角が戻せるようになるはず。これを身体に染みつけるためにも街乗りからの練習が大切なのです。


講師
梅田 剛

R会受講者から送られてきた車載映像を添削のためにチェックすると、直線でブレーキを終えたら、急ハンドルを切り、コーナー中は舵角一定のパターンが多かったという。