Volvo EX90 Ultra Twin Motor Performance

PHEVからの乗り換えを狙って

ボルボ EX90 ウルトラツインモーターパフォーマンス
ボルボ EX90 ウルトラツインモーターパフォーマンス

来年100周年を迎えるボルボの新型モデル、3列7人乗りフル電動SUV「EX90」に試乗した。2030年までに新車販売100%BEV化を目指すなど一時電動化に大きく傾いていたが、2024年にBEVとPHEVのシェアを2030年までに90〜100%にするという現実的目標にあらためた。しかしコンパクトSUV「EX30」を世界に先んじる形で本邦デビューさせたように、BEVが伸び悩む日本市場においても積極的姿勢は変わらない。

その攻勢の甲斐あってか、現状ボルボが販売する5台に1台はBEVが占め、プレミアムEVセグメントにおけるシェアは、巨人テスラに次ぐ2位の座を得ているという。とはいえ、ICE(内燃機関)を搭載したPHEVモデルも途切れることなく販売中だ。フル電動モデルのEX90を出すからと従来のフラグシップSUVである「XC90」が生産終了するわけではないとプレゼンテーションで改めて念押しされた。

EX90は、そのXC90のPHEVモデルからの乗り換えを狙ったフル電動SUVである。全長5035mm、全幅1965mm、全高1740mm、ホイールベース2985mmという堂々たるボディサイズはXC90よりも80mm長く、5mm幅広く、35mm低く、ホイールベースは同値だ。まあ分母を考えれば誤差だろう。ただし車重は106kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載するBEVということで、2710kg(ウルトラツインモーター)とXC90(PHEV=2340kg)より400kg近くも重い。

ちなみにフル電動3列シートSUVで言えば「テスラ モデルY L」も有力な選択肢だが、あちらは全長4980mm、全幅1920mm、全高1670mmとやや小さい。しかし、車両重量は2090kgと圧倒的に軽量なのが興味深い。だが、今回の主題はEX90の乗り味なので、このあたりの比較は別途検証したい。

スーパースポーツ的スペックを備えて

ボルボ EX90 ウルトラツインモーターパフォーマンス
ボルボ EX90 ウルトラツインモーターパフォーマンス

プラットフォームは800Vに対応するSPA2(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャ2)を採用。刷新されたコアコンピューターを搭載し、SDVを名乗るに相応しい中枢を得たという。100以上あった車載コンピューターは、フギンコアと呼ばれるコアコンピュータに集約される。254兆回/秒の演算処理能力を持つNVIDIA「オーリン」を採用したのは、SDVに対応するためだけでなく、高度なADASや将来的な自動運転を見据えて増え続けるセンサー類のデータを処理する必要があるのと、今後革新的アップデートが導入されてもOTAなどで素早く対応できるように、ある程度オーバースペックな性能とするためという。

駆動方式は前後2モーターのAWDで、装備と出力違いの3グレード用意される。エントリーの「プラスツインモーター」、中間の「ウルトラツインモーター」、最上位の「ウルトラツインモーターパフォーマンス」の3種のうち、今回は最高グレードに試乗した。外観上のグレードの差は少なく、関係者によればパッと見は20、21、22インチと序列が明確なアルミホイールくらいだという。

ウルトラツインモーター以上のグレードは、最高出力220kW(299PS)、最大トルク390Nmのフロントモーターと280kW(381PS)、480Nmのリヤモーターを組み合わせて、システム最高出力500kW(680PS)、同最大トルク870Nmというスーパースポーツ的スペックを持ち、重量級ながら0-100km/h加速4.2秒の俊足を誇る。基本的に駆動はリヤモーターで行うが、後述するドライビングモードを選択すれば常時AWDも可能で、さらに高速走行時はFWDになるなど、必要に応じて変化するという。

駆動バッテリーの電力量は前述のとおり106kWhで航続距離(WLTC)650km、つまり6.1km/kWhとなる。これは前述のモデルY L(80kWh※非公表、788km)と比べるとやや控えめだ。充電は11kWのAC普通充電と350kWのDC急速充電に対応(CHAdeMOの充電出力は112kWまで)するという。日本ではまだ350kW器はほとんどないが、東名高速の海老名SA(上りのみ。なお下りは冬完成予定)で今夏完成予定だ。

ミニマルな外観のおかげで

東京・青山のVolvo Studio Tokyo近くの銀杏並木にて。
東京・青山のVolvo Studio Tokyo近くの銀杏並木にて。

今回の試乗会は東京・青山のVolvo Studio Tokyoから日光・中禅寺湖を目指す400km超のツーリング形式だ。東京から東北自動車道を北上し、日光宇都宮道路から中禅寺湖を経由して、関越自動車道を南下する。翌日の試乗会の洗車作業や準備を踏まえて、門限は18時に設定された。

ひと通りの技術説明を終えるともう10時だ。急いで地下駐車場に行くと、そこにはフル充電済みのEX90がスタンバイしていた。駐車場で見ると小さくはないがミニマルな外観もあって、5m超のSUVとしての圧は低めだ。全体的にスッキリしているが、もっとも印象的なのはフロントマスクで、グリルを持たないシールドフェイスを綺麗に見せるためにセンサー類は可能な限り隠されている。ライト点灯時に可変するトールハンマー型ヘッドライトのアイデアも面白い。

今回は試せなかったが、スマホに公式専用アプリを入れて車両を登録すれば鍵として使用できるという。近づけばロックが解除され、イグニションをオンにすることなく、ブレーキを踏んでDレンジに入れればすぐに走り出せる。なおアプリで乗車した場合、シートポジションなども記憶されるからオーナーならば間違いなく使用したい機能だ。

北欧的雰囲気に満ちた静謐な室内

ボルボらしい北欧的雰囲気に満ちたインテリア。
ボルボらしい北欧的雰囲気に満ちたインテリア。

乗り込んでドアを閉める際、勢いよく閉める必要はない。軽く閉めるだけで電動ソフトクロージャーがドアをロックしてくれる。意外だがボルボ初だそうだ。ちなみにステアリング調整のチルトとテレスコも同じくボルボ初の電動調整式となっている。

静謐な室内はボルボに期待される北欧的雰囲気に満ちていた。ダッシュボードや前後ドアパネルにウッドデコと呼ばれるアンビエントライトを備え、冬のスカンジナビアの家から漏れる温かみのある光を想起させる。日本で言えば障子風だ。室内のLEDライトはすべて太陽光に近い自然な光スペクトルが採用されるというが、このへんのこだわりがボルボっぽい。そんなボルボがウッドやレザーやウールなど天然素材を使用していると「けしからん」という声も聞こえてきそうだが、トレーサビリティの認証を受けたもので素材警察対策(?)も完璧だという。

センターには縦型の14.5インチタッチスクリーンが備わる。ユーザーインターフェースは、よく練れており、初見でも戸惑うことはなかった。中でもコンテクスチュアルバーと呼ばれるエリアには、例えば駐車場に入ると360度カメラ映像ボタンが表示されたり、車速や道路状況に応じて内容が「今これいるでしょ?」とばかりに自動的に表示され、この辺のUXがおぼつかないメーカーはぜひ参考にしてほしい。インフォテイメントはグーグルベースで5G対応だ。ボルボは市販車の車載OSにグーグルを導入した最初のメーカーであるが、年内にはジェミニも装備されるそうで、より自然な会話の中で音声コマンドが実現できるという。

オーディオは標準グレードでBOSEプレミアムサウンド・オーディオシステムを、ウルトラ以上でBowers & Wilkins ハイフィディリティ・オーディオシステムを採用する。自慢のドルビーアトモスやアビーロードスタジオモードはせっかくのデモモードを試すことなく、道中ラジオに終始してしまったのが悔やまれる。

レベル2.5と言って良いACCの完成度

出発時点の走行可能距離は490km。
出発時点の走行可能距離は490km。

セレクタレバーはメルセデス・ベンツなどでよく見るステアリングコラムのレバーとなる。下げてDレンジという一般的な動作で、これはACCのスイッチも兼ねている。出発時点のバッテリー残量100%でディスプレイの走行可能距離は490kmと表示されたので、これなら途中充電せずとも帰れると安心した。

首都高に乗ってすぐにACCを起動すると、ボルボらしい安心感が立ち上がった。カメラとレーダーが前方にいる車両種類(トラック、バイクなど)を認識して、9インチメーターディスプレイに表示する。こういった車両と人間のコミュニケーションは大切だ。車両のセンサー精度がわかると予想外の挙動が少なく安心感が高まる。ACCの完成度はレベル2.5と言って良いほど高く、レベル2と3を行ったり来たりするような条件付き自動運転よりも有用だ。電気駆動故の車速の制御の緻密さもあって素晴らしい。XC90比4倍のサイズで投影するというヘッドアップディスプレイが備わり、視界面でも安全性の高さを感じる。

ドライバーがステアリングを握っているか判定するセンサーは、静電容量式になったのでトルク感応型よりも誤判定が減るだろう。パイロットアシストと呼ばれる車線維持支援機能も進化しており、自動的にステアリングを操作して車線中央に維持維持してくれる。地図データと連動して、コーナーの手前で自動的に減速したり、トラックを追い越す場合にはドライバーが感じるプレッシャーが少なくなるように、20cm多めに避けるという機能まで至れり尽くせりだ。

快適な乗り心地、高い静粛性

ボルボらしい北欧的雰囲気に満ちたインテリア。
ボルボらしい北欧的雰囲気に満ちたインテリア。

回生ブレーキによるBEV的ワンペダルドライブも可能だ。ロー、ハイ、オフ、オートの4段階で設定可能で、今回の行程はほとんどオートで走った。オートでは前走車がいると自動的に回生が強くなり、前走車がいないと回生はほとんどなくなる。速度にもよるが、首都高など60km/hで走るような状況では、前車を認識する車間距離30mほどで回生が強くなる印象だ。これは意図せぬ強い回生ブレーキにつながるので、スムーズな運転をしたいなら、回生が強いことを予期してじわっとアクセルペダルを戻す必要がある。気になるならローかハイに固定にした方がいい。

低速から高速まで乗り心地は良好だ。今回試乗したウルトラツインモーターパフォーマンスは、デュアルチャンバー式エアサスとアクティブサスを標準採用しているが、XC90が採用するシングルチャンバーよりも細かい調整が可能になったといい、エアサスは車速や状況に応じて高速走行中は20mm下がり、オフロードモードでは40mm車高が上がる。

高速走行時の静粛性は高い。スポーティなBEVが備える演出的電気モーターサウンド(?)はインバーターの主張も控えめで、基本的にはタイヤのロードノイズ以外はほとんど聞こえない。設計を見直し、ピラーに発泡充填材を採用したほか、全ウインドウ合わせガラス(ウルトラ以上)、側面の凹凸がないボディ形状、フラッシュサーフェスドアハンドルなどによる風切音の低減が奏功している。静粛性は快適だし疲労軽減にもつながる。

出発から1時間30分で約90km走行し、バッテリー残量は80%とたっぷりあるが、飲み物の補充とトイレ休憩を兼ねて東北自動車道の佐野SAでCHAdeMOの急速充電を試す。まだ余裕のある80%残量でバッテリー負荷が高い急速充電を行うのは気が引けるが、90kW充電器が空いていたので12分だけ充電した。予想以上の約16kWh入り、バッテリー残量はほぼ満充電の96%となった。

堅実に着実に目的地に辿り着く性能

大トルクでワインディングの傾斜をモノともしないEX90。
大トルクでワインディングの傾斜をモノともしないEX90。
ドライビングモードは「スタンダード」「オフロード」「パフォーマンス」「レンジ」の4種。
ドライビングモードは「スタンダード」「オフロード」「パフォーマンス」「レンジ」の4種。

日光宇都宮道路を経てワインディングへ。EX90は、大トルクにモノを言わせていろは坂をスイスイと登っていく。とはいえ、道中は雨が降ったり止んだりの天気のおかげで、この曲がりくねったワインディングもやはり路面はウエット。認証タイヤのピレリ・スコーピオンエレクトだが、さすがに2.7tもあると制動はともかく油断するとコーナーでアンダーステアが顔を出す。そこでドライビングモードをパフォーマンスに変更してみる。するとアダプティブサスペンションは俄然安定感が高まり、AWD主体となったことで加速力も増した。

ドライビングモードはデフォルトの「スタンダード」、悪路での走行に適した「オフロード」、滑りやすい路面で有効な「パフォーマンス」、航続距離を伸ばしたい場合の「レンジ」で都合4種用意される。オフロードモードは40km/hまで作動し、25km/h以下ではデュアルチャンバー式エアサスを装備していれば40mm車高が上がる。パフォーマンスモードでは常時50対50の前後駆動力配分となる。オフロードやパフォーマンスでは電費は下がるだろうが、こういった場面では積極的に選びたい。

その出力から、ハイパフォーマンスSUV的側面を期待するかもしれないが、気持ちのいい走りを標榜する類のクルマではない。EX90は、あくまでも着実に快適に目的地に辿り着くことを至上命題としていると思う。だからステアリングのギア比がスロー(ロックトゥロック3回転)でも、むしろクルマのキャラにあっていると感じた。

目を見張る充実の快適装備

中間地点の中禅寺湖「ZEN RESORT NIKKO」でランチ。
中間地点の中禅寺湖「ZEN RESORT NIKKO」でランチ。

中間地点の中禅寺湖に到着したが、快適な乗り心地、高い静粛性、安楽なマッサージ機能のおかげで疲労感は少ない。もちろん根本的に体圧分散も考慮されたシート設計もある。EX90の快適装備の充実ぶりには目を見張るものがあり、1〜2列目にシートヒーターを備え、1列目にはベンチレーションとリラクゼーション機能、いわゆるマッサージ機能も内蔵する。疲労ではなくむしろ回復の傾向すらあった。全車パノラマガラスルーフを採用し、ウルトラ以上のグレードではエレクトロクロミックを内蔵で透過性を瞬時に変更できる。2列目の爽快感も高そうだ。

身長170cmまで対応するという3列目にも昼食後の短時間座ってみたが、確かに広さは申し分ないと感じた。この3列目にはマイクで声が増幅されて1列目スピーカーに届くインカーコミュニケーション機能が備わるそうで、1列目の声もマイクで拾われて3列目スピーカーから聞こえるという。静粛性の高いBEVでは不要な機能かもしれないが。

なお荷室容量はリヤラゲッジルームが5名乗車で697L(7名乗車:324L)と十分なスペックで、フランクの34Lを含めると2名乗車で最大(天井まで使用時)2135Lに達するという。2列目は手動で、3列目は電動で折りたためる。フランクには三角停止表示板が収まるが、これがもしもリヤラゲッジ床下に収まっていたら、満載状態では一旦荷物を下ろさないと取り出せない。EVならではのフランクの有効な使い方だ。ちなみに従来のボルボEVではボンネットを開けても、フランクの蓋を開ける必要があったが、この新型EX90からフランクの蓋は廃止されたという。

充電場所の改善とマナーの問題

赤城高原SAで150kW充電。150kWなら充電ストレスはかなり減るが……。
赤城高原SAで150kW充電。150kWなら充電ストレスはかなり減るが……。

中間地点の中禅寺湖でランチを済ませて急いで撮影を行う。道中の撮影を考えると東京10時出発で18時門限はなかなかタイトだな……、慣れていればBEVのバッテリー残量ギリギリでゴールしてもいいが、せっかくだから充電も試したい……、などと考えているうちに群馬・片品村まで降ってきた。中禅寺湖で58%だったバッテリー残量は59%まで増えていたが、これは山道の金精峠を回生ブレーキを使いながら300mほどの標高差を30km以上も下ってきたためだ。こういった標高差も加味しているのか、ナビには到着時間とともに予定バッテリー残量も表示されている。

関越自動車道に入り、赤城高原SAで眠気覚ましのコーヒーを飲む。その際に150kW器で充電したところ16分で約20kWhも入った。BEVに不慣れだと、ついつい充電を心配してしまうが、これくらいの短時間で充電できるならBEVツーリングもストレスは少なそうだと感じた。だが、乗れば乗るほど、充電場所の改善(なぜ屋根がないのか)や充電マナーの問題(小バッテリー車をつなぎっぱなし)など解決すべきことがあると気づくことも多い。結局、到着は18時を少し超えてゴールとなった。市街地、都市高速、高速道路を402km走っての電費は20.1kWh/100km、つまり5km/kWhであった。途中SAで28分、約36kWh充電できた。

冒頭にも書いたが、EX90のターゲットカスタマーはXC90のPHEVモデル「XC90 ウルトラ T8 AWD プラグインハイブリッド」からの乗り換えだ。実は現行型XC90で最も売れているのはこのウルトラ T8(1294万円)だが、EX90(1199万〜1399万円)の価格はそこをカバーしている。戦略的価格はBEVの高額イメージを払拭する狙いもあるという。1000万円超の高級車故に補助金は20万円ほどと少ないが、今日のような使い方なら、十分にXC90の代替をこなすことはできるだろう。来年にはミディアムサイズのフル電動SUV「EX60」も日本導入予定だそうで、こちらのプラットフォームはさらに1世代進化するという。走り、快適性、インフォテインメント含むUXなどで、さらに高い完成度が期待できそうだ。

PHOTO/高柳健(Ken TAKAYANAGI)

SPECIFICATIONS

ボルボ EX90 ウルトラ ツインモーター パフォーマンス

ボディサイズ:全長5035 全幅1965 全高1740mm
ホイールベース:2985mm
車両重量:2710kg
電気モータータイプ:非同期電動機(前)/永久磁石同期電動機(後)
最高出力:前220kW(299PS)/後280kW(381PS)
最大トルク:前390Nm(39.8kgm)/後480Nm(48.9kgm)
システム最高出力:500kW(680PS)
システム最大トルク:870Nm(88.7kgm)
バッテリー:リチウムイオン
電力量:106kWh
トランスミッション:1速固定式
駆動方式:電子制御AWD
サスペンション:前ダブルウイッシュボーン 後インテグラルリンク
ブレーキ:ディスクブレーキ
タイヤサイズ:前265/40R22 後295/35R22
最高速度:180km/h(スピードリミッター)
航続距離(WLTC):650km
車両本体価格:1399万円

ボルボ EX90

ボルボが新時代のフラッグシップEV「ES90」「EX90」を日本導入「800VアーキテクチャのSDV」

ボルボ・カー・ジャパンが新型フル電動フラッグシップ2台を一挙に日本導入し、初披露した。今回発表されたクロスオーバー「ES90」とSUV「EX90」という2台のBEVは、800VアーキテクチャとSDVという今どきのキーワードを持っている。