なぜマツダは国内ビジネスを大きく変えるのか?

マツダが日本国内で進めているビジネス構造変革。その背景には、同社が国内事業について抱えてきた強い危機感がある。

マツダは日本を重要な「マザーマーケット」と位置付ける一方、国内ビジネスは長期的に停滞してきた。会社側はその主要因を「新規顧客の継続的減少」と分析。商品主導で成長してきた一方、その後の構造転換が遅れ、新規の他銘柄ユーザーを十分に獲得できなくなったとしている。さらに、全国一律の戦略、ブランド認知の低下、販売現場への支援の遅れなども課題として挙げた。

記者会見に臨んだ、マツダ株式会社 理事 国内ブランドビジネス統括本部長 三浦 忠氏

そこで掲げたのが「すべての起点にお客さまを置く」という考え方だ。
改革の中心となるのは、以下の4つである。

①都市圏重点エリアでの販売網再編、
②新規顧客獲得のためのマーケティング変革、
③ブランド浸透によるリテールオペレーション変革、
④変革を支える組織・人事・風土変革

さらに商品計画だけでなく、中古車、用品、整備・点検、保険なども含めて顧客との接点を広げ、2030年に「20万人に選ばれるブランド」になることを最終目標としている。単純に20万台を販売するという発想ではなく、顧客との関係そのものを強くする戦略といえる。

都市圏へ集中投資、店舗も「クルマを売る場所」から変える

改革のなかでも分かりやすいのが販売網の見直しだ。
2025年度には全国16店舗を改装し、そのうち12店舗を都市圏に集中。2026年度も全国16店舗、うち都市圏11店舗の竣工を予定している。こうした取り組みのなか、首都圏での登録車シェアは0.2ポイント改善したという。
ただし、狙いは店舗をきれいにすることだけではない。

2026年8月にオープンした神戸マツダ西宮171店では、顧客との交流を促す開放的な空間を導入。7月にオープンした関東マツダ深川店には「MAZDA HERITAGE SPACE FUKAGAWA」を設け、販売や整備とは異なるブランド体験を提供する。

今回の記者会見の会場となった関東マツダ 横浜鶴見店は、ブラックと木目調のカラーで全体をまとめ高級感が漂う。開放的で顧客との交流を促進できる空間づくりとなっている。

マツダが掲げるのは「遠くても行きたくなる店舗」であり、店舗そのものをブランドとの交流拠点へ変えようとしている。マーケティングも従来とは異なる。これまではマツダ好きやクルマ好きに対し、「デザイン」「走り」を中心に訴求してきたが、今後はクルマ購入検討層全体へ対象を拡大する。

実際にブランド純粋想起は3ポイント改善、Web来訪は前年比112%、ブランド発信拠点「マツダトランス青山」の来場者は10万人に達したとしている。

マツダトランス青山

販売現場も改革、「54万件の声」を行動基準に

もうひとつ大きな柱が、販売現場の変革だ。
マツダは店舗で提供すべき体験を「ブランドスタンダード」として体系化した。基礎となったのは、マツダが考えるブランドらしさと「54万件のお客様の声」である。

具体的にはセールス5項目、サービス5項目、オーナーシップ3項目の計13項目を設定。これを現場へ定着させる仕組みとして「Mazda Brand Academy(MBA)」を展開している。

一部店舗では成果も出始めた。新規来店客がその日のうちにマツダ車を契約する割合が2025年度第1四半期の7.5%から、2026年度第1四半期には31.0%へ上昇。顧客評価も「親しみやすい」「丁寧」といった評価から、「自分に合う提案が嬉しかった」といった内容へ変化しているという。

改革の成果が新型CX-5に? 購入者は新規他銘柄ユーザーが半数に

新型CX-5

そして、マツダが一連の改革の成果を確認するモデルとして挙げたのが新型CX-5である。
新型CX-5発売後、新規他銘柄からの集客は発売前の約7倍まで増え、その後も約5倍の水準を維持している。

さらに直近週では全世代を合わせた新規他銘柄ユーザーの割合が50%に到達。年代別では20歳代で63%、30歳代42%、40歳代35%、50歳代33%、60歳代24%となっており、特に若い世代ほど新規ユーザー比率が高い。

グレード構成にも特徴がある。最上位グレード「L」が63%を占め、Gの33.4%を大きく上回った。購入理由も外観デザインだけではなく、内装デザインや居住空間、大型ディスプレイなどへ広がっている。マツダは、マーケティングと販売現場の取り組みがかみ合い、顧客が商品を「価値」で選ぶ状態につながっているとみている。

商品力だけで販売を伸ばすのではなく、広告、店舗、人材、接客、アフターサービスまで含めて「マツダを選ぶ理由」を作る――。それが今回の国内ビジネス構造変革の本質である。

新型CX-5で見え始めた変化を一過性のものにせず、2030年の「20万人に選ばれるブランド」につなげられるか。マツダの国内改革は、ここからが本番となりそうだ。

(写真左から)株式会社関東マツダ マツダブランドアカデミー推進グループ長 小西 壮一氏、マツダ株式会社 理事 国内ブランドビジネス統括本部長 三浦 忠氏、マツダ株式会社 国内ブランドコミュニケーション部 主幹 竹下 雅人氏、マツダ株式会社 国内事業戦略企画部長 又平 知也氏