ミニバンは商用車派生から乗用車ベースのミニバンへ

1960年代から1970年代にかけて登場したトヨタの初代「ハイエース(1967年1月~)」、日産自動車の初代「キャラバン(1973年2月~)」、トヨタの初代「タウンエース(1976年10月~)」のような商用車ワゴンから派生した乗用ワンボックス型多人数車が、ミニバンの源流である。


1980年代に入り、アウトドアブームを背景に多人数が楽しめるマルチパーパス・ビークルとして人気を集めたのは、1982年8月に登場した日産自動車「プレーリー」と翌1983年2月デビューの三菱自動車「シャリオ」であり、乗用車ベースのミニバンの先駆車と位置付けられている。

それまでのワンボックスのボクシーなデザインでなく、乗用車に近いシャープなフォルムを採用し、5ナンバーサイズながらプレーリーは6人/7人/8人乗り、シャリオは6人/7人乗りが可能な多彩な3列シートを用意しているのが特徴。両モデルともエンジンを横置きにしたFFベースで4WDも設定し、アウトドアを楽しむ人たちから支持を集めた。
ただし、1980年代後半は高級セダンや高性能スポーツが飛びように売れたバブル絶頂期。現在のような一般のファミリー層が日常的に使うミニバンではなかったので、ブームを作り出すほどの爆発的な人気は得られなかった。
“天才タマゴ”のキャッチコピーで登場したトヨタ初代エスティマ

1990年5月、それまでのミニバンとは異なる新世代ミニバンのトヨタ「エスティマ」が、“天才タマゴ”のキャッチコピーとともにデビューした。

全体を曲面で構成したワンモーションのまさに卵のような斬新なスタイリングと、広い3列シートおよびラウンディッシュなコクピットを配した近未来的なインテリアが大きな注目を集めた。

その斬新なスタイリングを実現したのは、独創的なパワートレーンのレイアウトである。従来のミニバンは、前輪の前にエンジンを搭載するのが一般的だったが、エスティマはセカンドシート下部の床下に、最高出力135ps/最大トルク21.0kgmを発揮する2.4L 直4エンジンを傾斜させて搭載したミッドシップレイアウトが採用された。
トランスミッションは、コラム式4速ATでウォークスルーを可能にした。駆動方式は、ミッドシップの後輪駆動とVCU(ビスカスカップリング)付フルタイム4WDが用意された。
サスペンションは、前がマクファーソンストラット、後ろがダブルウィッシュボーンの4輪独立懸架、ブレーキは前後ともベンチレーテッドディスクが装備された。
エスティマは、販売開始とともにアウトドア派だけでなく一般のファミリー層からも人気を獲得。ただし、3ナンバーの大きなボディに対する市場の抵抗もあったため、1992年には5ナンバーサイズの「エスティマ・ルシーダ/エミーナ」を追加した。また、1994年8月にパワーアップの要望に応えてスーパーチャージャーを装備して160psに出力を向上した新エンジンを追加した。

車両価格は、標準的な仕様で296.5万円(2WD)/324.5万円(4WD)。当時の大卒初任給は17万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約400万円/440万円、これは当時のカローラのトップグレードの2倍に相当する。
背の低い乗用車ライクなミニバンとして人気爆発のホンダ・オデッセイ

「エスティマ」の後を追うように、ホンダは1994年10月に「オデッセイ」を発売。オデッセイは、背の低い乗用車感覚のミニバンとして、ステーションワゴンの背を高くしたような独特なスタイルが特長だった。

1980年代後半から市場を席巻したRVブームに上手く乗れなかったホンダは、独自に“クリエイティブ・ムーバー(生活創造車)”というコンセプトのFFベースの新型モデルの開発に取り組んだ。クリエイティブ・ムーバーは、RVと同じような位置付けだが、具体的には室内空間に優れ、走行中でも停車中でも楽しめるクルマを指す。その第1弾が、ホンダならではの乗用車ライクな走りを重視したミニバン「オデッセイ」だったのだ。
オデッセイは、アコード用のシャシーやエンジンを使ってボディを可能な限り低くし、全高を1650mm程度に抑えた空力に優れたスタイリングで、後席ドアはミニバンの特徴であるスライド式でなく、乗用車感覚を大事にしてあえて乗用車と同じヒンジ式を選択した。
ボディタイプは、2/2/2人の6人乗りと2/3/2人の7人乗りを設定。ボディをできるだけ低目に、さらにフラットフロアとセンターウォークスルー、広い室内空間を確保するため、インホール型のロア・ダブルウィッシュボーンや低床構造が採用された。

パワートレーンは、最高出力145ps/最大トルク20.0kgmを発揮する2.2L 直4 SOHCエンジンと4速ATの組み合わせ。駆動方式はFFベースで、デュアルポンプ式4WDも選べた。
車両価格は、179.5万円/205.5万円/245.5万円の3つのグレードを設定。当時の大卒初任給は19万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約217万円/249万円/297万円に相当する。

従来のミニバンの常識を覆した乗用車ライクなスタイリングと走行性能を持つオデッセイは、1995年には販売台数12万台を超える空前の大ヒットを記録。その後の日本市場を席巻するミニバンブームの火付け役となった。
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「エスティマ」と「オデッセイ」は、従来のワンボックス型の多人数車のイメージを一蹴し、“家族みんなで楽しめて運転も楽しい”という新たな価値のミニバンを開拓し、ミニバン人気を一気に押し上げ、その後のミニバンブームの先駆車という重要な役割を果たしたのだ。





















