派手なエアロもGT-Rルックも不要!
4ドアR34に宿る「羊の皮をかぶった狼」の精神
近年、中古車市場では、まるでGT-Rかと思うほどの高値で取引されているR34系スカイライン。なかでも2ドア・2.5Lターボ・MTのER34(25GT-T)は人気が高く、相場は700万円に達するともいわれる。2.5LターボのMT車であれば、4ドアでもかなりの高値が付く状況だ。

しかし、グレード構成が豊富で、比較的多くの車両が現存しているスカイラインだけに、ベーシックグレードの4ドア・2.0L NA・AT車であるHR34(GT)に目を向ければ、車両価格はぐっと現実的になる。
そんな廉価グレードをベースに、時間をかけてのんびりと理想の姿に仕上げていく。そんなチューニングライフも、また楽しいものかもしれない。

HKS九州サービスがコンプリートカーとして製作を進めたこのスカイラインも、4ドア・2.0L NA・ATのGTグレードがベースだ。もともとは前オーナーが叩き出しフェンダーの製作などを進めていた車両だが、事情により手放すことになり、HKS九州サービスが引き取ってコンプリートカーとして仕上げることになったという。
状態の良いボディを前に、竜円さんが思い描いたのは、第2世代のスカイラインGT-Bや、その次の世代に登場した初期型ハコスカ4ドアGT-Rを象徴する「羊の皮をかぶった狼」というコンセプトだった。
手元にあるRB26や純正補機類を活用すれば、コストを抑えながら魅力的なパッケージのチューニングカーを作れる。そんな狙いがあったのだ。
「今の時代、いかにもヤリます、という雰囲気のチューンドGT-Rは疲れちゃうし、セキュリティの問題もあって、一部の限られた人にしか所有しにくい。だけど、4ドアのGTだと思えば、オーナーも気軽に扱えて、逆に楽しいんじゃないかなと思いますよね。この仕様ならエンジンはRB26DETTですから、いざというときはGT-Rに劣らない走行性能を発揮できますし、発展性も高いです」と竜円さんは語る。

そんなコンセプトを実現するために搭載されたのが、BNR32用のRB26DETTだ。単純なエンジン載せ替えではなく、オーバーホールと同時にオーバーサイズピストンを組み込み、排気量を2.7Lへと拡大。インジェクターも550ccへと大容量化し、ブーストアップにも対応できる仕様としている。


点火系には、BNR34用のパワートランジスタ内蔵型イグニッションコイルを採用。もともとパワートランジスタが配置されていたスペースには、キャンセル用のアルミカバーを装着している。エンジンマネージメントを担うのは、HKS F-CON V Proだ。

一方、タービンやインタークーラーにはBNR32用の純正品を流用。あくまで最高出力を追い求めるのではなく、扱いやすさとコストパフォーマンスを重視したパッケージングだ。
とはいえ、今後の発展性も十分に確保。タービンについては、ボルトオンで装着できるHKS GTIII-2530スポーツタービンキットへのアップデートも視野に入れているという。

排気系はBNR32用フロントパイプにHKSスーパーターボマフラーを組み合わせ、エンジンの性能を引き出しながらも、ストリートで扱いやすい仕様を目指している。

ベース車はATだったため、ミッションもMTへと換装。組み合わされるのはECR33のRB25DET用5速MTで、FRの駆動方式はそのまま維持している。シフトレバー周辺には純正5速MT用のブーツやパネルを使用し、後付け感のない自然な仕上がりを実現している点も見どころだ。
RB26DETTを搭載するのであれば、外装もGT-R風のワイドフェンダーやフロントフェイスに変更するという選択肢もある。しかし、あえてそうしないところに、大人のチューニングの美学がある。

もともと前オーナーが製作していた叩き出しフェンダーは、そのまま活用。片側約30mmのワイド化によって太いタイヤを収めるスペースを確保しながら、純正のボディラインを大きく崩すことなく、さりげない迫力をプラスしている。

ホイールにはワークのマイスターS1を装着。多少の経年劣化は見られるものの、それもまた年式相応の味わいであり、スリーパーらしい雰囲気を演出している。
ブレーキはER34用を前後に移植し、フロントに対向4ポット、リヤに対向2ポットを採用。見た目の派手さは抑えつつ、走行性能に関わる部分はしっかりと強化されている。


インテリアも同様に、チューニングカーらしさをあえて強調しない仕上がりだ。シートには懐かしのレカロSR-3を採用し、ブラックのカバーで統一。ステアリングやシフトノブは純正のままとされ、室内を眺めただけでは、大掛かりなエンジンスワップが施されているとは思えない。
もちろん、走行中に必要な情報を把握できるよう、デフィの3連メーターなどは追加されている。それでも、室内全体は落ち着いた雰囲気にまとめられている。

「やっぱりスカイラインといえばGT-Rに憧れる部分もありますが、見た目はファミリーユース向けの4ドアなのに、走ると速いっていうのも楽しいと思うんですよね。まさに羊の皮をかぶった狼。GT-Bやハコスカ4ドアGT-Rから続く、スカイラインの伝統的なスタイルですからね」。
そう語る竜円さんだが、実はこのマシン、現状の仕上がりは8割程度なのだという。
「ゆくゆくは新しいオーナーさんを探す車両なので、そのオーナーさんの希望に合わせて仕上げられるよう、必要以上にコストをかけていないんです」。

つまり、現状でもRB26改2.7Lエンジンを搭載した魅力的な快速セダンでありながら、今後は新オーナーの希望に応じて、さらなる進化を楽しめるというわけだ。

高騰するターボモデルやGT-Rだけを追い求めるのではなく、廉価グレードをベースに自分好みのスカイラインを作り上げる。そんなチューニングの楽しさを、改めて感じさせてくれる1台だ。
派手なエアロや大径タービンに頼ることなく、穏やかな4ドアセダンの姿にRB26DETTの実力を秘める。スカイライン伝統の「羊の皮をかぶった狼」を現代に再現した、このGT改に興味がある人は、HKS九州サービスへ問い合わせてみてはいかがだろうか。
●取材協力:HKS九州サービス 福岡県北九州市小倉南区蜷田若園3-12-15 TEL:093-931-6910
【関連リンク】
HKS九州サービス
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