ブランドエンブレムを掲げた縦長の「トーテム」と、Y字形のライトシグネチャーで個性を放つ

DSオートモビルがパリモーターショーで公開したコンセプトカー「DS F3VER」は、ブランドの今後のデザインの方向性を探るためのスタディモデル。デザインと開発はすべて社内で手掛けたという。

ボディサイズは全長4190mm、全幅1840mm、全高1460mm。コンパクトなサイズに収めながら、これまでにないプロポーションで存在感を強めた。ホイールベースは2700mmと長くとることで、クラストップレベルの室内空間を確保したという。荷室容量は400Lで、日常の移動から旅行、週末のレジャーまで幅広い用途に応える。

フロントマスクの構成要素の中心は、DSのエンブレムを掲げた縦長の「トーテム」だ。フロントの中央を縦に貫くパネルで、クルマの顔に強い個性を与えている。左右のライトは、縦方向のY字形を描く新しいライトシグネチャー。ヘッドランプとデイタイムランニングライトをひとつのユニットにまとめた。昼でも夜でも、ひと目でDS F3VERとわかる表情をつくるのが狙いである。

ボディカラーは光で青から紫に変化する「コスミック・ブルー」。ルーフを縁取る「ルーフリング」はカスタマイズ可能

DS F3VERでは、カスタマイズをデザインの要素のひとつとして位置付けた。ボディ色は、この車両のために開発したダイクロイック(二色性)塗装の「コスミック・ブルー」。光の当たり方によって、鮮やかな青から深い紫へと色味が変化し、ボディの立体感を際立たせる。

ルーフの外周には、装飾の帯「ルーフリング」を配置した。写真の車両ではシャンパンゴールドに近い色で、黒いルーフとボディの間を縁取っている。この部分はオーナーごとに自由に仕立てられるカスタマイズの対象としている。

2トーンの塗り分けも、新しい手法を取り入れた。2色の境目をボディ後方のリヤランプまで延ばし、そこからテールゲート、ボディ側面、リヤバンパーを包み込むように塗り分けている。色はボディを覆うためだけでなく、造形の一部として扱い、ボリュームの見え方を変えて車体をよりコンパクトに見せる狙いだ。

ホイールは幾何学的なデザインで、軽さと強さを両立させた。シャンパンカラーの削り出しのディテールと、控えめなクル・ド・パリ(四角錐を並べた格子状の彫刻模様)を施している。

16枚のLEDパネルで奥行きを生むリヤランプ。グラン・パレの天井から着想したマグネシウム構造で支える

リヤもフロントと同じ考え方で構成した。リヤバンパーの中央にはトーテムを置き、デジタル表示のDSロゴを組み込んでいる。トーテムには光のアニメーションも採り入れ、点灯パターンでクルマの表情を変えられるほか、周囲とのやり取りや情報の伝達にも活かすという。

リヤランプは、16枚のLEDパネルを重ねた立体的な構成。光のトンネルのように、どこまでも奥へ続いているように見える。LEDパネルを支えるのは超軽量のマグネシウム製の構造体で、パリのグラン・パレのアーチ状の天井から着想を得たそうだ。

少ない要素で個性をつくる『デザイン・インテリジェンス』が新しい表現を生み出す

DS F3VERは、DSのデザインチームが現在取り組んでいる「デザイン・インテリジェンス」という考え方にもとづいてデザインされた。より少ない要素で個性をつくり出すことを目指し、部品点数の削減、構造の軽量化、空力の最適化、面質の向上を図る。

具体的には、ヘッドランプとデイタイムランニングライトをひとつにまとめたフロントの灯火ユニット、一体成形のバンパー、そしてホイールアーチやボディ下部の後付けの樹脂パーツの廃止だ。いずれも見た目だけでなく、技術、生産、環境への配慮を同時に満たす手法で、その結果、なめらかで彫刻的なシルエットの実現にもつながったという。

DSオートモビルのデザインディレクター、ティエリー・メトロズ氏は次のように語る。

「DS F3VERで探ったのは、三つの新しい表現です。カスタマイズを前提にしたデザイン、いまの主流にとらわれないフロントの表情、そしてパーツを絞り込んで造形の純度を高める『デザイン・インテリジェンス』という手法です。この手法によって開発はシンプルかつ速くなり、質感も高まります」

デザインプロセスでは、ステランティスが開発した最新のデジタルツールやAIも活用した。デザイナーが短時間で多くの案を検討・比較し、案の熟成に時間をかけられるようにするためで、AIは創造性の代わりではなく、検討の幅を広げ、プロセスを速めるための道具と捉えている。