豪華装備より走りを選ぶ? グレード構成から見えてくるスバルの電動化戦略

ハイブリッド車はガソリン車より高い。そんな常識を覆すような価格設定が、スバル「レヴォーグ レイバック」に採用されている。

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2026年7月に追加されたストロングハイブリッド「Premium Black S:HEV EX」の価格は424万6000円。実は、1.8L直噴ターボを搭載する「Black Selection」とまったく同じ価格なのだ。一般的に、電動化されたパワートレーンを搭載するモデルは、同等のガソリン車より価格が高くなる傾向にある。ところがレイバックでは、同じ予算でターボとストロングハイブリッドのどちらかを選べる。

Premium Black S:HEV EX

なぜスバルは、このような価格設定を実現したのだろうか。まず、現在のレイバックのグレード構成を整理してみよう。

1.8Lターボには「Limited EX」(405万9000円)と「Black Selection」(424万6000円)の2グレードが設定されている。一方、2.5L水平対向エンジンを組み合わせたストロングハイブリッドには、「Premium Black S:HEV EX」(424万6000円)と「Premium S:HEV EX」(452万1000円)を用意する。

つまり、最も安い1.8Lターボから18万7000円を追加するだけで、ストロングハイブリッドに手が届く。ただし、同じ424万6000円だからといって、装備内容まで同一というわけではない。

その違いを理解するうえで、まず注目したいのがパワートレインと燃費性能だ。S:HEVは、2.5L水平対向4気筒エンジンに、駆動用と発電用の2つのモーターを組み合わせたシリーズ・パラレル方式のストロングハイブリッドシステムを採用する。エンジンの最高出力は160ps、駆動用モーターの最高出力は119.6ps。モーターを積極的に活用することで、力強い加速と燃費性能の向上を両立している。

一方、1.8L直噴ターボエンジンは最高出力177ps、最大トルク300Nmを発生する。従来からのレイバックらしい、ターボエンジンによる走りを楽しめる仕様だ。

燃費性能には明確な差がある。S:HEVのWLTCモード燃費は19.0km/L。これに対し、1.8Lターボは14.1km/Lとなっている。

では、この差は実際の燃料代にどの程度影響するのだろうか。年間走行距離を1万kmとすると、カタログ燃費から計算した年間燃料消費量は、S:HEVが約526L、1.8Lターボが約709Lとなる。その差は年間約183Lだ。

仮にレギュラーガソリンを1Lあたり170円とすれば、年間の燃料代はS:HEVが約8万9000円、ターボが約12万1000円。差額は約3万1000円となる。5年間では約15万5000円の差になる計算だ。

もちろん、これはWLTCモード燃費を使った単純計算であり、実際の燃費や燃料代は走行環境によって変わる。それでも、車両価格が同じであれば、燃費性能に優れるS:HEVの経済的なメリットは小さくない。

では、なぜスバルはストロングハイブリッドをターボ車と同価格にできたのか。その答えのひとつが、グレードごとの装備設定にある。

S:HEVの上級グレード「Premium S:HEV EX」には、タン/ブラックのナッパレザーシートを採用。さらに、ハーマンカードンサウンドシステムなど、快適性や上質感を高める装備が充実している。

一方、424万6000円の「Premium Black S:HEV EX」は、ブラックの本革シートを標準装備しながら、一部の快適装備をメーカーオプションとすることで価格を抑えている。

例えば、ハーマンカードンサウンドシステムは上級グレードでは標準装備だが、Premium Black S:HEV EXではメーカーオプションとなる。つまり、スバルはストロングハイブリッドの装備を一律に豪華にするのではなく、価格を抑えたグレードを用意することで、購入のハードルを下げているのだ。ユーザーにとっては、装備の充実度を優先するか、新しいパワートレーンを優先するかという選択が可能になる。

さらに興味深いのが、S:HEVと1.8Lターボではボディのパッケージングにも違いがあることだ。S:HEVの全高は1550mm、最低地上高は180mm。一方、1.8Lターボは全高1570mm、最低地上高200mmとなっている。つまり、ストロングハイブリッドはターボ車より全高、最低地上高ともに20mm低い。

S:HEVでは街中での扱いやすさと走破性の両立を狙って車高が見直されており、都市型クロスオーバーとしての性格が強められている。対して1.8Lターボは、200mmの最低地上高を確保しているため、雪道や荒れた路面などで余裕を持ちやすい。単にエンジンが異なるだけでなく、使い方によって選ぶ理由が変わってくるのだ。

スバルがストロングハイブリッドを比較的手の届きやすい価格帯に設定した背景には、今後の商品戦略も関係していると考えられる。同社のS:HEVは、クロストレックを皮切りにフォレスターへと採用を拡大し、レイバックが3車種目となった。スバルにとってストロングハイブリッドは、一部の高級グレードだけに設定する特別な技術ではなく、今後の主力パワートレーンとして普及を進めたいシステムといえる。そのためには、ガソリン車との価格差をできるだけ小さくし、ユーザーが選びやすい環境を整えることが重要になる。

今回のレイバックでは、ストロングハイブリッドを高価格帯のみに設定するのではなく、既存のターボ車と直接比較できる価格に投入した。この価格設定によって、燃費性能を重視するユーザーはS:HEVを、最低地上高やターボエンジンの特性を重視するユーザーは1.8Lターボを選べる。ハイブリッドだから高い、ガソリン車だから安いという単純な関係ではなく、同じ予算のなかでパワートレーンや装備、使い勝手を比較できる点が、現在のレイバックの特徴だ。

ストロングハイブリッドの普及を進めたいスバルにとって、424万6000円という価格設定は、その狙いを象徴するものといえるだろう。