額縁を飛び出した名画が空間全体に広がる

印象派モネと浮世絵「モネを魅了した、日本の美」

美術館で絵を見るときは、作品の前に立ち、一枚ずつ向き合うのが一般的だ。しかし、ここでの楽しみ方は少し違う。壁や床を含む大きな空間に映像を投影し、音楽や音響と一体になった作品世界を表現する「没入体験」が中心となる。

光や水面、移ろう季節を描き続けたモネ。絵画が額縁を飛び出し、空間全体に広がることで、これまでとは違った視点から作品の魅力に触れられる。

モネが見つめた光や水面、季節によって表情を変える自然。その表現を、画面の枠を超えたスケールで楽しむという趣向だ。会場では立つ場所や目を向ける方向によって、視界に入る風景も変わる。正面から絵を眺めるだけではなく、空間を歩きながら、あるいは足を止めながら、自分なりの鑑賞方法を探せる。

浮世絵の大胆な構図や独特の遠近感を通じて、世界の見え方は視点によって変わることを実感できる。

ここで大切なのは、作品についての知識がなくても楽しめることだろう。最初は色彩や映像、音楽に身を委ね、次第に描かれた情景や作家の視線へと興味を広げていく。「見る、知る、感じる」という複数の入口が用意されたアート体験といえる。

映像は正面のスクリーンだけでなく、周囲の壁や床など全方位に投影される。視界いっぱいに広がる名画の世界に包まれ、作品の中に入り込んだような没入体験が楽しめる。

印象派に影響を与えた日本の浮世絵

2026年はモネの没後100年にあたる。生涯を通じて光と自然を描いたモネは、日本美術、とりわけ浮世絵に強い関心を寄せていた。葛飾北斎や歌川広重、喜多川歌麿らによる大胆な構図、独特の遠近感、自然や日常の切り取り方は、ヨーロッパの画家たちに新鮮な刺激を与えた。

約1800㎡もの広大な空間を舞台に、壁や床いっぱいにモネの名画や浮世絵を投影。視界を埋め尽くす映像と音響に包まれ、作品の世界に入り込んだような没入体験が楽しめる。

浮世絵の面白さは、単に美しい風景や人物を描いているだけではない点にある。何を画面に入れ、何を省くか。どこに視線を置くか。同じ景色でも切り取る位置を変えれば、まったく違う印象になる。世界の見え方は、視点によって変わる。そのことを、浮世絵と印象派の表現を行き来しながら考えられる構成だ。

日本の浮世絵が西洋絵画に与えた大きな影響を、作品の構図や表現方法の比較を通じて知ることができる。モネをはじめとする印象派の画家たちが、日本美術に魅了された理由が見えてくる。

モネが愛した日本の美意識を再発見

映像プログラムに加え、「モネのダイニングルーム」と「浮世絵ギャラリー」も用意される。モネが長く暮らしたフランス・ジヴェルニーの邸宅では、食堂に収集した浮世絵が飾られていた。今回の展示では、その空間に着想を得た世界観を紹介する。

モネが暮らしたフランス・ジヴェルニーの邸宅に着想を得た展示空間。浮世絵を愛したモネの暮らしを通じて、日本の美意識の豊かさを再発見できる。

浮世絵ギャラリーでは、構図や表現だけでなく、版画を生み出した職人の技にも光を当てる。普段は見慣れたものとして受け止めがちな日本の風景や季節感も、海を越えた芸術家の目を通せば、違った魅力を帯びてくる。日本の美意識の豊かさを、外からの視点によって再発見できるのも本展の見どころだ。

「THE MOVEUM YOKOHAMA」は、かつて横浜港の物流拠点として使われていた山下ふ頭4号上屋を活用した没入型ミュージアム。約6000㎡の巨大倉庫をアート施設として再生した。
葛飾北斎や歌川広重らの浮世絵も大きな見どころ。映像による没入体験だけでなく歴史や文化を知ることもできる。

次世代モビリティを体験

この施設を展開するのはトヨタグループ。山下ふ頭のエントランスと会場の4号上屋の間では、バッテリーEV「e-Palette」の運行も予定されている。移動する時間も含めて、普段の美術館とは異なる体験を提案する。

トヨタグループが手がける「THE MOVEUM YOKOHAMA」。山下ふ頭のエントランスと会場を結ぶ移動には、トヨタのバッテリーEV「e-Palette」が活用される。

会期は2027年3月31日まで。一般料金はオンライン3000円、当日会場3800円で、中学生以下は無料。絵画の歴史を学ぶことも、映像に包まれて過ごすこともできる。モネの名画を入口に、目の前の世界を見る視点が少し変わる。そんな時間を横浜で楽しめそうだ。

「THE MOVEUM YOKOHAMA」の入口では、カラフルでポップなデザインのコンテナがお出迎え。会場を訪れる際の目印となっている。