単なる法規対応にとどまらないロードスター12年目の改良




幌を採用する通常のロードスターであるソフトトップモデルに対し、RFはスイッチを押すだけで開閉できる電動機構が備わったリトラクタブル・ハードトップモデルだ。電動トップの開閉は約13秒で完了し、10km/h以下なら走行中の開閉も可能となっている。
そのほかの違いは、ソフトトップモデルのエンジン排気量は1.5L で16インチ×6.5Jホイールが装着されるのに対し、RFは約100kg重い車重に対応するため2.0L エンジンが搭載され、ホイールは17インチ×7Jが標準装着となる。また、ソフトトップモデルはフルオープンとなるが、RFのオープン時はタルガトップと呼んだ方が正確だ。
今回の改良で外観形状やボディサイズは一切変わっていない。改良自体はいずれも軽微な内容だが、エンジンレスポンスや操作性、静粛性の向上に加えてサスペンションやパワステのリセッティングなど、手が入った場所はクルマのほぼ全体に及んでいる。
ボディカラーに新色のジンクグリーンメタリックを新採用した点も大きなトピックだ。グリーン系の色は歴代ロードスターの人気色であり、ND型ロードスターとしては今回が初のグリーン系ボディカラーとなる。
そのほか、シートに関わる安全基準の改正に伴いヘッドレストの高さと形状が最適化され、インフォテインメントディスプレイは“Apple CarPlay”と“Android Auto”がタッチパネル操作に対応するなど利便性も向上した。そして、最大の目玉はソフトトップモデルに追加されたMT専用の“特別仕様車PS”の存在だ。
“ピュアスポーツ”の略称を冠する特別仕様車PSには、これまで最上級グレード“RS”の専用装備だったビルシュタイン製ダンパーが装着され、シルバー塗装のブレンボ製対向4ピストンキャリパー&ローターが標準装備となる。ホイールはRSグレードよりもリム幅が広げられたレイズ製の鍛造16インチ×7Jホイールだ。
そのほか、特別仕様車PSのソフトトップカラーは専用のグレーとなり、エアコンまわりやエンジンスタートボタンなどにブラックやシルバーの専用加飾が施される。もちろん、MTモデルには“アシンメトリックLSD”も標準装備だ。
マツダ ロードスター 特別仕様車PS
ボディサイズ=全長3915mm×全幅1735mm×全高1235mm
ホイールベース=2310mm
車両重量=1030kg
タイヤサイズ=195/50R16(前後)
マツダ ロードスター RF VS
ボディサイズ=全長3915mm×全幅1735mm×全高1245mm
ホイールベース=2310mm
車両重量=1120kg
タイヤサイズ=205/45R17(前後)
騒音対策に併せてクルマ全体を再調律


パワートレインに関してはソフトトップモデル、RFともにスペック自体に変更はないが、今回の改良ではスペック表に現れない部分に多くの手が加えられている。
主な狙いは厳しくなった車外騒音規制への適合だ。通過騒音抑制のために標準タイヤは、グリップ力は維持しつつより静かなタイヤへと変更され、加速騒音を抑制するためにマフラーサイレンサーを大容量化したうえで吸気音量も抑制された。
タイヤ銘柄は、グリップと静音性を高い次元で両立させたヨコハマの新世代スポーツタイヤ“ADVAN Sport V107”が採用され、それに併せてパワーステアリングの制御にも変更が加えられている。
サイレンサーの大容量化は、騒音を小さくしながら出力低下を招かないための措置だ。ただし、RFはサイレンサー大容量化の弊害としてトランクルームの容量が減少しており、127リットルから116リットルとなった。
車外に響く吸気音はレゾネーター等で抑制しながらも、ドライバーにはしっかりとスポーティな吸気音を聞かせるように綿密なサウンドチューニングが施されている。具体的には、改良新型のソフトトップモデルには旧RFの吸排気系を流用し、改良新型RFには新設計の吸排気系が導入された形になるとのことだ。
そのほか、旧型ではレブリミット直前で出力を絞る制御となっていたが、改良新型では制御の変更によりリミットエンドでの失速感が解消された。またビルシュタインダンパー装着グレードはダンピングのリセッティングに加えサスペンションスプリングもバネレートがアップされている。
これらの改良により、乗り心地はやや固く感じられるようになったものの、オープンスポーツカーとしてより気持ちの良い走りができるようになった。車内の密閉性が高いRFは騒音対策の恩恵を大きく受けており、持ち前の上質な雰囲気が一層高まっている。
さらにMTモデルは制御の変更により、全車にわたってアクセルレスポンスが改善されたほか、新たに“ヒール&トゥアシスト制御”が搭載された。
このアシストはオートブリッピング機能ではなく、ブレーキング時のアクセル開度不足を補助する軽微な制御であるため、ヒール&トゥに慣れた人の操作は妨げない。その一方で、操作不備によるギクシャク感はしっかりと緩和してくれるため、MTに不慣れな人でも積極的にシフトダウンができるようになっている。
なお、燃費性能は旧型から0.1km/Lほど向上しており、WLTCモード平均値でソフトトップモデルが16.9〜17.3km/L、RFは15.3〜15.9km/Lとなった。使用燃料はいずれのモデルもハイオクだ。
マツダ ロードスター 特別仕様車PS
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン
排気量=1496cc
最高出力=136ps/7000rpm
最大トルク=152Nm/4500rpm
トランスミッション=6速MT
駆動方式=2WD(FR)
マツダ ロードスター RF VS
エンジン形式=直列4気筒ガソリンエンジン
排気量=1997cc
最高出力=184ps/7000rpm
最大トルク=205Nm/4500rpm
トランスミッション=6速MT
駆動方式=2WD(FR)
“特別仕様車PS”は走行性能と快適性を両立したイイトコ取りグレード


今回の改良に伴う値上げ額はソフトトップ、RFともにグレードに応じて6万円前後であり、ソフトトップモデルのスタートプライスはベーシックグレード“S”の295万9000円だ。
装備を充実させた“Sスペシャルパッケージ”の新車価格は314万6000円から、本革シートが装着される“Sレザーパッケージ”は355万3000円からとなる。最上級グレードの“RS”は374万円であり、特別仕様車PSの価格は、その中間となる366万3000円だ。
前述したとおり、特別仕様車PSの走行に関する部分は“RS”とほぼ共通であり、シートは“Sスペシャルパッケージ”と同じスエード調人工皮革を用いたコンビシートとなるが、“Sレザーパッケージ”と同じく天井にインシュレーターが追加されているため遮音性もやや高い。
特別仕様車PSは、“マツダ スピリットレーシング ロードスター12R”の開発で得た知見を組み込みつつ、各グレードの魅力的な部分を統合したイイトコ取りグレードと言えるだろう。これからソフトトップのMTモデルを購入するなら特別仕様車PSがおすすめだ。
一方、ソフトトップモデルに比べて高価なRFは、仕様と予算に応じたグレード選定が必要となるだろう。
各グレードの新車価格はベーシックグレードの“S”が385万円。タンカラーのナッパレザーシートとインテリアトリムが特徴の“VS”は421万3000円からとなる。レカロシートとビルシュタインダンパーが標準で備わるMT専用の“RS”は436万7000円だ。
最廉価のSグレードでも、装備の充実度合いはソフトトップモデルの“Sスペシャルパッケージ”相当であるため不足はないだろう。
ATモデルはMTモデルよりも3万3000円高となるが、ラグジュアリーに乗られることも多いRFはATモデルも人気だ。RFはいずれのグレードも、静粛性が引き上げられたことで上質感が大きく向上している。
今回の改良は騒音対策の法規対応が主だが、変化はそれだけにとどまらない。改良新型はしっかりロードスターとして進化している。
車両本体価格
マツダ ロードスター 特別仕様車PS:366万3000円
マツダ ロードスター RF VS(MT):421万3000円
