連載

【歴史を飾ったライバル対決】

日本の高性能モデルの草分けとなったハコスカGT-Rとトヨタ2000GT

日産BNR32「スカイラインGT-R」vs.トヨタA80「スープラ」

日産BNR32「スカイラインGT-R」は、1969年2月に誕生した「スカイライン2000GT-R(ハコスカGT-R)」、トヨタA80「スープラ」は1967年5月に誕生した「トヨタ2000GT」を源流とする高性能モデルである。

1969年2月にデビューした3代目(ハコスカ)「スカイライン2000GT-R」
1969年2月にデビューした3代目(ハコスカ)「スカイライン2000GT-R」に搭載されたS20型エンジン
3代目(ハコスカ)「スカイライン2000GT-R」のコクピット

ハコスカGT-R「スカイライン2000GT-R」は、3代目(C10型:ハコスカ)「スカイライン」に設定されたハイスペックモデルで、レースで勝つために開発され、破竹の49連勝を飾るなど当時のレース界を席巻した。パワートレーンは最高出力125ps/最大トルク17.0kgmを発揮するウェーバー3連装キャブ装着のS20型2.0L直6 SOHCエンジンに、4速MTが組み合わされた。

1967年5月にデビューした「トヨタ2000GT」

一方のトヨタ2000GTは、日本初の本格的GT(グランドツーリング)カーであり、国産スポーツカーの原点のひとつと位置づけられている。パワートレーンは、ヤマハ主導で開発した最高出力150ps/最大トルク18.0kgmのソレックス3連装キャブ装着の3M型2.0L直6 DOHCエンジンに、5速MTが組み合わされた。

1967年5月にデビューした「トヨタ2000GT」のコクピット

ハコスカ・スカイラインGT-Rとトヨタ2000GTは、ともに今も語り継がれる日本自動車史に残る名車である。ただし、ハコスカGT-Rはレースに勝つために生まれたレース系モデルであり、一方のトヨタ2000GTは高性能グランドツーリング(GT)系モデルであり、その血統の違いがBNR32スカイラインGT-RとJZA80スープラに継承された。

直6ツインターボエンジン+4WDのBNR32スカイラインGT-R

1973年1月にデビューした4代目(ケンメリ)「スカイライン2000GT-R」
4代目(ケンメリ)「スカイライン2000GT-R」のコクピット
4代目(ケンメリ)「スカイライン2000GT-R」に搭載されたS20型エンジン
4代目(ケンメリ)「スカイライン2000GT-R」の前後シート

ハコスカ2000GT-Rに続いて、1972年9月に登場した4代目(C110型:ケンメリ)「スカイライン」をベースに1973年1月には「2000GT-R(ケンメリGT-R)」が設定された。ただし、ケンメリGT-Rは排ガス対応が困難なことから約4ヶ月で生産を終了し、GT-Rブランドは一旦消滅した。

1989年8月にデビューした日産BNR32「スカイラインGT-R」

そして、1989年8月に16年ぶりにスカイラインGT-Rが、BNR32「スカイラインGT-R」として復活。GT-Rの開発テーマは、“レースに勝てる、そして2、3年先まで勝ち続ける圧倒的な速さを持つクルマ”だった。

1989年8月にデビューした日産BNR32「スカイラインGT-R」

グループA(ツーリングカー)レースで勝つためには、最高出力が600ps以上必要という試算のもと、そのチューンナップに対応できる高性能エンジンと、強力なパワーをフルに路面に伝えられる4WDシステムが採用された。

日産BNR32「スカイラインGT-R」搭載のRB26DETT型2.6L直6 ツインターボエンジン

そのような開発目標で作られたGT-Rは、最高出力280ps/最大トルク36.0kgmを発揮する2.6L 直6 DOHCツインターボエンジン(RB26DETT型)を搭載。4WDシステムについては、後輪駆動をベースに走行条件に応じて前輪にトルクを配分する湿式多板クラッチを用いた電子制御トルクスプリット4WD”アテーサE-TS”が採用された。

日産BNR32「スカイラインGT-R」のコクピット
日産BNR32「スカイラインGT-R」のフロントシート

さらにスーパーHICAS(4WS)も装備されたGT-Rは、大型のエアインテークを組み込んだフロントマスクに前後プリスターフェンダーとリアスポイラー、16インチ鍛造アルミホイール、専用バケットシートを組み込み、“最強最速の市販車”に仕上がったのだ。

1989年8月にデビューした日産BNR32「スカイラインGT-R」(画像はNISMO)

車両価格は445万円に設定。当時の大卒初任給は17.5万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で約585万円に相当する。

直6ツインターボ+FRのJZA80スープラ

1986年2月にデビューしたA70型「スープラ」(国内初代、グローバル3代目)

国内で初めて登場した「スープラ」は、「セリカ」をベースに1978年に誕生した上級スペシャリティカー「セリカXX」の3代目(A70型)である。セリカXXは、誕生当初から海外ではスープラと名乗ったが、1986年2月にモデルチェンジして3代目となった時点で、日本でもスープラを名乗ることになったのだ。

1986年2月にデビューしたA70型「スープラ」に搭載された7M型エンジン

したがってA70型は、日本では初代スープラと位置付けられる。A70スープラは、名車「トヨタ2000GT」の血統を継承したピュアスポーツで、“TOYOTA 3000GTスープラ”というキャッチコピーを掲げた。

1993年5月にデビューしたトヨタJZA80「スープラ」

そして、1993年5月にモデルチェンジして登場したのがA80型「スープラ」だ。A80スープラは、シャープなシルエットだった先代から一転、エアロダイナミクスを追求した低重心のダイナミックなフォルムに変貌し、テールを大胆に切り落としたウェッジシェイプが個性的だった。

1993年5月にデビューしたトヨタJZA80「スープラ」

軽量かつ高剛性のボディに、ハンドリング性能と乗り心地を両立させる4輪ダブルウィッシュボーン、ブレーキには4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを装備。パワートレーンは、最高出力225ps/29.0kgmを発揮する3.0L 直6 DOHCのNA(自然吸気)、280ps/44.0kgmのツインターボ(2JZ-GTE型)の2種エンジンと、ゲトラグ製MTおよびLUK(ルーク)製電子制御OD付4速ATの組み合わせ、駆動方式は伝統のFRだ。

トヨタA80「スープラ」搭載の2JZ-GTE 型3.0L直6ツインターボエンジン

その他にも、走行安定性と操縦安定性の向上のため、新開発のトラクションコントロールや横Gセンサー付4輪ABS、トルセンLSD(リミテッド・スリップデフ)も設定され、トップグレードが423万円(6速MT)/398万円(4速AT)で販売された。現在の価値では、MT仕様が約526万円に相当する。

トヨタJZA80「スープラ」のコクピット

個性的なスタイリングと力強い走りで、日米で高い人気を獲得したA80スープラだったが、2000年を迎えて排ガス規制や燃費規制に膨大なコストがかかるようになり、2002年にいったん生産を終了、ラインナップから消えた。

ツーリングカーの王者BNR32「スカイラインGT-R」、GTカーの王者JZA80「スープラ」

星野一義選手のGr.AカルソニックGT-R
BNR32GT-Rの輝かしい戦歴

BNR32「スカイラインGT-R」は、ハコスカGT-Rの“レースに勝つ”という使命を継承し、グループA(市販車ベースのツーリングカー)レースに勝つために復活。技術で速さを追求するレーシングスポーツとして、1989年~1993年に全日本ツーリングカー選手権(JTC)で圧倒的な強さを誇り、29戦29勝という前代未聞の記録を達成した。

70型スープラもレースシーンで活躍した
1997年に全日本GT選手権チャンピオンとなった「カストロール・トムス・スープラ」

一方のJZA80スープラは、トヨタ2000GTから継承されたGTカーとして、特に北米向けGTカーの要求に応えて進化。高速性能を重視したGTスポーツとして、1995年~2005年にかけてJGTC GT500(現スーパーGT500)で強さを発揮、1997年にはGT500でチャンピオンを獲得。その他、ル・マン24時間レースや耐久レースにも参戦した。

日産歴代GT-R

両車に搭載された直6エンジンの設計思想の違いは、ツインターボの違いに表れている。BNR32スカイラインGT-Rに搭載のRB26DETTエンジンのツインターボは、同一容量の並列ツインターボであり、レスポンスと高回転の伸びを重視したレーシングカー向きにチューニングされた。

歴代トヨタ「スープラ」

一方、JZA80スープラのツインターボは小型と大型ターボを組み合わせたシーケンシャルツインターボで、低回転域はレスポンスよく低速トルクが高く、大型ターボが作動する高回転で大きなパワーを発揮して、GTカーに向いた扱いやすさが特長である。

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BNR32「スカイラインGT-R」とJZA80「スープラ」は、同じ直6ツインターボを搭載した90年代を代表する高性能モデルだが、その走りの哲学や設計思想は異なる。BNR32スカイラインGT-Rは、高剛性ボディとグリップ力重視の4WD(ATTESA E-TS)スポーツ、JZA80スープラはバランスと操縦性を重視したFRスポーツである。当時は、出力280ps自主規制のため出力は抑えられていたが、両エンジンともチューニング次第で1000psを発揮するポテンシャルを持っていた。

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