ランチアの新型ガンマが、2026年パリ・モーターショーでワールドプレミアされた。1976年にデビューしたフラッグシップ「ガンマ」の名を50年ぶりに復活させたモデルで、ブランド創立120周年の年に登場する。ステランティスのSTLA Mediumプラットフォームを採用し、欧州でもっとも販売台数が多いというCセグメントのクロスオーバー市場(ランチアはC-UVと呼ぶ)に投入。パワートレインはハイブリッドとBEVで、生産はイタリア南部のメルフィ工場で行なう。欧州各市場では10月12日に受注を開始した。

初代ガンマはピニンファリーナとともに開発したベルリーナとクーペ。クーペは新時代のランチアに影響を与えた「歴史的アイコン」のひとつ

初代ガンマは1976年3月のジュネーブ・モーターショーでデビュー。フラミニア以来空席となっていたエグゼクティブカーの市場にランチアが復帰したモデルだ。ボディはピニンファリーナとともに開発した2種類で、Cd値0.37の2ボックスのサルーン(ベルリーナ)と、アルド・ブロヴァローネがデザインしたクーペを用意。クーペの室内は洗練された「走るリビングルーム」と評された。1984年までに約2万2000台を生産。ガンマ・クーペは、ランチアの新時代のデザインに影響を与えた「9台の歴史的アイコン」の1台に数えられている。

ランチア・ガンマ(ベルリーナ)
ランチア・ガンマ(クーペ)

20世紀のイタリア建築を手本に、Pu+Ra HPEと新型イプシロンのデザイン言語を発展。短いオーバーハングがつくるファストバックのプロポーション

デザインはトリノのランチア・デザインセンター。ブランド固有の要素を受け継ぎながら、懐古的な表現に頼らないアプローチをとったという。20世紀イタリア建築の名作をヒントにしたボリュームはシンプルで、Pu+Ra HPEコンセプトと新型イプシロンで示したデザイン言語の発展形となる。建築的にすっきりとまとめたキャビンに彫刻的なサイドの面を組み合わせ、技術的な要素はフロントとリヤに集約した。

ボディサイズは全長4672mm、全幅1898mm。BEVのホイールベースは2791mmで、オーバーハングはフロント969mm、リヤ913mmと短く、トレッドはフロント1630mm、リヤ1642mmとワイドだ。クロスオーバーらしい車高を確保しながら、リヤに向かって絞り込んだシルエットが特徴。サイドは初代ガンマに倣ったすっきりとした構成で、ドア、ボンネット、フェンダーはアルミニウム製とした。

ホイールはBEVがエアロインサート付きの19インチと20インチで、HFインテグラーレには21インチ鍛造を用意。ハイブリッドは18インチと19インチで、HFラインには専用デザインの19インチを設定する。

フロントの主役は光で描く「カリーチェ」。ブランドの歴史に由来する六角形のエアインテークとアクティブグリルを組み合わせる

フロントは、光で描く「カリーチェ」、ブランドの歴史に由来する六角形のエアインテーク、力強い存在感という3つの要素で構成する。

カリーチェはイタリア語で聖杯を意味し、ランチアの伝統的なグリル形状を指す言葉だ。新型ガンマでは常時点灯するライトがその役割を担い、ボンネット先端を横切るライトと中央を縦に下りるラインがフェイスの印象を決めている。エアインテークには冷却が必要なときだけ開くアクティブグリルを備える。

リヤはT字形のテールライトと「ベネツィアーネ」。ベータHPEとストラトスのリヤウインドウを現代的に解釈

リヤのライトシグネチャーは、テールゲートを横断するライトと中央を縦に下りるライトを組み合わせたT字形。フロントのカリーチェと呼応するデザインだ。

絞り込んだリヤまわりで目を惹くのが、「ベネツィアーネ」とルーフ上に浮かぶエアロフィン。ベネツィアーネはイタリア語でベネチアンブラインドを意味し、リヤスポイラーの上のガラスにスクリーン印刷した縦のラインで構成する。1975年のベータHPEのサンシェードを現代的に解釈したもので、そのサンシェード自体もストラトスのルーバー付きリヤウインドウを思わせるものだった。

左右に分かれたフィンはボディから浮かぶように配置したスプリットタイプのリヤスポイラーで、気流を整える役割を担う。こうした処理にエアロホイールやアクティブグリル、フラットな床下を組み合わせ、Cd値0.25を達成。これはセグメントでもっとも低い値だという。

室内のテーマは「イタリアン・ホーム・フィーリング」。上部のテクノロジーエリア、ラップアラウンドのバンド、センタートンネルの3つのゾーンで構成

インテリアは住空間をテーマに、上質でミニマルなイタリア家具からヒントを得た。室内は上部のテクノロジーエリア、キャビンを包むように回り込むバンド、機能をまとめたセンタートンネルの3つのゾーンで構成する。

ドライバーの正面には10.25インチのデジタルメーター、中央には運転席側、共有、助手席側の3エリアに分かれる16インチのセンターディスプレイを配置。ステアリングホイールの脇には、ChatGPTベースの音声アシスタント「SALA HUB」のリング状のライトがあり、応答に合わせて光る。SALAはSound Air Light Augmentationの略で、オーディオ、エアコン、照明をひとつのインターフェースにまとめたもの。上下がフラットな3本スポークのステアリングホイールは、タッチで認識したあと物理的に押して確定するスイッチを備える。

ダッシュボード中央から張り出す円形のトレーが「コーヒーテーブル」だ。Pu+Ra HPEで提案し、新型イプシロンで初採用したアイデアの発展形で、全車に標準装備する。表面はアルカンターラで、LXとHFは15Wのワイヤレス充電を内蔵。ペンホルダーには創業の地と年を示す「Torino 1906」の刻印が入る。

アンビエントライト「ランチア・グロウ」は8色から選べ、光のポイントはSALA HUBからコーヒーテーブル、ドアハンドル、ドアポケットへと視線を導くように配置した。フォーカルと共同開発した「SALAスタジオHi-Fi」では、マットプラチナのアルミニウム製スピーカーグリルをドアのトリムと一体化している。

シートは初代ガンマ・クーペがモチーフ。トリムごとに異なる3つのインテリアテーマを用意

シートは初代ガンマ・クーペのシートを手本に、水平基調のエレメントで構成した。手づくりのアームチェアをイメージしたデザインだ。

インテリアのテーマはトリムごとに異なる。LSはダッシュボードのバンドをクアルツォ・ホワイトとし、マットプラチナのアクセントを組み合わせたもの。LXはランチア・ブルーが主役で、ダッシュボードにはイタリアの皮革工芸をヒントにしたエンボス加工を施した。HFは「HFグリーン」のテーマで、グリーンのシート、スポーツステアリング、アルミニウム製ペダルを備える。LXとHFには、ブラックのキャピトネ(ボタン留め)レザーシートも用意。目に見える内装表面の60%以上にリサイクル素材やバイオ由来の素材を採用している。

パワートレインはハイブリッドとBEVの2本立て。「HFインテグラーレ」の名が約30年ぶりに復活

ハイブリッドは1.2L直列3気筒ターボと48Vシステムの組み合わせで、システム出力は145PS。BEVは前輪駆動のスタンダードレンジ(230PS)とロングレンジ(245PS)を用意する。トップモデルは前後2モーターの4WD『HFインテグラーレ』。デルタHFインテグラーレ以来、約30年ぶりにこの名が復活した。最高出力は350PS(ブースト時375PS)で、カメラで路面を先読みするアダプティブサスペンションを備える。