1980年代に脚光を浴びた数々の高性能スポーツモデル

1970年代の排ガス規制強化とオイルショックを乗り越えた1980年代を迎えると、高性能・高機能時代が到来した。ターボやDOHCを搭載した比較的排気量の大きい本格的な高性能スポーツである日産「フェアレディZ」や「スカイラインGT-R」、トヨタの「セリカGT」などが高性能を競った。

その流れは小型車や軽自動車にも波及し、ターボエンジンを搭載した「スターレット」や「マーチ」、「シティ」など、軽でも「アルトワークス」や「ミラTR-XX」など、ホットハッチと呼ばれた高性能モデルが続々と登場した。


一方で、パワーではなく軽量ボディで俊敏なキビキビした走りが特長の、1.6Lクラスのエンジンを搭載したライトウェイトスポーツやテンロクが若者から人気を集めた。比較的入手しやすい低価格もあるが、軽量でキビキビとした俊敏な走りとともに、クルマとの一体感による操る楽しさがあり、さらに好みのチューニングがし易いということも大きな魅力だった。
その代表格が、FRライトウェイトスポーツの完成形のトヨタAE86「レビン/トレノ」、FFライトウェイトスポーツの完成形のホンダ「CR-X Si」だった。
FRレイアウトにこだわったトヨタAE86レビン/トレノ


1966年11月に誕生して大ヒットした初代「カローラ」に続いて、1970年5月には2代目カローラが登場した。その2年後の1972年3月、初代「カローラレビン/スプリンタートレノ(TE27型)」が追加された。ここに、長く若者に愛され続けたレビン/トレノの歴史が始まった。


その後も「カローラ」と「レビン/トレノ」は、高い人気を維持した。そして、1983年5月にモデルチェンジした5代目カローラ/スプリンターは、居住性を高めるなど実用性を重視して当時主流となりつつあったFFレイアウトに変更。しかし、4代目レビン/トレノ(AE86型)は走りの楽しさを重視して先代同様にFRが継続された。

AE86は、2ドア/3ドアのハッチバッククーペで、レビンが固定式の角型ヘッドライトと一面となったグリルとコーナーライトを持つフロントフェイス、一方トレノはリトラクタブルヘッドライトと横長のグリルを持つ低く構えたノーズが特徴だった。
エンジンは先代までの2T-GEU型から、最高出力130ps/最大トルク15.2kgmを発揮する新開発の1.6L 直4 DOHCの4A-GEU型に換装された。当時流行った1.6L高性能エンジン“テンロク”を代表するエンジンである。
最高速度200km/hを超えるAE86はレースでも活躍したが、絶対的なスピードよりも優れたレスポンスとジムカーナやラリーなどで後輪をドリフトさせるFR特有のハンドリングが楽しめるFRライトウェイトスポーツとして、多くのファンを魅了した。

車両価格は106.0万~154.8万円(レビン)/109.2万~156.3万円(トレノ)。当時の大卒初任給は13万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で約188万~274万円/193万~277万円に相当する。2.0Lクラスの走りができると思えば、リーズナブルだ。

AE86の人気が今も語り継がれ、現役時代以上に人気モデルとなった理由のひとつは、1995年から連載された人気漫画「頭文字D」の影響が大である。頭文字Dは、ハチロク(トレノ)を駆ける主人公が名立たるスポーツカーと公道最速を駆けて競い合うというもので、“D”はドリフトとドリームのDとされている。
また、AE86がチューニングしやすく、走り屋の腕を磨くのにちょうど良かったということで長く愛用され、中古車価格が高騰した要因になった。
ライトウェイトFFスポーツというジャンルを開拓したCR-X


1980年代を迎えると、元々スポーツ志向の強かったホンダは、1982年9月にホットハッチ「シティ・ターボ」、1984年11月にはワイド&ローのスペシャリティカー2代目「プレリュード」を投入。続いたのが、1983年6月にFFライトウェイトスポーツを謳った初代CR-Xの「バラードスポーツCR-X」である。

バラードスポーツCR-Xは、1980年にデビューした2代目「シビック」の兄弟車「バラード」の派生車として登場。最大の特徴は、(2+2)シートに割り切った斬新なパッケージングと、新素材H・P・ALLOY(ホンダ・ポリマー・アロイ)といった軽量化材料の適用によって実現された軽量ボディである。1.3L車で760kg、1.5L車は800kgと圧倒的な軽量化を達成したのだ。
スタイリングは、新世代コンパクトスポーツに相応しく斬新だった。セミリトラクタブルヘッドライトを装備した低く抑えたボンネット、シャープなテールエンドなどワイド&ローで、世界トップレベルのCd値0.33でスポーティさをアピールした。
パワートレーンは、最高出力80ps/最大トルク11.3kgmを発揮する1.3L 直4 SOHC、110ps/13.8kgmの直4 SOHC燃料噴射式の2種エンジンと、3速ATおよび5速MTの組み合わせ。
車両価格は、1.3L車が99.3万円/107.3万円、1.5L車が127万円/138万円。ちなみに当時の大卒初任給は13万円程度(現在は約23万円)なので、単純計算では現在の価値で176万円/190万円、225万円/244万円に相当するが、当時としては安価なスポーツモデルだった。



そして1984年11月に、最高出力135ps/最大トルク15.5kgmを発揮する新開発の1.6L 直4 DOHC(ZC型)エンジン搭載した「バラードスポーツCR-X Si」が、価格150.3万円で追加された。車両重量は860kg~880kgとやや重くなったものの、その軽快な走りはスポーツ走行を好む多くの若者を魅了した。
レビン/トレノ(AE86) vs. バラードスポーツCR-X Siのまとめ
最後に、両モデルの基本スペックと性能を整理する。
| トヨタ AE86 レビン/トレノ | ホンダ バラードスポーツCR-X Si | |
| エンジン | 1.6L 直4 DOHC 16V(4A-GEU型) | 1.6L 直4 DOHC 16V(ZC型) |
| 最高出力/最大トルク | 130ps/15.2kgm | 135ps/15.5kgm |
| 駆動方式/トランスミッション | FR/5速MT | FF/5速MT |
| 車両重量 | 925kg | 860kg |
| ホイールベース/全長/全幅/全高 | 2400/4215/1625/1335mm | 2200/3675/1625/1290mm |
| パワーウェイトレシオ | 7.1kg/ps | 6.4kg/ps |
| 車両価格 | 106.0万~156.3万円 | 150.3万円 |
「CR-X Si」の方が、車重が約60kg軽く、最高出力と最大トルクも若干上回っており、単純に性能を比べるとわずかにCR-X Siの方が優勢である。ただし、FRとFFの違いのよるクルマの性格は大きく異なり、FRらしいアクセルで曲げる、操る楽しさならAE86であり、FFながらよく曲がり俊敏で速いのがCR-X Siと、特徴づけられる。
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1980年代には、室内空間を広くでき、軽量化や燃費低減にも繋がることから、ファミリーカーを中心にFRからFF化への大きな流れが加速していた。そんな状況下で走り好きの若者には、“FR派のAE86” vs. “FF派のCR-X Si”という対立軸を象徴する2台だった。




