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スカイチーム・エース125S……426,800円
直引きキャブによるエンジンとの対話が濃密で、振動も味わいに
「へぇ~、ドリーム50か。懐かしいなぁ」
「オレはCR110を2台持ってるんだ」
撮影中、こんなに話しかけられたのは久しぶりだ。ロングタンクに小振りなシングルシート、そして前後ワイヤースポークホイールとくれば、自然と連想するのはホンダのドリーム50や、それの元ネタとなったCR110だろう。
このエース125Sを生産しているのは、香港の二輪メーカーであるスカイチームだ。もともと「スネークモータース」のブランド名で販売されていたモデルで、本国では250cc、125cc、50ccをラインナップ。2014年から輸入販売元となったイリストレーディングは、当初は50ccモデルも入れていたが、2015年以降は人気の高い125ccのみを取り扱っている。
エンジンは124ccの空冷シングルで、安価なOHVエンジンと、高性能なSOHCエンジンの2種類が存在する。基本的には前者がデフォルトの仕様となるが、イリストレーディングでは高回転域での吹け上がりがOHVよりも優れるとの理由により、日本入荷モデルはSOHCエンジンでオーダーしているという。
まずはそのエンジンから印象をお伝えしよう。ヘッドカバーの左側に「OHC」と誇らしくロゴが入るこの124cc空冷シングル、バランサーは装備されておらず、燃料供給は直引きキャブというなかなかにクラシカルな内容だ。始動方法はセルとキックの併用式で、試乗車はほんの少しだけ目覚めが悪かった。とはいえ、引いていたチョークレバーを少しずつ戻したり、スロットル開度1/16~1/8ぐらいで油温が上がるのを待つといった、言わばエンジン始動時のお作法は、ベテランライダーなら普通にやっていたこと。こうした一連の手順が必要なところも、エース125Sの特徴と言えるだろう。
クラッチを握り、ローにシフトしてゆっくりと発進する。タコメーターがないので正確な回転数は不明だが、アイドリングのすぐ上でクラッチミートしても走り出せるほど、低回転域から力強い。これは車体の軽さも手伝っているようで、最新設計の125ccモデルと同等の加速感が得られる。バランサーが採用されていないので、やや硬質な振動がダイレクトに伝わるが、手や足にしびれが残るほど大きなものではなく、むしろクラシカルなエンジンの味わいとして許容される範囲のものだ。
直引きキャブは、エンジンが欲している混合気の量をイメージしながら開けるのがセオリーだ。ゆえに、低回転域でガバ開けするとうまく加速しないが、乗り続けているうちに自然と適切な開け方が身に付くようになる。これを面倒と思うか、それとも懐かしいと感じるかは乗る人の年代によるだろうが、筆者は完全に後者であり、試乗中は終始ノスタルジックな気分に浸っていた。
軽さは正義! 倒し込みや切り返しが軽快で、旋回力にも優れる
エース125Sを目の前にして、まず出てくる感想が「低い!」、そして「細い!」である。特徴的なロングタンクによりハンドルとシートとの距離が離れており、ゆえに前傾姿勢も深め。とはいえ、クラシックレーサーかくあるべしというライポジは、このバイクを選ぶ人にとっては歓迎される要素の一つだろう。
ホイール径は、現在のオンロードモデルの主流である前後17インチではなく、やや大径の18インチとなっている。ゆえに、大らかなハンドリングになるかと思いきや、とにかくクイックなハンドリングに驚かされる。具体的には、車体のリーンに合わせてフロントタイヤがすぐさまクッとステアし、そこからコーナーのイン側へとグイグイ向きを変えていく。車体が軽いことに加えて前後タイヤが細いので、倒し込みや切り返しが軽く、このスポーティな雰囲気はドリーム50にそっくりだ。
視点が低いので、コーナリング中はアスファルトが近くに感じられ、それほどペースを上げなくても攻めている気分にさせられる。そして、ドリーム50と決定的に違うのはエンジンパワーで、上りコーナーでも失速せずグングンと前へ進む。
ブレーキはフロントがディスク、リヤがドラムで、ABSや前後連動システムはなし。リヤは絶対制動力こそ低いもののコントロールしやすく、フロントは高い速度域からでもしっかりと利いてくれる。
1960年代の小排気量レーサーを彷彿させるスタイリングに、現代の交通事情にも対応できる性能をプラスしたエース125S。このスタイリングに惚れたら買いだろう。
ライディングポジション&足着き性(175cm/65kg)
本国サイトでのシート高は780mm。座面が狭く、両足をほぼ真下に下ろすことができるので、足着き性は抜群にいい。着座位置からハンドルが遠く離れているが、切れ角は十分に確保されており、片側1車線の道路でも楽にUターンできるほど小回りしやすい。