燃費は250ccクラス相当、加速は1000ccクラス。Ninja 7ハイブリッドが放つ次世代モビリティ|Z e-1

往年のオートバイファンを唸らせるヘリテージモデルを出しながら、一方で最先端の環境対策モビリティとしてEV&ハイブリッドモーターサイクルを作ってしまうのがカワサキという企業の凄さ。二輪車では馴染みの薄い電動パワーを得た2台はどんなものなのか?その魅力をチェックしてみよう。



PHOTO●川島秀俊

大阪モーターサイクルショー2024では、カワサキブースの目立つ位置に展示された先鋭的な2台。世界初となるストロングハイブリッドモーターサイクルのNinja 7ハイブリッド(右)と、EVモーターサイクルのZ e-1(左)が来場者の注目を集めた。

E-BOOSTで1000cc並みの加速を発揮!
普段は250ccクラスの燃費で走るNinja 7ハイブリッド

オートバイでは難しいとされていたストロングハイブリッドモーターサイクル。この『ストロング』とは、モーターの駆動のみでも走行できるシステムのことで、搭載する部品点数が多くなるのがネック。異なる名称に『マイルド』ハイブリッドというのがあるが、これはエンジンパワーのアシスト専門で、比較的搭載しやすいシステムとなる。小排気量のスクーターなどに搭載されるハイブリッドシステムは、このマイルドハイブリッドに分類される。

当然、ストロングハイブリッドとなるとエンジン車にEVの機能を合体させねばならないので、車体は大きく&重くなる。コストや実用性を考えれば、市販車はもっと先かと思っていた。ところが、カワサキがやってくれました! いよいよ6月15日にストロングハイブリッドを搭載するNinja 7ハイブリッドを発売するのだ。

Ninja 7ハイブリッドに搭載するエンジンは451cc並列2気筒で、エンジン単体での最高出力は58ps。モーター単体では12psの最高出力があり、システム総合で69psを発揮する。モーターが得意とするのはむしろトルクの方で、エンジン単体の最大トルクが43N・mなのに対し、モーターの最大トルクは0~2,400rpmで36N・mを発揮。システム総合では60N・mとなるが、ゼロ発進から最大トルクを発揮するモーターの加速力は驚異的だ。

システム総合性能をフルに使う「SPORT-HYBRID」モードには瞬間的に5秒間作動する「E-BOOST」機能があり、これを作動させると1000ccクラスの加速が可能。その他の走行モードは、モーターで発進してエンジンが協調する「ECO-HYBRID」モードと、モーターのみで静音走行できる「EV」モードを搭載する。四輪車のプリウス的な走りができ「ECO-HYBRID」モードでは、600ccクラスの車格ながらNinja250と同等の低燃費を実現しているのだ。ちなみに「EV」モードでの航続距離は10km程度とのことだが、早朝に自宅を出る時や観光地での移動など、排気音にナーバスになるシーンで活躍するには十分といえるだろう。

そして意外に役立ちそうなのが、車庫入れなどに使用できる「ウォークモード」。スロットル操作にて前進3km/h、後進2km/hで自走でき、坂道も苦にせず取り回しできるのはありがたい。ミッションは電子制御の6速オートマチックで、左手元のセレクター操作でマニュアルシフトも可能。エンストの心配もなく、ゲーム感覚で操作できるNinja 7ハイブリッドの登場は、新たなバイクライフの扉を開くことになるだろう。

6月15日に発売されるNinja 7ハイブリッド。イメージとしては四輪車のプリウスのように走れるストロングハイブリッドモーターサイクルだ。
車格は600ccクラスでも、燃費は250ccクラスという優れた経済性を獲得。車体色はメタリックブライトシルバー×メタリックマットライムグリーンのみの設定だ。
451cc水冷4ストローク並列2気筒エンジンとモーターを組み合わせたストロングハイブリッドシステムを搭載。EVモードの航続距離は10kmほどだが、回生ブレーキの効果や走行条件により前後する。
電子制御6速オートマチックミッションなので、ミッションペダルは存在しない。エンストの心配はなく、車両が停止すると自動的に1速を選択してくれる。
左側スイッチボックスのセレクター操作でマニュアルシフトも可能。クラッチレバーはなく、ゲーム感覚でスポーティな走りが楽しめる。
アッパーカウル中央には、川崎重工グループの広範な技術力を結集した証としてリバーマークが輝く。スーパーチャージドエンジンを搭載するNinja H2などと同じく、カワサキの誇りを刻む歴史的モデルといえるのだ。

ガソリン給油が不要のEVコミューター
125cc登録で便利に使えるZ e-1

1月13日に発売されたEVオートバイのNinja e-1とZ e-1は、国内メーカーからは初登場となる本格的な電動二輪車。大阪モーターサイクルショー2024ではネイキッドモデルのZ e-1が展示され、そのディテールに関心の目が向けられた。

Z e-1の車体はZ250がベースで、車格はそのまま250ccクラス。エンジンの代わりにモーターを搭載するのでマフラーはなく、とてもスリムに仕上がっている。登録はモーターの出力から原付二種となっており、満充電での航続距離は約60kmとのこと。用途としては、本格的な車格が楽しめるシティコミューターというキャラクターだ。

Z e-1はEVなのでモーター出力をそのままアウトプットしており、ミッションやクラッチは搭載していない。スクーターのように、アクセルとブレーキだけで簡単に操作できる次世代のEVモーターサイクルだ。走行モードは電力消費を抑える「ECO」モードと、モーター出力をそのまま発揮する「ROAD」モードの2種類があり、どちらでも15秒間使える「E-BOOST」機能を搭載。一時的に加速と最高速をアップでき、ゲーム感覚でライディングが楽しめる。車体は135kgと軽量ながら、取り回しに便利なウォークモードによって極低速の前後進も可能。坂道での押し歩きや車庫入れなどで活躍しそうだ。充電方法は3通りあり、2個搭載するバッテリーを外す場合は充電器から直接充電するか充電ドック経由での充電が可能。バッテリーを車載したままなら、車載専用充電器で2個を順次充電できる。充電に必要な時間は最大で7.4時間だが、通常は継ぎ足し充電になるので、そこまで時間はかからないだろう。航続距離や充電時間の制約があるので用途は限定的にはなるが、EV補助金を活用すれば意外に安く購入できる場合がある。通勤や通学、普段のアシに125ccクラスの購入を検討している人には、選択肢のひとつとして考えるのもアリだ。

Z250のように見えて、登録は125ccクラスというZ e-1。脱着可能なバッテリーを2個搭載し、集合住宅でも運用が可能だ。回生ブレーキを装備するので、街乗りでのストップ&ゴーではトルクフルなモーター駆動と相まって最適なモビリティといえるかもしれない。
エンジンを搭載しないので、当然ながらマフラーも装備しない。スッキリした車体は135kgと軽量で、エキゾーストサウンドのない新感覚の走りが味わえる。
最高出力9.0kW(12ps)を発揮するブラシレスモーターを搭載。最大トルク40N・mを0~1,600rpmで味わえるのは、さすがEVというダッシュ力だ。登録が原付二種ということで、総合的な動力性能は125ccクラスに準じている。
ミッションがないのでシフトペダルもなく、靴が傷つかないのは通勤ユースには最適。最先端のEVなら、ガソリン不要でスクーターよりもワクワクする日常が味わえそうだ。
クラッチがないので、ハンドル左側のレバーもナシ。AT小型限定普通二輪免許で250ccクラスの車両に乗れるのは、ある意味サプライズといえるだろう。

Ninja 7 ハイブリッド/主要諸元

Ninja 7 ハイブリッド/主要諸元

全長:2,145mm
全幅:750mm
全高:1,135mm
シート高:795mm
乗車定員:2人
排気量:451cc
車両重量:228kg
エンジン:水冷4ストロークDOHC4バルブ並列2気筒
エンジン最高出力:43kW (58ps)/10,500rpm
エンジン最大トルク:43Nm(4.4kgf・m)/7,500rpm
モーター最高出力:9.0kW (12ps)/2,600~4,000rpm
モーター最大トルク:36Nm(3.7kgf・m)/2,400rpm
システム最高出力:51kW (69ps)/10,500rpm
システム最大トルク:60Nm(6.1kgf・m)/2,800rpm
トランスミッション:電子制御式マニュアルモード付オートマチック6速リターン
フューエルタンク:14L
ブレーキ:前 ダブルディスク、後 ディスク
タイヤサイズ:前 120/70ZR17M/C 58W、後 160/60ZR17M/C 69W

メーカー希望小売価格(消費税10%を含む):¥1,848,000

Z e-1/主要諸元

主要諸元・Z e-1

全長:1,980mm
全幅:730mm
全高:1,035mm
シート高:785mm
乗車定員:2人
バッテリー総電圧/総電力量:50.4V/30Ah×2
車両重量:135kg(バッテリー2個含む)

モーター:交流同期電動機
定格出力:0.98kW
最高出力:9.0kW (12ps)/2,600~4,000rpm
最大トルク:40Nm(4.1kgf・m)/0~1,600rpm
トランスミッション:オートマチック
バッテリー:リチウムイオンバッテリーパック×2(11.5kg×2)
ブレーキ:前 ディスク、後 ディスク
タイヤサイズ:前 100/80-17M/C 52S、後 130/70-17M/C 62S

メーカー希望小売価格(消費税10%を含む):¥1,012,000

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