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CBR600RRってどんなバイク?
CBR600RRは、ホンダのスーパースポーツCBRシリーズに属するミドルクラスのフルカウルモデルだ。軽量で扱いやすい車体やエンジンなどにより、ワインディングなどで爽快な走りを楽しめるほか、市販車ベースのプロダクションレースでも高い戦闘力を発揮することも魅力だ。
現行モデルは、2020年に登場。エンジンには、最高出力89kW(121PS)を発揮する599cc・水冷4ストローク直列4気筒を搭載し、最高出力を1万4250rpmもの高回転域で発生させる設定により、レースにも対応する高い動力性能を確保している。
また、世界最高峰の2輪車レース「MotoGP」で活躍するワークスマシン「RC213V」で培った空力性能も投入。特に、アッパーカウル左右にあるウイングレットは、効果的にダウンフォースを発生させることで、コーナー進入時の安定感はもちろん、高い旋回性能などにも貢献する。
車体や足まわりには、アルミ製スイングアーム付きツインスパー・アルミフレーム、ショーワ製の41mm径BPF(ビッグ・ピストン・フロントフォーク)、ユニットプロリンク・リアショックなどを装備。これらにより、敏捷な旋回性と優れた安定感を両立したハンドリングを体感できる。
さらに、CBR1000RR-Rファイヤーブレード譲りのIMU(6軸慣性計測ユニット)やスロットルバイワイヤなどの搭載により、最新の電子制御システムも数多く投入。
パワーセレクター(5段階)、トラクションコントロールのHSTC(9段階+オフ)、ウイリー挙動制御(3段階+オフ)、セレクタブルエンジンブレーキ(3段階)といった多様な制御を持つだけでなく、それぞれを細かく調整することも可能だ。
また、これらを組み合わせることで走行状況やライダーの好みに応じた選択が可能なライディングモードには、あらかじめ設定された3モードに加え、ライダーの好みによって設定を変更できる2モードも用意する。
最新の2024年モデルでは、カラーリングを刷新したほか、エンジンの出力などはそのままに、最新の平成32年(令和2年)排出ガス規制に適合。クラッチレバーの操作なしで素早いシフトアップ・シフトダウンを可能とする「クイックシフター」は、従来のオプション設定から標準設定とすることで、装備の充実度をさらにアップさせている。
価格(税込)は)157万3000円〜160万6000円だ。
ニンジャZX-6Rってどんなバイク?
一方のニンジャZX-6R。大きな特徴は、街乗りから高速道路、ワインディングからサーキットまで、様々な場面で爽快なライディングを味わえるように最適化されたエンジンや車体を持つことだ。
エンジンには、排気量636cc・水冷並列4気筒を採用。一般的な600ccクラスのスーパースポーツと比べ、37ccも大きい排気量とすることで、全回転域で扱いやすく、しかもパワフルな乗り味を体感できることが特徴だ。
また、最高出力は122PSを発揮するうえ、走行風を採り入れることでパワーを増大させるラムエア機構も採用し、最大128PSものハイパワーを発揮。クラストップレベルの余裕ある走りが堪能できる。
車体には、独自のアルミ製ペリメターフレームを採用。WorldSBK(スーパーバイク世界選手権)など、数々のレースで培った技術を投入したフレームにより、俊敏なハンドリングはもちろん、コーナリング中の安定感や、走行ラインを自在に変えられる自由度の高いハンドリングなどを実現している。
フロントの倒立サスペンションには、ショーワ製SFF-BP(セパレートファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)」を装備。片側フォークに減衰機構とスプリング、もう一方のフォークにはスプリングのみを装備するこのフォークは、摺動抵抗の低減と車体の軽量化に貢献。サーキットでのパフォーマンスと日常での使いやすさを両立している。
電子制御システムには、様々な状況において安定した車体の挙動維持をサポートするKTRC(カワサキトラクションコントロール)、クラッチ操作なしにシフトアップを可能にするKQS(カワサキクイックシフター)を装備。
また、トラクションコントロールのレベルとパワーモード(フルパワーまたはローパワー)を組み合わせたインテグレーテッドライディングモードも用意する。「スポーツ」「ロード」「レイン」「ライダー(マニュアル設定)」といった4つのモードから選択可能で、路面コンディションや天候、ライダーの好みに合わせたセットアップをできる。
最新の2024年モデルでは、スタイルを刷新。1000ccスーパースポーツ「ニンジャZX-10R」からインスパイアを受け、それをさらに進化させたという新デザインを採用している。
フロントカウルには、立体感のあるレイヤー(積層)構造を採用。ニンジャZX-10Rが、優れた空力性能を発揮するウイングレットを一体化したアッパーカウルを採用するのに対し、ニンジャZX-6Rではウイングレット形状のインレットを装備。加えて、ヘッドライト下にはチンスポイラーも採用することで、より個性的な顔付きを演出している。
また、プロジェクターとリフレクターを組み合わせた新型ヘッドライトは、単焦点LEDテクノロジーに加え、リフレクターを深くセットすることで、ヘッドライトユニットの陰影を強調。表情により力強さも加味している。
ラインアップには、カワサキ製レーシングマシンのカラーをイメージした「ニンジャZX-6R KRTエディション」と、スタンダードの「ニンジャZX-6R」を用意。
また、ニンジャ・ブランドの誕生40周年を記念した「ニンジャ40thアニバーサリーエディション(Ninja 40th Anniversary Edition)」も設定。1990年型「ZXR400R」などに施された「ブルー×ライムグリーン×ホワイト」のカラーを施した特別仕様車も用意する。
価格(税込)は156万2000円〜159万5000円だ。
車体サイズはほぼ同じだが、車重はZX-6Rの方が重い
以上が、CBR600RRとニンジャZX-6Rの概要だが、まずは車体を比較してみよう。各モデルのボディサイズは以下の通りだ。
●CBR600RRのサイズ・重量
・全長2030mm×全幅685mm×全高1140mm
・ホイールベース1370mm
・シート高820mm
・車両重量193kg
・最小回転半径:3.2m
●ニンジャZX-6Rのサイズ・重量
・全長2025mm×全幅710mm×全高1105mm
・ホイールベース1400mm
・シート高830mm
・車両重量199kg
・最小回転半径:3.4m
全幅はニンジャZX-6R、全長や全高はCBR600RRの方がやや大きいが、2モデルはほぼ同サイズといえるだろう。また、シート高は、10mmほどニンジャZX-6Rの方が高いが、足着き性の面でも、ほぼ互角といえるのではないだろうか。
ただし、車両重量は、ニンジャZX-6Rの方が6kgほど重いし、ホイールベースもニンジャZX-6Rの方が30mmほど長い。こうした差により、例えば、狭い駐車場などで押し歩きする際などには、多少違いが出るかもしれないが、最小回転半径はほぼ同じだし、2台を取り回す際に、優劣はあまりないことがうかがえる。
パワーや加速力などに優れるのはどちら?
一方、両モデルのエンジン。それぞれのスペックは、以下の通りだ。
●CBR600RRのエンジンスペック
・排気量・形式:599cc・水冷4ストローク直列4気筒
・最高出力:89kW(121PS)/14250rpm
・最大トルク:63N・m(6.4kgf-m)/11500rpm
●ニンジャZX-6Rのエンジンスペック
・排気量・形式:636cc・水冷4ストローク並列4気筒
・最高出力:90kW(122PS)/13000rpm *ラムエア加圧時94kW(128PS)/13000rpm
・最大トルク:69N・m(7.0kgf-m)/11000rpm
2024年型でモデルチェンジした新型ニンジャZX-6Rは、従来型モデルの126PS/13500rpmに対し、122PS/13000rpmへとパワーも回転数もダウン。CBR600RRとのパワー差は1PSに接近している。
そのため、パワーウエイトレシオでは、車両重量199kgのニンジャZX-6Rが1.63kg/PS。対するCBR600RRは、より軽い車両重量193kgなので、1.59kg/PSと上回る。ただし、ニンジャZX-6Rは、ラムエア加圧時に128PSを発揮するため、その際のパワーウエイトレシオはスペック上では1.55kg/PSとなるため、瞬発力などは走行状況によるといえるだろう。
また、排気量が+37cc大きいニンジャZX-6Rは、そのぶん、トルクにもやや余裕ある。例えば、信号待ちからのゼロ発進などでは、よりスムーズな加速を味わえるなど、低・中回転域の扱いやすさでは、CBR600RRを凌ぐことが考えられる。
ツーリング時に給油回数が少ないのは?
ただし、CBR600RRは燃料タンク容量18Lで、燃費はWMTCモード値18.5km/Lだから、1回の満タンで走れる距離はスペック上では333kmとなる。
対するニンジャZX-6Rは、燃料タンク容量17Lで、燃費はWMTCモード値16.2km/L。1回の満タンで走れる距離はスペック上で275.4km。CBR600RRの方が、57.6kmほど長く走ることのできる計算だ。
これらは、あくまでカタログ数値上のデータなので、走行条件や走り方などでも変わってくるが、長距離ツーリングでは、CBR600RRの方が給油回数を少なくできることが予想できる。
電子制御の充実度はCBR600RRが上
次は装備面。特に、CBR600RRの電子制御システムは、ニンジャZX-6Rと比べ、かなり充実しているといえる。前述の通り、IMUを搭載することで、車体の角速度、加速度を検出し、独自のアルゴリズムによる車体姿勢角演算を1秒間に100回というスピードで実施。これにより、車体姿勢推定の精度を高めている。
そして、これらIMUからの情報を、後輪のスリップなどを電子的に制御するHSTCやABSなどとマッチング。走行状況に応じた「操る喜び」を、高次元かつ存分に味わえる機能を持たせているのだ。
これらにより、これも先述のように、細かい設定が可能なライディングモードなどを用意。また、フロントには電子制御方式の油圧ステアリングダンパーも装備する。これは、車速と加速度をセンサーが感知して、ECUでダンパーの減衰特性を制御するもの。低速走行時には軽快な取りまわしを、高速走行時では路面からの外乱を抑え、安心感の高いハンドリングを実現するという。
CBR600RRは、これら装備により、ワインディングやサーキットなどのスポーツ走行で、より走行状況やライダーの好みなどに応じたセットアップが可能。特に、レース・ユースにも十分対応できるモデルだといえる。
ニンジャZX-6Rはスマホ連携機能が便利
対するニンジャZX-6Rは、2024年モデルで採用した4.3インチTFTカラー液晶インストゥルメントパネルに、スマートフォン接続機能も付与したことが注目だ。
専用アプリ「RIDEOLOGY THE APP」をインストールしたスマートフォンをブルートゥースで車両と接続することで、さまざまな情報の確認や操作を簡単に行える。
例えば、スマートフォンのアプリで、オドメーターや航続可能距離、メンテナンススケジュールなど、車両状況に関する情報を確認したり、走行した日時やルート、走行距離・走行時間を保存することも可能。
さらに、アプリを使って、トラクションコントロールや電子制御サスペンションの設定などもできる。ほかにも、スマートフォンに電話着信やメール/メッセージ受信があると、メーターにアイコンを表示して通知するといった機能もある。
CBR600RRには、こうした機能はないため、スマートフォンとの連携で、よりユーザーの利便性を高めているという点では、ニンジャZX-6Rに軍配が上がるだろう。
ストリート派のZX-6R、レースにも対応するCBR600RR
このように、同じ600cc・4気筒の国産スーパースポーツながら、CBR600RRとニンジャZX-6Rでは、それぞれ個性が違う。CBR600RRでは、よりサーキット走行やレースまで見据えた装備を持つことが特徴。一方、ニンジャZX-6Rは、ストリートでの快適性や利便性も考慮していることが魅力だ。
そう考えると、あくまで私見だが、よりストリート・ユースを重視するならニンジャZX-6R。ワインディングやサーキットでのスポーツ走行、さらにはレース参戦まで視野に入れるのならCBR600RRといった選択になるのではないだろうか。
もちろん、CBR600RRもストリートに十分対応するし、逆にニンジャZX-6Rは、ワインディングやサーキットでもかなり楽しめることは確か。結果的に、どちらを選ぶかは、月並みだが好みの問題。いずれにしろ、両モデルは、スポーティなスタイルや走りが好きなライダーに最適である点は同じだといえるだろう。
【CBR600RR主要諸元】
■全長2030mm×全幅685mm×全高1140mm■軸距1370mm■シート高820mm■車両重量193kg■エンジン:599cc・水冷4ストローク直列4気筒■最高出力89kW(121PS)/14250rpm■最大トルク63N・m(6.4kgf-m)/11500rpm■ギア:6速■燃料タンク容量18L■燃費:WMTCモード値18.5km/L■タイヤ:前120/70ZR17、後180/55ZR17■価格(税込)157万3000円〜160万6000円
【ニンジャZX-6R主要諸元】
■全長2025mm×全幅710mm×全高1105mm■軸距1400mm■シート高830mm■車両重量199kg■エンジン:636cc・水冷4ストローク並列4気筒■最高出力90kW(122PS)/13000rpm *ラムエア加圧時94kW(128PS)/13000rpm■最大トルク69N・m(7.0kgf-m)/11000rpm■ギア:6速■燃料タンク容量17L■燃費:WMTCモード値16.2km/L■タイヤ:前120/70ZR17、後180/55ZR17■価格(税込)156万2000円〜159万5000円