競う中にも楽しむ姿勢が垣間見える
設立から66周年を迎えた全日本モーターサイクルクラブ連盟(MCFAJ)は、ロードレース、モトクロス、トライアル(現在休止中)の各レースを主催している団体です。対象はあくまでもアマチュアで、どのレースも和気あいあいとした雰囲気で行われているのが特色です。そのため参加者も20代から80代と幅広く、出場マシンも50年代、60年代のビンテージバイクから最新型まで千差万別。さらに50㏄からリッターオーバーまでクラス分けされていて、参加者それぞれの志向が反映されたレースが展開されています。
現在は全国各地のサーキットでさまざまなレースが開催されていますが、アマチュアレースとしてはおそらく、MCFAJクラブマンロードレースが国内最大級だと思います。
6月9日(日)、2024年度の第2戦が静岡県富士スピードウエイを舞台に開催されました。レースカテゴリーは11あり、1日ですべてのレースの予選、決勝が行われます。
全日本選手権ロードレースとちがい、参戦するマシンのほとんどは旧車と呼ばれる古いバイクです。なので普通に走れるように修理、調整するだけでも苦労するはずなのに、ライダーもマシンもみな、サーキットをガンガン走るのですから驚きます。しかも、勝敗にこだわらず、自らがコツコツ仕上げたマシンでレースをすることに喜びを感じているのですから、まさに究極の趣味だといえるでしょう。
国内外のこうした古いマシンが疾走する姿を観るのも楽しいのですが、この第2戦からはもうひとつ、新たなカテゴリーのマシンが登場しました。バガーレーサーです。
バガーレースというのは、2020年にアメリカで始まった「キング・オブ・バガーレース」のことで、バガー、つまりバッグ装備の大型ツアラーによるロードレースで、現在はハーレー・ダビッドソンやインディアンのマシンによって争われています。レーシングマシンは本来、レギュレーションの範囲内で極力軽量化するのが常識です。加速、減速、そして運動性能を高める狙いがあるからです。しかしバガーレーサーは大型フェアリングにサドルバッグとツアラー性能を高める仕様そのままのスタイルです。サーキット走行に適合させるためエンジン、シャーシ、足回りなどはもちろん強化されパフォーマンスを高めていますが、外観上は一般的なツアラーそのものです。そんな大型ツアラーがサーキットを疾走するさまは迫力満点。本場アメリカでは人気のレースカテゴリーとなっています。
国内初参戦となるバガーレーサーでMAX10グループにエントリーしたのは、以前からAVCCに旧型のハーレーFLH1450で参戦していた長瀬智也氏(CHALLENGER RACING)、西田 裕氏( JOYRIDE SPEED SHOP)、伊藤 毅氏(ROUGH MOTORCYCLE)3名から成るJAPANESE CHOPPER RACING。マシンは長瀬氏がハーレーFLTRX-ST、伊藤氏がインディアンCHALLENGER-RRそして西田氏がFLTRXです。
3台のバガーレーサーが納められたパドック内のテントの周囲には、黒山の人だかりができていました。長瀬氏が自身のインスタグラムで事前に告知したことで、TV報道を含めて20社近いメディアが取材に訪れていました。MCFAJのレースは通常、数社の取材があるだけなので、長瀬氏の呼びかけが多くの注目を集めることとなったのです。また、普段サーキットでは見かけることが少ない若い女性の姿も多くありました。
長瀬氏らがバガーレースを初開催させるまでにはいくつもハードルがあったはずです。しかしバイクに対する熱い思いやたくさんの協力者によって今回実現できたのです。そして実際に、3台のバガーレーサーが富士スピードウエイを疾走するシーンは圧巻でした。次回最終戦は、11月10日(日)に茨城県筑波サーキットで開催されます。ぜひ足を運んでみてはどうでしょう。