新型MT-09|4代目でついに完成の領域へ。フォルム刷新で、ビギナーにも勧められる秀作へと進化

「シンクロナイズド・パフォーマンスバイク」をコンセプトに、2014年に誕生したヤマハのMT-09。10周年を迎えた今年、待望の4代目がリリースされた。トレーサー9やXSR900、ナイケン、そしてXSR900GPと、CP3シリーズとして次々とバリエーションモデルを増やす中、ベースモデルはどのように進化したのか。今回はSTDモデルを紹介しよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ディテール解説

鍛造ピストンやFSコンロッド、オフセット&ダイレクトメッキシリンダーなどを採用する、888cc水冷並列DOHC4バルブ3気筒“CP3”エンジン。基本的にハード面の変更なはいが、ライディングモードは4種類の「D-MODE」から、プリセット3種類+カスタム2種類の「YRC(ヤマハ・ライド・コントロール)」へ。そのほか、エンジン懸架ブラケットの形状と肉厚を変更し、シャシー剛性を向上させている。
ステップはヒールガードを別体式とした新デザインに。バーの位置は従来比で約3cmバック&約1cmアップし、プレートごと高さを2段階に調整できる機能を継続。双方向クイックシフターは第3世代となり、加速中のシフトダウンや減速中のシフトアップにも対応する。なお、ブレーキペダルは鉄プレス成形からアルミ鍛造となり、質感が大幅にアップ。
前後ともヤマハ独自のスピンフォージドホイールを採用。標準装備タイヤはブリヂストンのS22からS23へ。フロントキャリパーはアドヴィックス製ラジアルマウント対向式4ピストンだ。
リヤキャリパーはニッシン製シングルピストン。スイングアームはアルミ製だ。リヤサスはリンクの設計を変更し、旋回中の車体姿勢/荷重配分をそれぞれ最適化。
倒立式フロントフォークはバネレートをアップし、合わせて減衰特性も見直している。トップキャップにはプリロード(無段階15mm)と伸び側減衰力(11段、右側)、圧側減衰力(左側、11段)のアジャスターあり。なお、ハンドル位置は2段階に調整可能だ。
リヤショックユニットはプリロード(7段、カム式)と伸び側減衰力(2 1/2回転)の調整が可能だ。
中央のバイファンクショナルLEDヘッドライトは、小型で薄い小径レンズモジュールを採用してイメージを一新。その両サイドにあるのがポジションランプだ。
テールランプは新デザインとなり、レンズを上下で色分けすることによってイメージを一新。ウインカーには急ブレーキの際にハザードを点滅させるエマージェンシーストップシグナル機能を追加した。
ハンドルバーは約3.4cm下方へ。さらに幅も広がったようで、車両の全幅は795mmから820mmへと増えている。先代もラジアルポンプのマスターシリンダーを採用していたが、新型はこれがブレンボ製に。アジャスター付きのクラッチレバーは完全新作だ。ミラーは新デザインで、ステーがシンプルな形状となった。ハンドル切れ角を片側28度から32度に増やしつつ、従来と同じガソリン容量を確保するため、燃料タンクは天面を30mm下げつつ最大幅を6mm増やしている。このタンクにおいて最も小さな曲がりはR5(半径5mm)で、これは新たに開発された高意匠プレス成形なくしては達成できないものだ。
メーターは従来の3.5インチから5インチTFTディスプレイへ。表示画面はテーマ1~4の4種類から選べる。PWR(パワーデリバリーモード)、TCS(トラクションコントロールシステム)、SCS(スライドコントロールシステム)、LIF(リフトコントロールシステム)が細かく設定できるほか、BC(ブレーキコントロール)のオン/オフ が可能。さらに新型ではBSR(バックスリップレギュレーラー)が追加されている。スマホとの連携機能「Y-Connect」も搭載し、ナビ画面を表示させることも可能だ。
XSR900GPと同様に新設計の統合ハンドルスイッチを採用。ウインカーには新たに二段階フラッシャー機能や消し忘れ機能が追加されている。また、先代ではSPのみだったクルーズコントロールも新採用。
シートは4代目にして初めて前後別体式となり、さらに塗色のあるテールカウルを採用したのもこの新型が初となる。タンクの側面へと伸びるシート前端部は、ラインディングパンツによっては引っ掛かりやすい。
フレームと同じCFアルミダイキャスト製のシートレールは新作で、剛性を最適化しつつ電装品の搭載スペースを確保。さらに幅が最大で14mmも絞り込まれており、足着き性の向上にも貢献している。USBタイプCコネクター(5V 3A)をバッテリーの隣に追加。キーロックされているタンデムシートを外すと、ライダーシートも工具なしで外せる仕組みだ。

ヤマハ MT-09 ABS 主要諸元

認定型式/原動機打刻型式 8BL-RN87J/N722E
全長/全幅/全高 2,090mm/820mm/1,145mm
シート高 825mm
軸間距離 1,430mm
最低地上高 140mm
車両重量 193kg
燃料消費率 国土交通省届出値
定地燃費値 31.6km/L(60km/h) 2名乗車時
WMTCモード値 21.1km/L(クラス3, サブクラス3-2) 1名乗車時
原動機種類 水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ
気筒数配列 直列、3気筒
総排気量 888cm3
内径×行程 78.0mm×62.0mm
圧縮比 11.5:1
最高出力 88kW(120PS)/10,000r/min
最大トルク 93N・m(9.5kgf・m)/7,000r/min
始動方式 セルフ式
潤滑方式 ウェットサンプ
エンジンオイル容量 3.50L
燃料タンク容量 14L(無鉛プレミアムガソリン指定)
吸気・燃料装置/燃料供給方式 フューエルインジェクション
点火方式 TCI(トランジスタ式)
バッテリー容量/型式 12V, 8.6Ah(10HR)/YTZ10S
1次減速比/2次減速比 1.680/2.812 (79/47×45/16)
クラッチ形式 湿式、多板
変速装置/変速方式 常時噛合式6速/リターン式
変速比 1速:2.571 2速:1.947 3速:1.619 4速:1.380 5速:1.190 6速:1.037
フレーム形式 ダイヤモンド
キャスター/トレール 24°40′/108mm
タイヤサイズ(前/後) 120/70ZR17M/C (58W)(チューブレス)/ 180/55ZR17M/C (73W)(チューブレス)
制動装置形式(前/後) 油圧式ダブルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ
懸架方式(前/後) テレスコピック/スイングアーム(リンク式)
ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ LED/LED
乗車定員 2名


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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…