見た目はちょっと野暮ったい、エンジンは昔のシングルみたいな感じ。現代に蘇った名車BSAゴールドスターに大感動!

20世紀初頭から数々の名車を生み出してきたイギリスのBSAを代表するマシンがゴールドスターだ。高い性能と美しいデザインで知られ、当時最速を競っていた1台だった。その名前を受け継ぎ、現代に蘇った新生ゴールドスターは、その名に恥じない走りを見せてくれた。

REPORT●後藤 武
PHOTO●山田俊輔

取材協力●ウイングフット株式会社 https://wingfoot.co.jp

BSA・ゴールドスター……1,221,000円〜(消費税込み)

19世紀後半、イギリスで創業したBSA(バーミンガム・スモール・アームズ)は数々の名車を生み出したが1973年に二輪の生産を終了した。このブランドを買い取ったのがインドのマヒンドラグループ。クラシックレジェンド社を設立して21世紀のゴールドスターを開発することになった。

資本はインドだがテクノロジーはヨーロッパが中心だ。エンジンはBMW F650に搭載されていたロータックスをベースとし、イギリスでレイアウトを変更。シリンダーを直立させてイメージを一新し、ヘッドも新たに設計されている。

フレームのデザインもイギリスで行われた。旧車らしさが漂うスタイリングでまとめられていて存在感もある。旧車好きなテスターはこのマシンを最初に見たとき「いいじゃないか」と声が出てしまったほどである。

昔のゴルディー(ゴールドスターの愛称)のような艷やかさはなく、どちらかというと野暮ったいというか、実用車っぽい雰囲気なのだけれど、それもまた悪くないと思う。

野暮ったい感じになってしまっている要因の一つは塗装だ。旧車だったら金属パーツの多くが磨かれて鈍く光っているのだけれどそれがない。エンジン周辺のパーツはほとんどすべてペイントされているし、ハンドル周りのパーツほとんどがブラック塗装になっている。細かく見ていくと当時をイメージしてデザインされた部品も「惜しい」と思うものが多い。しかし逆を言えばカスタムのしがいがあるということ。塗装を落として磨きあげるだけでもイメージが激変するはずだ。

2面性を持ったバーチカルエンジン

エンジンは100mm✕83mmというショートストロークの設定(F650と同じ)なのだが、フライホイールマスがタップリ取られていることもあって、低回転域では昔のシングルエンジン的なフィーリングが実によく演出されている。低回転でスロットルを開ければ、ドコドコという鼓動感、排気音とともに力強く加速していく。

このフィーリングは2500rpmくらいまで続く。これくらい低い回転域でも交通の流れをリードすることは簡単だ。トップギア、60km/hで走ってる時の回転は2400rpmを少し下回るくらいなので、普通にストリートを流して走っている時はこのドコドコ感を存分に楽しむことができる。ミッションがワイドな5速だから忙しくギアチェンジする必要がないというところもこのエンジン特性にとてもマッチしている。

最初は低回転だけ使って楽しんでいたものだからレトロな味付けのエンジンかと思っていたらとんでもなかった。広い道に出て回転を上げてみると3000rpmくらいからフィーリングが変わったのだ。さっきまでのノンビリした感じが消えて俄然シャープに回るようになった。4000rpm前後はとても力強くてスポーティーである。
しかもトルクで重いフライホイールをぶん回しているから力量感が素晴らしい。最近は軽いフライホイールマスでシュンシュン回るシングルが多いが、まったくの別物。個人的には最近のシングルで最も気に入ったフィーリングである。

レブリミットは7000rpm。振動対策に気を使ったというだけあって高回転まで回しても振動はそれほど多くない。650もあるシングルなのでハンドルとタンクには若干振動が出るが気にならないレベルまで消されている。性能とフィーリングだけでなく扱いやすさや快適性までが高いレベルでバランスしているエンジンである。

ストリートではサスペンションがソフトなので乗り心地も良好。スピードが出ているときに大きめのギャップを越えたりするとストロークを使い切ってしまうようで後ろから跳ね上げられるようなショックを感じたことがあったけれど、普通に走ってる分には不足なし。ブレーキもとても良く利いてコントローラブルだった。

驚くべきコーナーリング性能

エンジン以上に驚かされたのがハンドリングだった。実にスポーティに走ることができるのだ。倒し込み自体は軽快なのだが、ステアリングの反応がドッシリしていて安定感が高め。個人的にはもう少しシャープな方が好みだけれど、それはライダーの好みの問題。現状でも相当に思い切ったライディングができる。しかも前述したエンジンだから立ち上がり加速も鋭い。バンク角も深いので乗り手によってはワインディングを駆け抜ける。スポーツバイクに乗っているライダー達を驚かせることになるだろう。

フロントフォークが柔らかめで下り坂でフロントの荷重が増えると若干ステアリングが切れ込むような感じがあるけれど、もしも気になるならフロントフォークのイニシャルをちょっと強めにかけてみるくらいで対策できるはず。ワインディングを走ったかぎりでは車体とサスペンションの出来はかなり良い。少し手を加えてサーキットを走ってみたいと思ってしまうくらい面白いバイクだった。

新生ゴールドスターは単に当時を彷彿させるデザインとテイストだけでなく、最新のテクロジーで高い性能を実現しているところは素晴らしいと思う。単気筒エンジンを搭載したレトロテイストなマシンで、ここまで本気でスポーツ性を追求したマシンは他に思いつかない。ノンビリとシングルの楽しさを味わいたいライダーだけでなく、シングルでスポーツライディングしたいライダーにもオススメしたいマシンである。

ポジション&足つき(身長178cm・体重75kg)

ポジションは自然で無理がない。長時間走っても疲れは少ないだろう。

車体がスリムなので足つきは良好。両足をついても膝が曲がる。

ディテール

メーターの0が右上にあるメーター。当時をイメージしたデザインである。タコとスピードの中間にインジケーター類がまとめられている。
リアショックはタンクなしのオーソドックスなタイプ。動き自体は悪くない。乗り心地も良好だがセッティングがソフトなのでハイスピードでギャップを越えたときはショックを吸収しきれないことがあった。サイドカバーを囲むフレームのループが美しい
リアブレーキはディスク。コントロールしやすいのでスポーツライディング時のスピード、姿勢の調整に活用できる。
サイドカバー前の目立たない部分に電源ソケットを装備。
フラットなシートも当時をイメージしたものだろう。2時間ほどぶっ通しで走ったがお尻が痛くなることはなかった。
左スイッチはディマー、ウインカー、ホーンのみのシンプルなデザイン。スイッチボックスはクラシカルなデザインに交換したくなる。
右スイッチはキル、スターター、ハザードの各スイッチを配置。当時を意識してカスタムするならこのあたりもシンプルにスッキリとさせたい。

 

 

ハンドルにはUSBのタイプ AとタイプCの電源取り出し口を装備。様々なデバイスへの給電が可能だ。
ヘッドライトレンズにはBSAのロゴが刻まれている。
小型のウインカーとテールランプ。メッキフェンダーにしてクラシカルなランプ類に変更するとイメージが変わりそうな感じ。
ハンドルは低めのコンチ。ハンドルやスイッチ類はブラックになっているが、メッキのハンドルにしてスイッチやトップブリッジをアルミにするとレトロなイメージが引き立つだろう。
フロントタイヤは100/90-18。アルミのスポークリムにピレリのファントム・スポーツコンプを履く。
320mmのディスクにブレンボキャリパーの組み合わせ。シングルディスクだがスポーツライディングにおいても制動力は十分。
最大トルク55Nmを4000rpmという低回転で発生させるエンジン。 最大出力は45ps(33.6Kw)/6500rpm。

●BSA GOLDSTAR PRICE
・SILVER SHEEN ……1,353,000円(消費税込)
・MIDNIGHT BLACK ……1,276,000円(消費税込)
・DAWN SILVER ……1,276,000円(消費税込)
・INSIGNIA RED ……1,276,000円(消費税込)
・HIGHLAND GREEN ……1,221,000円(消費税込)

●ENGINE
Engine Type:4 Stroke, Single Cylinder, Liquid Cooled, Spark Ignition, DOHC
Starting Type:Self-Start
Air Filter Element:Paper type
Max Torque:55 Nm@4000 rpm
Power:33.6 Kw/ 45hp@ 6500 rpm
Bore and Stroke:100×83 mm
Compression Ratio:11.5± 0.5
Displacement:652 cm3
Spark Plug (Standard):Champion RA7YC
Spark Plug Gap:0.8 – 0.9 mm
Valve Clearance (Cold):Intake: 0.1 ~ 0.15 mm Exhaust: 0.25 ~ 0.3 mm
Idle rpm:1500 ± 100 rpm
Lubrication:Dry Sump, Forced Lubrication
Engine Oil Grade:MOTUL H-TECH 100 4T 10W 50 CASTROL 10W50 JASO MA-2
Engine Oil Capacity- Overhauling:2.5 Litre
Engine Oil Capacity-Service Fill:2.3 Litre
Front Sprocket:16 Teeth
Rear Wheel Sprocket:47 Teeth
Fuel System:EFI (Electronic Fuel Injection)
Cooling System:Liquid Cooled
Coolant Capacity:1760 ml
Coolant Grade:
 MOTUL INUGEL EXPERT CASTROL REDICOOL HD (PREMIX)
 BSA GOLD STAR 650 TECHNICAL SPECIFICATIONS

●TRANSMISSION
Clutch:Wet Multiplate
Primary Ratio: 1:1.946
Final Ratio: 1:2.938
Gear Box:Constant Mesh 5 Speed (Manual)
Gear Ratio:
 1st : 1:2.75
 2nd: 1:1.75
 3rd: 1:1.313
 4th: 1:1.045
 5th : 1:0.875
Final Drive:Chain Drive

●CHASSIS AND SUSPENSION
Drive Chain Links:106 Links
Chassis Type:Tubular
Front Suspension:Telescopic hydraulic fork with cover tubes, 120 mm stroke
Rear Suspension:Twin shock absorber, 5 step adjustable, 108 mm wheel travel
Fork Oil Qty:400 ml/ Leg

●BRAKES – Dual Channel ABS
 Front Disc brake 320 mm dia, Floating type caliper, ABS
 Rear Disc brake 255 mm dia, Floating type caliper, ABS
Brake Oil Grade:DOT4

●TYRES SIZE
 Front 100/90-18, Tubeless with tube, Pirelli phantom sportscomp
 Rear 150/70-17, Tubeless with tube, Pirelli phantom sportscomp

●TYRES PRESSURE
 FRONT Solo: 1.9 kgf/ cm2 (28 psi)・With Pillion: 1.9 kgf/ cm2 (28 psi)
 REAR Solo: 2.1 kgf/ cm2 (30 psi)・With Pillion: 2.39 kgf/ cm2 (34 psi)

●FUEL
Fuel grade:El0 (RON 95)
Fuel tank capacity:12.0 Litre
Reserve:3.0 Litre ± 200 ml (Including dead volume)

●ELECTRICALS
Generation:Alternator/ magneto (350W)
Battery:12V, (11.2 Ah)
Head Lamp:12V, (60/55 W)
Tail Lamp/ Brake Light:0.48W/ 1.68W (5 nos. LED)
Indicator:1.8W LED (1 Nos.)
Horn:12VDC
Starter Motor Power:900W
Fuse Capacity:SA, l0A, 15A, 20A & 30A
License Plate Lamp:12V LED, 0.54W (2 Nos.)

●TECHNICAL SPECIFICATIONS
USB-A:Type 2.4A
USB-CType:3A
Power Socket:12V (SA max)
Kerb Weight (With 90% Fuel,Tools etc.):213.5 Kg
Overall Length:2206mm
Overall Width:817mm
Overall Height:1093mm
Wheelbase:1425mm
Minimum Ground Clearance:150mm
Seat Height:782mm
Rear Chain Slackness25-30mm

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