排気量250ccのVツイン、ヒョースンGV250Rアバンギャルド|個性的なデザインと完成度の高さが魅力

ヒョースンのGV250Rアバンギャルドは水冷Vツインエンジンを搭載したクルーザーモデルだ。韓国で生まれたこのマシンは充実した装備と個性的なデザインが特徴。今回はそんなヒョースンのGV250Rアバンギャルドがどんな走りをしてくれるのか、ストリートを中心に行ったインプレッションをお伝えしたいと思う。

新生ヒョースンの作った250クルーザー

ヒョースンは韓国のモーターサイクルブランドだ。1978年にHyosung machine industry社が設立されたとき、一部門として日本製バイクのライセンス生産を行うようになった。その後は独自に様々な二輪車を開発。2003年にはヒョースングループから分離独立して2007にS&Tグループ、2014年にはLVМCホールディングスに買収されて社名がJinan Qingqi KR Motorcycle Co., Ltd.となったが、ヒョースンのブランド名は引き継がれている。
最近は欧米などへも様々なモデルを輸出するなど、着実に力をつけているメーカーである。

今回紹介するGV250Rアバンギャルドは2024年10月から日本国内販売が開始されたモデル。同社のGV300Sのエンジンをベースとしてショートストローク化した248.4ccの水冷VツインSОHCを搭載している。

外観は非常に個性的で250とは思えないほどの存在感がある。倒立フォークやベルトドライブ、リアのモノショック、スマートキーシステム、取り外し可能なタンデムシートなど装備も充実している。

現在の発売されている250クラスとしては希少な存在となるVツインがどのようなフィーリングなのか気になるところである。

スムーズで完成されたエンジン

ずいぶん前にヒュースンのバイクに乗ったことがある。そのときはエンジンもガサツでパワー感がさほどあるわけでもなく、足回りなども含めてあまり良い印象を持たなかった。それが最新モデルでどれくらい進化しているか興味津々だったのだが、結果からいうと驚くほどに完成されたバイクだった。

Vツインエンジンはとてもスムーズでなめらか。昔のようなガサツな感じは全くない。エンジンは特にパンチがあるわけではないが、フラットにトルクが出ることに加え、高回転まで気持ち良く回ってくれるので扱いやすいし、回して走れば十分に速い。スポーツライクな走り方をしても楽しめてしまう特性だ。

シングルエンジンのような力強さはないけれど、ストリートを走るのであればトルクは十分にあって、低中速を使っていても力不足を感じるようなことをほとんどないし、クルージングで登り坂に差し掛かったときもシフトダウンすることなく登りきってしまった。
振動は高回転でステップとタンクに若干感じる程度。低中回転であればほとんど振動を感じることはなかった。Vツインの排気音は良く消音されていながら、リズミカルで心地よいサウンドを奏でる。

スポーティに走ることもできる

ハンドリングは低速から高速までニュートラルだ。低速でバンクさせたときもハンドルの切れ込みがないからとても乗りやすい。サスペンションはスプリング、ダンピング共に硬め。スーパースポーツのようなハードさを感じるほどである。ただ、このセッティングは狙ったものなのだろう。サスのストロークが短いクルーザーの場合、ちょっとしたギャップでリアサスがボトムしたり、おしりが突き上げられるような事があるが、GV250Rアバンギャルドはそういったことがほとんどないのである。乗り心地が特に良いというわけではないが、長距離を走っても疲れるようなことはないだろう。

こんなハンドリングとサスペンションだから、クルーザーでありながらコーナーもかなりのペースで走れてしまう。車高が低いクルーザーとは思えないほどにバンク角も深い。ブレーキがよく効くことに加え、足を前に投げ出したポジションなのでハードブレーキング時も踏ん張れるからコーナーに深く突っ込んでいくことも可能だ。このマシンを購入してコーナーを攻める人は多くないと思うが、マシン自体にはそれくらいのポテンシャルがあるということである。

GV250Rアバンギャルドの価格は73万7000円(税込み)。安価ではないが実際に乗ってみたら価格に見合うだけの質感と性能を持っていることが分かるはずだ。先日試乗したCF MOTOのときも感じたことだが、中国、韓国のバイクメーカーは確実に力をつけてきている。日本製のバイクをキャッチアップするのだというような意気込みが漂っているような印象を受けた。

ポジション&足つき(身長178㎝体重75kg)

ハンドルがフラットなので上体が自然に起きたポジションになる。ステップが前にあるので足は前方に投げだす感じだ。

シート高は700mm。車体が低いので足つき性は良好。両足をついて膝が大きく曲がる。

ディテール

エンジンは水冷4ストローク60°Vツイン。SOHC 8バルブで排気量は248.4cc。ボア x ストロークは58.0mm x 47.0mm。最高出力は 18.8kW(25.6PS)/9,500rpm、最大トルク20.0Nm(2.04kgf.m)/7,000rpmを発生する。
ビジュアル的なインパクトも大きなエキゾーストはVツインの心地よい排気音を奏でる。日本仕様はEuro5をクリアしている。
ブレーキはφ270mmのシングルディスクに 対向4POTキャリパーの組み合わせでABSも装備。ホイールは切削加工によって制作されている。フロントのタイヤサイズは120/80-16。
空冷エンジンのようなフィンが造形美を感じさせる。ミッションは6速。
リアサスペンションはモノショック。
ベルトドライブのために注油などの日常的なメンテナンスはほぼ不要。静粛性にも優れている。
サドルタイプのシート。タンデムシートはボルト4本でステーごと取り外すことができる。スタイルもスッキリすることから海外ではソロ仕様で乗るライダーも少なくない。
左スイッチボックスはウインカー、ホーン、ライトのハイ・ロー切り替え、パッシングのーを配置。
右スイッチボックスはキルスイッチ、スターター、ハザードのボタンを配置。
ハンドルはセミアップタイプのバーハンドル。
リアフェンダーに埋め込まれた縦一文字のテールライト。個性的で視覚的なインパクトも大きい。
ヘッドライトはLED。ライトケースはバイザーを装備。コンパクトなウインドシールドが高速巡航時の風圧を低減してくれる。

ディテール

●エンジン

エンジン形式 水冷4ストローク60°Vツイン
バルブ方式 SOHC 8バルブ
総排気量 248.4cc
ボア x ストローク 58.0mm x 47.0mm
圧縮比 11.2 : 1
最高出力 18.8kW(25.6PS)@9,500rpm
最大トルク 20.0Nm(2.04kgf.m)@7,000rpm
燃料供給方式 フューエルインジェクション
始動方式 エレクトリックスターター
潤滑方式 ウエットサンプ
エンジンオイル容量 1.4リットル
使用燃料 レギュラーガソリン

●トランスミッション

クラッチ形式 湿式多板
トランスミッション形式 6段リターン
ファイナルドライブ ベルト
1次 / 2次減速比 2.96 / 3.26
ギアレシオ 2.461 / 1.555 / 1.190 / 1.000 / 0.875 / 0.769

●シャシー

フレーム形式 ダブルクレードル
キャスター / トレール 28°/ 114mm
サスペンション フロント テレスコピック(φ41mm倒立フォーク)
サスペンション リア スイングアーム(モノショック)
ブレーキ フロント φ270mmシングルディスク / 対向4POTキャリパー(ABS)
ブレーキ リア φ250mmシングルディスク / 対向2POTキャリパー(ABS)
タイヤサイズ フロント 120/80-16
タイヤサイズ リア 150/80-15
ホイールサイズ フロント J16 X MT2.75
ホイールサイズ リア J15 X MT3.50

●寸法・重量

全長 x 全幅 x 全高 2,175mm x 788mm x 1,180mm
ホイールベース 1,475mm
最低地上高 155mm
シート高 700mm
車両総重量 180kg
燃料タンク容量 14L
乗車定員 2名

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