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スズキ・GSX-S1000…….1,430,000円
トリトンブルーメタリック
GSX-S1000の初代モデルは2015年7月に新登場。レーサーレプリカ系モデルと言えるGSX-R1000のDNAを持つエンジンを搭載したネイキッドのロードスポーツバイクである。
さて、今回の主役でもあるGSX-S1000の第二世代モデルへの進化は一目瞭然。ストリートファイターとして迫力のあるスタイリング・イメージが踏襲されたが、直線的なラインを取り入れたデザインでスマートな印象にリフレッシュされた。
顎を迫り出すスラントしたノーズデザインも共通ながら6角形のコンパクトなLEDヘッドランプを二階建てにしたフロントマスクは斬新かつスタイリッシュ。
メーターカバー前方や、ラジエターシュラウド、そしてフレームカバーにはフォージドカーボン(鍛造カーボン)風のデザインを採用。見る方向によって異なる輝きを放つ等、「街中で映える美しいスタイリング」(スズキ公式サイトから引用)となっている。
搭載エンジンも高回転高出力を追求して少しパワーアップ。電子制御システムのS.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)を新搭載としている。
ちなみに多くの基本構造を共にする、KATANAのスペックと比較すると、排気量や圧縮比は共通。最大トルクはKATANAの107Nmより僅かに低い105Nmながら、その発生回転数は250rpm低められた9,500rpmに。
一方、最高出力はKATANAの148ps/10,000rpmより高い150ps/11,000rpmを発揮。果たして、アグレッシブなストリートバイクとして、如何なる乗り味を発揮してくれるのだろうか。
ストリートファイター的な凄みにも迫力がある。
試乗車を目前にすると、流石に1Lならではの存在感がある。堂々と立派なスケールと取り回す時に直感するズシッと来る手応えがそう感じさせたのだろう。
古い感覚表現を持ち出すなら「ナナハン=重量級」バイクというイメージがあったのと同様に、1Lバイクには一目置くレベルの立派な感触がある。このGSX-S1000はまさしく立派という言葉がよく似合う。
それにしてもフロントマスクのデザインが斬新。これまでの量産車に見られる当たり前の顔ではなく、どこかSF映画やアニメの世界で見られるような雰囲気。
前衛的とも表現できるそれは、既報のヤマハMT-09等にも似た手法が見られ、そのコンパクトなデザインは今後の主流となるのかもしれない。
シートに跨がると、低過ぎず遠くないハンドル位置で上体の前傾が少ないネイキッドならではのライディングポジションが自然と馴染む。それでいてステップ位置は後退ぎみでスポーティーな印象もある。
いつでもその気になれるようスタンバイしている様な感じがあり、ストリートファイター的なスポーツネイキッドとして、絶妙のバランスとキャラクターを誇る乗り味に調教されているのである。
エンジンは基本的に大きな変化は感じられないが、主に吸排気系のデザインと吸排気用カムのプロフィールが一新されて環境性能の向上と共に、若干の高回転高出力化を実現。スペックデータのいくつかに変化が現れている。
実際の感覚的な違いに着目すると、スロットルレスポンスに柔軟性が増している。図太さを感じさせ、重低音に迫力のある排気音も印象的。それこそ3,000rpmも回せばどんな場面からでも自由自在になる底力が発揮され、かつ豪快に吹き上がる。もちろん3,000rpm以下でも十分に粘り強く、改めてその凄味のあるハイパフォーマンスが印象深い。
新搭載のS.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)や、クランクマス等は、あくまでストリートスポーツとして適切にチューニングされており、市街地から高速や峠道まで扱いやすく、加減速操作における適度なスムーズさも好印象。
ちなみにSDMS(スズキ・ドライブ・モード・セレクター)はアクティブ、ベーシック、コンフォートの3モードから選択可能。いずれもピークパワーは変わりないが、そこに至る出力カーブ(特性)が変更できる。
また、STCS(スズキ・トラクション・コントロール・システム)の介入レベルはOFF も含めて6段階から選択できる。
信号の多い市街地を走る時、クラッチ操作は軽く、発進時等はエンジンストールを防ぐアシストが働き、いつでも気楽にスタートできる。アップ/ダウンに対応するクイックシフターも違和感の無い操作性を発揮。発進停止の多い渋滞路走行でも快適だった。
ちなみに回転計の表示によるとアイドリングは1,000rpm。クラッチミート時は一瞬1,500rpmを示すが、ブロックが現れるデジタル式メーター故、実際はアイドリングが1,200rpm前後で、発進時の自動アシストは+200rpm程度と思われる。
郊外ではダイナミックなエンジンパワーを存分に発揮。登りタイトターンの立ち上がりでもグイグイ加速する逞しさは一級のレベルであり、1L級モデルを扱いこなす醍醐味が存分に楽しめる。
幅が少し広く感じられるハンドル操舵は軽快で、右へ左への切り返しも難なく身を翻して行ける。操縦性はとても素直でスムーズ。タイヤのグリップ力にも安心感があった。
試乗中唯一気になったのは、小回りUターンが苦手な事。KATANAよりはマシだが、ハンドル切れ角(舵取り角)が31度と小さく、最小回転半径は3.1mと大きめなのが残念。ストリートファイターとしては当然な要素である事も理解できるが、実用上の使い勝手がスポイルされる事がある点は知っておきたい。
ちなみにローギヤで5,000rpm回した時のスピードはメーター読みで58km/h。6速トップギヤ100km/hクルージング時のエンジン回転数は、4,250rpmだった。
6年前の初代モデルと比較すると、車両本体価格で、18万円ほど値上がりはしているが、総合的な商品力もそれなりに確かな魅力向上を果たしているのが印象的であった。
足つき性チェック(ライダー身長168cm/体重52kg)
写真の通り、両足の踵は少し浮いた状態になるが、足つき性は悪く無い。ステップはちょうどふくらはぎに触れる。踏ん張りの利くスポーティなポジションである。シート高は810mm。