試乗記|進化を続ける軽二輪市場の巨人。ホンダ「CT125・ハンターカブ」

2024年10月ホンダは、人気の原付二種車両「CT125・ハンターカブ」の一部の仕様変更とともに、新しいカラーバリエーションを発表。同年12月から販売を開始した。国内の年間販売計画台数は12,000台。国内二輪市場において、トップクラスの販売台数を記録する人気モデルを、再度走らせることとする。

REPORT:河野正士(Tadashi Kono)
PHOTO:山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
衣装協力:クシタニ

デビュー以来、圧倒的な人気を誇る「CT125・ハンターカブ」

2020年6月より日本での販売がスタートした「CT125・ハンターカブ(以下ハンターカブ)」。スーパーカブ125をベースにステアリングヘッド周りに補強をくわえ、スイングアームピボット周りにピボットプレートを追加。フレームのリア部分を延長しフレーム剛性を高め、リア周りの居住性や積載性を向上した。またフロントサスペンションには、トップブリッジとアンダーブラケットでテレスコピック式フロントフォークを支持。前後スポークホイールやアップハンドル、アップスタイルのサイレンサーや高い位置を確保したエアクリーナーボックス用の吸入口やアンダーガードも装着し、オフロードでの走破性向上も強く意識されている。

ホンダ CT125・ハンターカブ……473,000円

また2022年12月には、最新の排気ガス規制に対応した新型エンジンを投入した第2
世代を投入。しかしこのエンジンは、デバイスを追加したりセッティングを変更したりという、単に規制をクリアするためのものではなく、ボア・ストロークを変更する大規模なもの。それによって最高出力を高めるとともに、その発生回転をわずかに低く設定。かわりに最大トルクの発生回転域はわずかに上昇させた。このエンジンは、グロム、スーパーカブC125、モンキー125、ダックス125と、ホンダの新しい125cc空冷水平シリンダーエンジン搭載車すべてに搭載された。

初年度の販売計画数は8,000台、22年モデルは7,000台、23年モデル14,000台、24年モデル11,000台、そして今回試乗した25年モデルは12,000台と、なかなか強気な数字。しかし業界新聞のデータを見ると、その数字は余裕でクリア。2023年には18,000台超えを記録している。ちなみに全国軽自動車協会連合会が発表した、2023年の軽二輪の新車総販売台数は71,648台であるから、その約25%が「ハンターカブ」だったことになる。

2025年モデルは小変更と新色を追加

2025年モデルの「ハンターカブ」は、2022年に投入された第二世代から大きな変更はない。しかし引き続き高い販売計画数を維持していることから、「ハンターカブ」に対するホンダの強い自信を感じることができる。

↑2020年のデビュー時に発表された「ハンターカブ」のフレームレイアウト・データ

2024年モデルからの変更点は、エキゾーストパイプに装着したプロテクターを、より長いタイプに変更したことと、左右バックミラーのカバーデザインを変更したことだ。

カラーリングは定番のグローイングレッドは継続し、あらたにパールスモーキーグレーと、今回試乗したパールシュガーケーンベージュの、合計3色をラインナップした。

マニアも初心者も虜にするスタイルとパフォーマンス

ホンダのカブ系車両に乗ると、何故か背筋が伸びる。どの車両も凜とした佇まいが特徴であるし、かつての米国でのプロモーションに使われた「Nicest People〜」のコピーを今も真に受けているわけではないが、カブに乗るときは少し襟を正した気持ちになるのは間違いない。もちろん、やや近いハンドルとシートとの距離感や、シート高に対して少し低い位置にあるハンドル、そしてシートの真下にあるようなステップ位置によって造り出されるライディングポジションは、モデルのキャラクターによって多少の違いはあるが、カブ系にはどれにも共通している。「ハンターカブ」も、それだ。

その車体は、体重移動、いやステップに軽く荷重を掛けるだけで、キュキュッと向きを変える。僕自身はこれまでカブ主経験がないため、このキュキュッと反応する車体に慣れるまで、毎回少し時間が掛かるが、慣れてしまうと操る楽しさが増してくる。「ハンターカブ」も、その楽しい反応を示すのだが、くわえてトップブリッジとアンダーブラケットでフロントフォークを支えるフロント周り、ピボットプレートをくわえたリア周りによって、その楽しい反応に安心感も加わっている。僕自身は変更を加えなかったが、より大柄なライダーが乗車したときや大きな荷物を搭載したときなどは、5段階で調整可能なリアショックユニットのプリロードを調整すれば良いだろう。

シフトパターンも独特だ。スペック上は4速リターンとなっているが、停車時のみローターリー式となったり、通常のMTバイクとシフトパターンが違っていたりしている。シフトパターンは、N-1-2-3-4。シーソーペダルのつま先側を踏むとシフトアップ、踵側を踏むとシフトダウンする。そして停車時のみローターリー式となるので、4速からつま先側ペダルを踏むとN(ニュートラル)に戻るのだ。慣れないとアタマが混乱して、自分が今何速を選んでいるのか分からなくなってしまうが…車体の反応と同じで、これもすぐに慣れてしまう。

そして「ハンターカブ」の操作や反応がカラダに染みてくると、走らせるのがドンドン楽しくなる。ゆったりモードで走る時は、街中なら3速/郊外なら4速に、さっさとシフトペダルを踏み込んで、あとはエンジン回転が落ちてもアクセルをゆっくりと操作するだけで、ユルユルと加速して他車の流れに乗ることができる。また元気モードのときは各ギアでエンジン回転をしっかり回して加速を楽しむことも出来る。クラッチレバーによるクラッチ操作を必要としない自動遠心クラッチの特徴である、シフトペダルを踏み込んだままだとクラッチが切れた状態になるという特性を活かせば、シフトダウン時にペダル操作とアクセル操作を組み合わせ、エンジン回転を合わせてかなりスポーティに走ることだってできる。そんなときに、先に述べたキュキュッと反応する車体を組み合わせれば、もう車両を返却するのが惜しいくらいに、楽しく走らせることができるのだ。

また今回、感慨深かったのが、「ハンターカブ」と同時に撮影したのが「CB650R E-Clutch」だったこと。ともにクラッチ操作を必要とせず、しかもバイクを操る楽しさに溢れていた。両車の間に流れた約70年という時間が、目標をクリアするためのメカニズムを、こんな風に進化させたのかと。

そんなホンダの古の理想を、現在の技術で味わうことができる「CT125・ハンターカブ」は、もちろん未経験なライダーの方々には強くお勧めするし、まぁもう少し人気が落ち着いてからと思っているライダーの皆様にも、行けるときに行っときましょうと、背中を押しておく。

ライディングポジション&足つき(170cm/65kg)

125ccモデルとしてはやや高めのシートが特徴。ハンドルとシートとの位置関係も独特だ

ディテール解説

リアにもディスクブレーキを採用。ホイールサイズは前後ともに17インチで、スポークホイールを採用している
フロントのみABSを採用。トップブリッジとアンダーブラケットで支える正立式テレスコピックフロントフォークは110mmストローク
車体左側のリアショック車体側取付位置に、エアクリーナーボックスから伸びた吸入口を設置。リアショックは5段階でプリロードが調整可能
排気量123ccの空冷4ストロークOHC単気筒エンジン。サブフレームとエンジン下側ガードが標準装備される
先端にヒンジが付いたシートを開けると燃料タンクの給油口が現れる。燃費計算の国際基準であるWMTCモード値は、クラス最高の67.2km/Lを記録
シート高800mm。同排気量のスクーターなどと比べると、シート高はやや高め。クッション性の良いシートで、乗り心地は良い
少し見づらいが、シーソータイプのシフトペダルも「ハンターカブ」の特徴。シフトパターンはN-1-2-3-4。シーソーペダルのつま先側を踏むとシフトアップ
ハンターカブの最大の特徴である巨大なリアキャリア。コレを装着するために、スーパーカブC125ベースのフレーム後端を伸ばしている
丸型メーター下側にはインジケーターランプが並び、デジタル表示の速度計を中心に、燃料計や走行距離計がレイアウトされている
高く引き上げたハンドル。シートとの距離感や、シート高とのバランスにより、ライディグポジションを採るとグリップ位置はやや低め
テール周り。中央に丸型レンズを配置しながらも、テールライトおよびウインカーのレンズデザインを四角で統一
ヘッドライトをはじめ全灯火類はLED製。丸型ヘッドライトと、角型ウィンカーの組み合わせも「ハンターカブ」ならでは

「CT125・ハンターカブ」主要諸元

■全長×全幅×全高 1,965×805×1,085㎜
■ホイールベース 1,260㎜
■最低地上高 165mm
■シート高 800mm
■車両重量 118㎏
■エンジン形式 空冷4ストロークOHC単気筒
■総排気量 123㏄
■ボア×ストローク 50.0㎜×63.1㎜
■圧縮比 10.0:1
■最高出力 6.7kW(9.1PS)/6,250rpm
■最大トルク 11N・m (1.1kgf・m)/4,750rpm
■燃料供給方式 FI
■燃料タンク容量 5.3L
■フレーム バックボーン
■サスペンション(前・後)テレスコピック式・スイングアーム式
■変速機形式 4速リターン
■ブレーキ形式(前・後)油圧式ディスク(ABS)・油圧式ディスク
■タイヤサイズ(前・後) 80/90-17M/C 44P・80/90-17M/C 50P
■価格 ¥473,000-

キーワードで検索する

著者プロフィール

河野 正士 近影

河野 正士

河野 正士/コウノ タダシ
二輪専門誌の編集スタッフとして従事した後フリーランスに。その後は様々な二…