排気量124ccでも、全長2325mmはハーレーダビッドソン級。シート高はメチャ低660mm|レオンアート・DAYTONA 125試乗

当WEBサイトでも驚くほどの大反響を呼んだ「レオンアート」。国内ではまだ珍しいスペインブランドである事、そして125ccでありながらも堂々たるフォルムに仕上げられた新鮮なインパクトがある。その試乗レポート第3弾は、DAYTONA 125をお届けしたい。なお、試乗車のカラーはシルバーグレーだが、国内販売されるのはブラックである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ウイングフット株式会社

※2020年9月14日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。
レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125

レオンアート・DAYTONA 125…….528,000円

レオンアート・DAYTONA 125
ブラック
レオンアート・DAYTONA 125
国内販売されるのはこのカラーだ。
レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125

 既にレポートしたPILDER 125にも負けない堂々たるフォルム。それはアメリカン・クルーザーと呼べるスタイリングに仕上げられており、あちこちから香るエッセンスは、やはりハーレーダビッドソンを手本にしているように感じられる。
 要素はいくつかあるが、ザックリと大雑把な表現が許されるなら、いずれもクルーザーカテゴリーに属すソフテイルとローライダー、さらに新しいブレイクアウト等の特長がミックスされている。
 2325mmある全長はソフテイルと同等。フレームのメインパイプがそのまま延長されているかの様に見える、リヤリジッド風のクラシックデザインを採用したリヤサスペンションも外観の雰囲気が良く似ている。ストレートに伸ばされたクローム・マフラーの採用も含めてローライダーにも共通項が見出せるのである。
 しかし、より共通部分が目立つのはブレイクアウト114 。フロントに21インチホイールを履き、660mm という低いシート高。そして手足を前方に投げ出すライディングポジションがよく似ている。デザインこそ異なるが20本スポークタイプのアルミキャストホイールやフロントに倒立式フォークを装備した点も同じ。
 いずれにしても、DAYTONA125は本格派ビッグクルーザーの仲間入りを果たす立派な存在感が印象的である。

 もちろん搭載エンジンは直(並)列2気筒の水冷124cc。このギャップを堂々と実現したところに愉快なインパクトが感じられてしまうのである。
 先に記したライバル? 達は約170~300万円近いプレミアムモデルばかり。DAYTONA125は53万円弱で買えるから、比較的気軽に所有できる。それだけに、興味津々となるユーザーも多い。
 PILDER125の記事が大反響を集めたのも納得である。余談ながら原付二種のピンクナンバー車は、クルマの任意保険にファミリーバイク特約を付けてカバーできるメリットがある。ランニングコスト面でも何かとお財布に優しい点が見逃せないのである。
 搭載エンジンは基本的にHERITAGE125と共通で5速ミッションの採用とギヤレシオ、リヤタイヤのサイズも共通である。ただし、車両重量は180kgとそれより30㎏も重い。
 前述の通りフロントはリーディングアクスル方式の倒立式フロントフォークを装備。リジッドマウントされたφ300mmのディスクローターがダブルで装備されている。左右それぞれに採用された油圧キャリパーは3ピストンのピンスライド式で、CBS(前後連動ブレーキ)を装備。右手のレバー操作で3ピストンの内両端の2 ピストンが作動。右足のペダル操作ではリヤブレーキと前ブレーキキャリパーの中央ピストンが連動する仕組みになっている。
 またリヤサスペンションのショックユニットはほとんど見えないが、クランクケース後方と後輪前方に挟まれる位置にツインショックが水平にマウントされている。
 黒いシリンダー内にスプリングを持つショックユニットは、後輪が沈むとショック軸が伸びる方向に動くが、シリンダー内のスプリングは縮むシステム。後輪が伸びる時はその逆パターンとなる。
 輸入販売を手がけるウイングフット株式会社のホームページを参照すると、「スペインからの使者」として全5機種がラインナップされ、さらにLEDヘッドランプの装備等でグレードアップさたDAYTONA 125Xが550,000 円で追加投入されるもよう。反響次第で、今後レオンアートのバリエーション展開はさらに充実しそうである。

明らかにパワー不足!でも、そんな事も気にならない。

レオンアート・DAYTONA 125

 試乗車のエンジンを始動すると大人しい印象のツインエンジンは、1,500rpmで安定したアイドリングを示す。排気音も穏やか。ガタイの大きさとは似合わない音質ではあるが、静かな点には好感が持てる。
 高さ660mmのシートに腰を落ち着けると、何とも奇妙な感触。これまでに体験したことのない雰囲気だ。操舵も含めた取りまわしにはそれなりにズッシリとした重さが伴う。足つき性は良いので不安は無いが、車体を起こす動作も感覚的には1Lクラス並である。

 大胆に、と言うよりは自由気ままに乗る感覚のライディングポジションはハンドルもステップもワイド。グリップの握りも太く感じられる。ことごとく125ccらしさが感じられないデザインには改めて驚かされた。
 前方にあるシフトレバーを爪先で押し下げてローギヤに入れると、そのストロークの大きさにまたビックリ。素早いシフトワークをするわけでは無いから、特に問題とは思わなかったが、それにしても作動量が大きい。
 発進すると17km/h程の速度でエンジン回転は5,000rpmを超えてゆったりと伸びていく。有効なトルクバンドを探ると、だいたい4,000~8,000rpm。頑張って回せば9,500rpmまでは到達するが、そこまで引っ張る気にはなれなかった。ちなみに5速トップギヤで50㎞/hクルージング時のエンジン回転数は約4,700rpmである。
 回転の吹き上がりはユッタリと緩慢でフル加速すると伸びを待つ時間も少々長い感じ。正直加速力はダル重~い感覚がつきまとい、後方から急かされる交通環境下だと、容赦無い全開加速を強いられる。
 つまり動力性能はその程度に過ぎない。ただ、不思議とそれを非難しようという気分にならなかった点が面白い。どうせピンクナンバーだから高速道路は走らない。空いた市街地を堂々と長閑な雰囲気を満喫しながら走るのなら、この程度の性能でも特に不満は無いのではないかと思えて来たのである。むしろ動力性能なんてどうでも良いと感じられて来たのが正直なところ。
 180kgの車体に身を預けてのんびりと気ままに風を浴びる感覚を楽しむ。そんな穏やかな走りに良く似合ってくれるからこその感想である。バンク角は十分深いので、コーナリングで倒し込む時に何処か車体の一部が地面を擦る心配も少ないし、重さイコール“ゆったり”と理解すれば落ち着きのある操縦安定性も納得できる乗り味となるだろう。
 唯一気になったのはストロークが大きくスムーズさの足りないシフトタッチ。試乗車に限られる症状だったのかもしれないが、減速操作で踏み込んだレバーが元の位置に戻りにくいため、次に続く減速操作ができない。苦肉の策としては踏み込まれたままのシフトペダルに爪先を差し込んで、一旦上げてやる事で元の位置に戻して改めて次の減速操作を繰り返した。ミッションから出されたシフトシャフトの突き出しが長いので基本的に剛性負担が大きくなってしまう。長いロッドと複数のリンケージを介して前方ステップまで繋げているが各作動軸部分にガタつきが多く大きなフリクションがある。それ故、減速操作時のシフターの動きが中途半端なまま戻り憎いのが原因。リンケージの設計そのものや、使用部品が加工精度の高い日本製なら、恐らくこうはならないと思う。少なくとも試乗車に関しては再チューニングが必要。もちろん輸入販売元のウイングフット株式会社もこの点については把握されているので、今後は改善されてくるだろう。
 それにしてもひとり気ままに自分の時間を楽しむ相棒として、なかなかユニークな選択肢のひとつだと思えた。有る意味とても微笑ましいのである。

足つき性チェック(身長168cm/52kg)

レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125
レオンアート・DAYTONA 125
この堂々たるスケール感には驚かされる。シート高は660mmと低く、ご覧の通り両足はベッタリと膝に余裕を持って地面を捉えることができる。ハンドルもステップも前方にあり、上体は僅かに前傾する。前寄りのワイドステップは遠過ぎない。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…